#39【足少陰腎経】腎の気化作用の評価は関元で。
東洋医学における腎の重要性は今更言うべきことでもないと思います。
腎精を蓄え、体の発育に関わったり、生物として必要な生殖活動を支えたり、はたまた脳の活動もこの腎精による滋養に支えられていると言われています。
歳を重ねて腎精が消耗されてくると、脳の活動が衰え、足腰も弱ってきます。最終的に腎精が尽きたときは死を迎えるというようにも言われています。
今回はそんな腎が持つ腎精をつくり出す作用と、その作用がしっかり働いているかどうかの評価が簡単にできるようだというのを紹介しようと思います。
1.腎の気化作用
「気化」というのはあるものからあるものを生み出すというような意味です。そして腎には腎精をつくり出す「腎精気化作用」があります。
腎精は先天の精と後天の精を合わせてつくられるもので、冒頭でも紹介したように、発育や生殖活動、脳の活動などに利用されている生理物質です。
繰り返しになりますが、腎精は非常に重要な物質です。腎精をつくりだす腎精気化作用がしっかりと働いている人は、より健康で意欲も高い人間であるということが言えるかと思います。
2.腎精気化作用とその評価について
腎精気化作用についてもう少し詳しく見ていきます。
腎には腎精が蓄えられています。腎精の大部分は両親から受け継いだ先天の精が占めています。腎精が消耗されるとこの先天の精も減っていくのですが、それを補充しているのが飲食物から得られる後天の精です。
つまり先天の精と後天の精を利用して腎精をつくり出すのが腎精気化作用ということです。
後天の精が腎精を補充しているというのが重要です。後天の精は飲食物からつくっているので、飲食物から栄養を吸収している小腸の働きが重要になってきます。
腎と小腸は少陰経循環において関わりが強い可能性があります。少陰経循環とは、「少陰心経〜太陽小腸〜太陽膀胱〜少陰腎」の循環です。同じ循環の中にあるということは、他の循環にある臓腑よりも結び付きが強いということが言えます。
(少しこじつけがましいですが・・)
ということで、腎の腎精気化作用を評価するのは小腸の募穴である「関元」です。関元は臍下丹田とも言われる部位で、ここにしっかり力が入っていると心身ともに充実していると言われています。
この部位の虚的陥没が見られるのが臍下不仁と言われる腹証であり、腎虚の典型的な症候であると言われています。
関元を切診して力が無いような感じがしたときには腎精気化作用が低下しているかもしれないというように考えるべきでしょう。
まとめますと、腎精が充実しているかどうかは腎精気化作用がしっかり働いているかが重要です。
そして腎精をつくり出すために必要な後天の精は小腸によって飲食物から吸収されているので、小腸の募穴である関元によって腎精気化作用を評価することができます。
関元の虚的陥没が腎虚の腹証であることが、それを裏付けています。
3.腎を補う
関元に力が充足していればそれで良いのですが、大抵の人は関元に虚的陥没が認められるはずです。
そういう場合は腎を補うような治療をします。
「難経六十九難」では、「虚すればその母を補う」とあります。
腎は水の性質を持つ五臓なので、水の母は金となります。ですので、腎経の金の属性を持つ穴である復溜に刺鍼します。
復溜への刺鍼は面白いもので、自分でやっても腎の脈が強くなるのを実感できます。脈が強くなるということは腎の働きが良くなっているということだと思います。
ということで、腎精の気化作用の評価と虚証に対する簡単な施術法についてでした。
私も自分の腎にあまり自身がないので(笑)、度々復溜に鍼を刺してます。脈はガチで変わるので、是非試してみてください。
参考文献・記事
◯高野耕造 臨床に役立つ奇経八脈の使い方 東洋学術出版社
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