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#69【アナトミー・トレイン】ディープ・フロント・ラインについて考察(脾経筋か?腎経筋か?)

※めちゃくちゃ私見なので、興味があれば読んでください。

昔は「アナトミー・トレイン」をかじっていたのですが、使い方がわかりませんでした。「アナトミー・トレイン」と「経絡」はよく似た概念ですが、経絡の方が体の現象を説明しやすいので今では経絡と経絡に近い「経筋」で人の体を観察しています。

しかし無意識にアナトミー・トレインに引っ張られて、経筋の解釈を間違えていた可能性があったのでその辺について書いていきます。

1.DFLは腎経筋か?

私はこれまで、何の疑いもなくDFLと腎経筋を重ね合わせて考えていました。ですのでDFLに含まれる腸腰筋は、そのまま腎経筋にも含まれると考えていたのです。

DFLについて、知らない方のために画像だけ乗せておきます。
ざっくり言えば、体の深部を通る筋群です。

アナトミー・トレイン/Thomas W. Myers より

腎経筋に腸腰筋を含めていた理由としては以下の通りです。

・大腰筋が腎臓と隣接している。
・腎は陰中の陰なので体の最深部にあるDFLとつながる。
・腸腰筋が弱ると老人姿勢になる。老人=腎の虚である。
・腎の別脈が陰蹻脈であり、陰蹻脈は腎の経筋であり、腸腰筋を含んでいる(高野先生の主張)
・腎は先天の精を蓄えている=体を最深部で支えているインナーマッスルである腸腰筋っぽい。

なんかほとんどこじつけですね。

2.DFLは脾経筋か?

最近、脾経への刺激で腰痛が改善する例を見ました。
加えて入江正先生の書籍で脾経筋が腹部から脊柱まで伸びているというのを見ました。
入江先生の書籍で見た脾経筋の走行が大腰筋のそれに近いものがあり、脾経で腰痛が改善した事実とそれがつながりました。

改めてアナトミー・トレインの本を開いてみると、DFLは後脛骨筋〜内転筋を含んでいます。これはまさに脾経の流注するラインと一致しています。
腎経は内側ハムを通りますので、DFLとは微妙にずれています。

その他にもDFLを脾経筋に含めると辻褄が合うような点があります。

・『DFLは身体筋膜構成の「中心」を形成する』(アナトミー・トレイン)。中心=「土」=脾
・内側縦アーチはDFLの働き。腎経は舟状骨のところを通るが、脾経も母指外転筋〜後脛骨筋を通り、脾経の方が内側縦アーチに強く関連してそう。
・太陰経絡なので、最も陰が強いと考えれば、一番深層にあるということも頷ける

こちらもこじつけですが。
下肢における経絡の流注とDFLに含まれる筋の一致が一番の決め手かもしれません。

3.腸腰筋を腸骨筋と大腰筋に分けるという視点

腸腰筋はやはり謎が多い筋肉ではないでしょうか?
みんな腸腰筋の作用について知ってるのかな?

反り腰になれば腸腰筋が短縮すると言います。一方で腸腰筋は股関節を屈曲させます。腰椎の伸展と股関節の屈曲はどう考えても相反する運動です。
こんなスジの通らない筋肉があって良いのでしょうか?
(筋の作用に矛盾をつくるくらい、人間の二足歩行の進化が異常事態だったのかもしれない)

ここでやはりアナトミー・トレインの「普通列車と急行列車」の考え方が使えそうな気がします。腸腰筋は腸骨筋と大腰筋からなる筋肉ですが、この2つの筋を分類するなら、腸骨筋が普通列車で大腰筋が急行列車でしょう。
(※普通列車は単関節筋、急行列車は多関節筋です。)

普通列車は姿勢を固定する筋肉であり、急行列車は関節運動を起こす筋肉です。腸骨筋は純粋に股関節を屈曲させる筋肉ですが、大腰筋は股関節と腰椎の位置関係によって収縮の様式が変化します。
腸骨筋は股関節の姿勢を固定して、大腰筋は股関節〜腰椎の関節運動を担っているというようにも読めます。

股関節の姿勢を固定する腸骨筋は、「姿勢を固定する=動かない」という点で陰中の陰である「腎」の性質に近いような気がします(こじつけ)。
一方体の中心にあって収縮様式を柔軟に変化させている大腰筋は、「脾」の性質に近いような気がしてきます。「脾」の五能は「化」です(こじつけ)。

4.結局、これは使えるのかどうか?

「腸腰筋を腸骨筋と大腰筋に分けよう」とか言ってますが、結局この視点が臨床にどう役立つのかということが重要です。

結論、まだ検証中ですが手応えはあります。

以前、姿勢には左右差があるのが正常だという記事を書きました。
ここは言語化しにくいところなのですが、その視点に立つと腸腰筋の扱いにどうしても矛盾があったのです
その矛盾が腸腰筋を腸骨筋と大腰筋に分離することで解決しそうな気がしています。

人の体が左右で役割が違うとすれば、例えば左の腰痛と右の腰痛で異なる治療法が考えられます。左の腰痛は腎経筋を使い、右の腰痛は脾経筋を使った方が効果がある可能性があります。

以上、私見の塊のような記事でした。
自分のために書いているようなところもありますので、適当に読み流しておいてもらえればと思います。

参考図書・文献
入江正、経別・経筋・奇経治療、1982年、医道の日本社
Thomas W. Myers、アナトミー・トレイン第3版、2016、医学書院

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