#37【奇経八脈】整体は陽蹻脈を狙え。
陰蹻脈と陽蹻脈について記事を書いたのですが、整体をする中では陽蹻脈を重視するのがいいかと思っています。
今回はそんなお話です。
陰蹻脈、陽蹻脈についての記事を先に読んで頂いたほうが理解が進むかも知れませんので、よろしければ以下のリンクから御覧ください。
1.整体は「瀉(シャ)」
鍼灸には「補法」「瀉法(シャホウ)」という考え方があります。「補法」が足りないものを補う治療法であるのに対して、「瀉法」は過剰なものを取り除く治療法という意味です。
整体は基本的に筋の緊張を緩めていくものだと思いますので、整体は過剰な緊張を取り除くという意味で「瀉法」と言えます。
では陰蹻脈と陽蹻脈どちらを瀉すべきか。私は陽蹻脈を瀉すべきだと考えます。陰蹻脈がインナーマッスルを滋養しているのに対して、陽蹻脈はアウターマッスル(特に起立筋や股関節を稼働させる殿部〜下肢後面の筋肉)を滋養しています。
陽蹻脈に属するこれらの筋群は陽の性質を持つことからもわかるように、日中活動するための筋肉です。過剰に働きすぎると筋は疲労を起こし収縮する機能を失ってしまいます。こうした状態はいわゆる「実証」という状態でしょうし、「実証」にはやはり瀉法を使う必要があります。
陰蹻脈はインナーマッスルでありお腹の奥深くにあります。具体的には腸腰筋や傍脊柱筋のことです。これらをお腹の上からエイエイと押すことってまず無いと思います。これらの筋は陰であり、陰から陽が生まれることを考えると陰を瀉すのは適当とは言えません。
陰はしっかり補ってあげるべきであり、陰が充実すれば陽も活発になります。これはインナーマッスルを強くしてアウターマッスルがしっかり動けるようにしようという、一般的に言われていることともリンクしますね。
以上のことから、整体は「瀉法」であり、整体で狙うべきは陽蹻脈であるということが言えます。
2.陽蹻脈を緩める
陽蹻脈のルートは、下肢後面から脊柱起立筋を通り、肩関節周りを経由した後顔面に向かいます。
脊柱起立筋やハムストリングスは、姿勢を維持する筋肉とも言われるように、ベッドや床に横になっている時以外は常に収縮しています。日中は常に力を発揮しているということです。
ですので、脊柱起立筋、ハムストリング、下腿三頭筋などの緊張はしっかり取ってあげるのが良いかと思います。脊柱起立筋の緊張は交感神経活動の亢進にもつながっている可能性も高いので、ここがゆるむと高いリラックス効果が期待できます。
陽蹻脈は脳の覚醒にも関与していると以前書きましたが、起立筋が交感神経を亢進させるという点で繋がってくるところでもあります。
陽蹻脈が実しているというのは、起立筋が強く収縮している状態で、それはつまり交感神経活動が亢進して眠れない状態ということです。
陽蹻脈を瀉すという考えのもと起立筋を緩めれば、交感神経活動が抑制されてリラックスしてきます。これは陽蹻脈が落ち着くと同時に陰蹻脈が活発になってくるということで、陰蹻脈に気が満ちれば眠れるようになるのです。
3.陽蹻脈の流注から下肢の整体施術を考える
陽蹻脈は外果の下から起こり、下肢後面を上って脊柱起立筋に繋がっていきます。陽蹻脈は股関節の運動をつかさどっている経脈ですので、股関節の動きが悪い方はこの陽蹻脈が滋養する筋が動かなくなっている可能性があります。具体的には膀胱経筋と呼ばれる筋群で、下腿三頭筋やハムストリングなどです。
私は下肢の施術をする際は足関節を重視しますが、経験的に外果の下がカチコチになっている方がたまにいます。外果の下がカチコチというのは、外返しができないというのもそうですが、外果を下から押し上げたときに腓骨がびくともしないような状態です。感覚的な話になりますが。
そういう方はたいてい腓骨頭に付着する大腿二頭筋もカチコチになっていますので、そちらもしっかり緩めていたのですが、これはまさに陽蹻脈の流注だったんだなと気が付きました。
外果の下にはちょうど申脈というツボがあり、ここから陽蹻脈はスタートするのです。陽蹻脈のスタート地点がカチコチになっていたら当然その先の膀胱経筋も滋養されること無く緊張していることが想像されます。
ですので、下肢の施術をする際は、外果下のつまりとハムストリングの筋緊張をしっかり解消することを心がけています。
実際にこの陽蹻脈の流注をイメージした施術をすると、足関節と股関節の連動が良くなる実感もあります。股関節の内旋制限が強い方は多いですが、その制限も簡単に取れてきます。
これは自分の経験と陽蹻脈について学ぶ中で知った事実がうまくリンクしてくれた例です。経絡は目に見えないものですが、臨床においては頭に入れておくと施術に活かせることが多々あるなと感じます。
私の感覚的な話が多いのでわかりにくかったかとは思いますがご容赦願います。