memo35【慢性痛】中枢性感作について
中枢性感作は、神経系が過度に興奮して痛みや刺激に対する感受性が高まる現象です。慢性疼痛の原因として重要です。
中枢と言うと脳のようですが、実際は脊髄での可塑的な変化を言うようです。
痛み情報は一次ニューロンの感覚受容器で受容された後、脊髄後角で二次ニューロンに伝達されます。
二次ニューロンにはナトリウム受容体とは別に、NMDA受容体というものがあります。NMDA受容体はカルシウムイオンが二次ニューロンの細胞に入る入口になります。
カルシウムイオンは陽イオンなので、二次ニューロンを脱分極させます。
通常、Aδ線維からの痛み情報はグルタミン酸によって二次ニューロンに伝達されます。グルタミン酸はナトリウム受容体に働きかけます。
一方C線維からの痛み情報はグルタミン酸に加えてサブスタンスPによって伝達されます。このサブスタンスPは二次ニューロンのNMDA受容体を活性化させ、カルシウムイオンが大量に流入します。
NMDA受容体が活性化すると、二次ニューロンの興奮が収まらず、その結果疼痛の情報が脳に伝達され続けることになります。
この状態を中枢性感作と呼びます。
神経には可塑性があるので、NMDA受容体の活性化はなかなか解除されず、慢性的に痛みを感じるような状態になります。
参考図書・文献
熊澤孝朗、痛みを知る、2007、東方出版