仮払金の精算ルールとは?手続きの流れと仕訳例を紹介
仮払金は、金額が確定していない概算の経費を一時的に支払うときに使う勘定科目です。支払いが終わって金額が確定したら、清算ルールのもとに適切に処理しなければなりません。
本記事では、仮払金に清算ルールを設定する必要性や精算フロー、仮払金を扱うときの注意点を解説します。
目次
仮払金とは?
実費精算との違い
精算をして正しい勘定科目への仕訳が必要
仮払金の精算ルール
仮払金の精算フロー
1.仮払経費申請書を提出する(申請者)
2.仮払経費申請書を承認する(承認者)
3.仮払金の支払い・会計処理を行う(経理担当者)
4.仮払経費精算書を提出する(申請者)
5.仮払経費精算書を承認する(承認者)
6.経費精算書の確認・会計処理を行う(経理担当者)
7.仮払金過不足の精算・会計処理を行う(経理担当者)
仮払金の精算で注意したいこと
未精算分を放置しない
ほかの勘定科目と混同しない
複数人で管理する
仮払金の精算ルールをしっかり把握しよう
仮払金とは?
仮払金とは、金額が確定していない経費を一時的に支払う際に計上する勘定科目です。ここでは、仮払金と実費精算との違いや、処理方法についてみていきましょう。
実[1] 費精算との違い
仮払金と似たものに実費精算があります。実費精算とは、従業員が一時的に費用を立て替え、あとから精算するものです。
概算でお金を渡して、後から精算する仮払金とは、従業員に立て替えてもらうか、先に渡すかの点に違いがあります。
仮払金は、従業員が出張や業務に関する活動で必要になる費用を事前に支給するため、負担を軽減できるのがメリットです。従業員は経費の心配をする必要がなくなり、業務に集中できるでしょう。
精算をして正しい勘定科目への仕訳が必要
仮払いとして概算の費用を支給した場合は、どのような用途であっても、ひとまず「仮払金」として仕訳します。仮払金はあくまでも仮の勘定科目であり、経費の内容や金額が確定したら、適切な勘定科目に振り替えなければなりません。
仮払いが多いと処理の負担になり、月末など繁忙期にはミスが発生しやすくなります。また、長く放置して未精算分が増えると、税務調査で指摘されるなどの問題も起こるでしょう。そのため、清算ルールを確立して迅速に対応することが必要です。
仮払金の精算ルール
仮払金を適切に処理するためには、明確な精算ルールの設定が必要です。以下のようなルールを設けて、厳守してもらうようにしましょう。
● 仮払金を支給する前に申請書の提出を義務付ける
● 仮払金の精算には期限を設ける
● 仮払金を使ったあと、精算書を提出する
● 精算の確認と承認を行う
仮払金の処理を円滑に行うためには、仮払金を申請する従業員や使用する時期、用途、金額を明確に把握しておかなければなりません。そのために、申請書・精算書の提出が大切です。
仮払金の精算フロー
仮払金の精算は、あらかじめ定めたルールに沿って速やかに行います。ここでは、精算フローをみていきましょう。
1.仮払経費申請書を提出する(申請者)
まず、申請者に仮払いする金額を確定するため、必要な費用の具体的な金額を算出しなければなりません。そのために提出してもらうのが、仮払経費申請書です。書類の様式は会社ごとに異なりますが、次の項目を設けるのが一般的です。
● 支給の希望日
● 金額の明細
● 使用の目的
仮払いを申請する申請者は、必要になるおおよその金額を計算して合計金額を出し、申請書を提出します。
2.仮払経費申請書を承認する(承認者)
申請書の提出先は、申請者の上司など、あらかじめ決めてある承認者です。承認者は書類の内容をチェックし、記載内容に間違いはないか、妥当な金額かどうかを判断し、承認または差し戻しを行います。承認された申請書は、経理担当者に回されます。内容を精査して必要事項が記載されていることを確認したら、仮払金の支払手続きに入るという流れです。
3.仮払金の支払い・会計処理を行う(経理担当者)
仮払金を渡す際は、申請者が仮払金を受領したことを証明するため、サインや受領印をもらいます。支払い後は、次のような会計処理を行いましょう。(仕訳例)出張旅費として従業員に現金5万円を支給した場合
仮払金を支給した時点では現金が減るため、借方に「仮払金」、貸方に「現金」の勘定科目で仕訳します。
4.仮払経費精算書を提出する(申請者)
申請者は仮払金を使用後、仮払経費精算書を作成・提出します。仮払金を適切に管理し、正確に経費を報告してもらうために重要な書類です。記載してもらうのは、以下のような項目です。
● 仮払い日
● 仮払い金額
● 用途
● 支払内訳
● 支払合計
● 差引余剰額
提出の際は、支払いが確認できる領収書やレシート等も必ず貼付してもらってください。支給した仮払金が残った場合、あるいは不足した場合は、精算を行います。
5.仮払経費精算書を承認する(承認者)
仮払経費精算書を受け取った承認者は、精算書と貼付された領収書、レシート等を照らし合わせ、内容の不備や記入ミスがないかどうかを確認します。問題がなければ承認し、速やかに経理担当者に回して精算と仕訳処理に入ります。書類に何らかの不備があった場合は、書類を申請者に差し戻し、修正のうえ再度提出してもらってください。
6.経費精算書の確認・会計処理を行う(経理担当者)
経理担当者も受け取った書類の内容を再度チェックし、会計処理を行います。仮払いに不足がなかった場合、次のような仕訳を行いましょう。
(仕訳例)仮払金5万円のうち、出張交通費4万円を経費に計上。出張交通費はすべて同日に発生している場合
精算で仮払金が不足した場合は、本来会社が負担すべき金額を従業員が一時的に立て替えています。次のような処理を行ってください。(仕訳例)仮払金5万円のうち、出張交通費が6万円だった場合の仕訳例
7.仮払金過不足の精算・会計処理を行う(経理担当者)
仮払金の過不足があるときは精算を行います。不足分は支給し、余った金額は精算書の提出時に受け取ります。
会計処理は、次のとおりです。
(仕訳例)仮払金が1万円少なく、従業員が立て替えた分について現金により精算を行った場合
(仕訳例)仮払金が1万円多かった場合
仮払金の精算で注意したいこと
仮払金精算の手続きでは、いくつか注意すべき点があります。
未精算分を放置しない
仮払金の処理が遅れて未精算分が放置されていると、税務調査で指摘される可能性があります。仮払金は、企業の業務と関係のない用途で使われることも多いためです。仮払金を使用して金額が確定したタイミングで精算され、会計処理が速やかに行われていれば、税務調査で指摘されることはありません。
税務調査で問題になる仮払金とは、正当な理由なく未精算となっている仮払金です。このような仮払金が決算書に記載されていれば、使途不明金があることを示唆していることになります。遅くとも、決算までに内容を確定させることが大切です。
ほかの勘定科目と混同しない
仮払金は、立替金・前払金・預り金といった勘定科目と混同しやすいため、注意してください。立替金とは、会社が負担する必要のない費用を一時的に立て替えたときに使用する勘定科目です。
前払金は、会社が事業に必要な支払いを前払いしたときに使う勘定科目で、保険料の一括払いなどが一例にあげられます。
預り金は、従業員や取引先などから一時的に預かったお金を管理するときに使う勘定科目です。税金や保険料など、第三者に納付するお金が対象となります。
複数人で管理する
仮払金は不正が発生しやすい勘定科目です。管理が行き届いていないと、着服など従業員による不正行為が発生するリスクがあります。
リスクを防ぐためには、複数人で管理することが必要です。1人の担当者に管理を任せると、管理が疎かになったり、他の業務が忙しいときにミスが起きやすくなったりします。複数人で管理し、相互にチェックできる体制を整えておきましょう。複数人で管理することで、精算ルールを徹底できます。
仮払金の精算ルールをしっかり把握しよう
仮払金はあくまで一時的に使用する勘定科目であり、金額が確定したら早めの処理が必要です。明確な精算ルールを設定し、ルールに沿って適切な科目に振り替えましょう。仮払金を適正かつ迅速に処理するためには、複数人による管理が大切です。
仮払金の管理をスムーズに行うため、Bizプリカを活用してみてはいかがでしょうか。Bizプリカは、必要な額をカードに事前チャージするプリペイド方式の法人向けサービスです。従業員が利用できるのはチャージした金額だけで、手軽に仮払金の支給と同等の対応ができます。なおかつ取引データは経費精算システムと連携ができ、実際に取引で生じたデータが経費精算システムに自動で流し込まれるために、データ入力の手間もありません。仮払金の精算業務を効率化するため、ぜひご活用ください。