【革靴入門編#3】靴の製法を深堀り!あなたにあった靴の製法は?
第1回、第2回と、靴の製法からサイズ選びまで解説してきました。今回は、製法についてひと通りまとめていきたいと思います。
靴の製法と言ってもあまりピンと来ない方が多いと思いますが、10種類以上あるんじゃないでしょうか?数えたことないので詳しい数は分かりません。すみません。
とりあえずは5種類ほど、今回はご紹介していきます。また、それぞれの特徴やライフスタイル別におすすめな製法もご紹介していきます。
「靴を買ったけど夕方になると足の裏が痛くて歩くのが辛い。」
「靴がなかなか馴染まなくて、せっかく買ったのに一週間で靴箱行きに。」
なんて言う、経験がある方は見ておいて損はありません。ぜひ、ご自身に合った革靴と出会ってください。
5つの製法とその特徴
製法①:セメント製法
市場に出回っている革靴のうち、最も安価で流通量も多いのがセメント製法です。
作り方は簡単で、靴に接着剤で底材をくっつけるものです。糸で縫わないため作るのに技術が必要なく、工場での量産が可能です。そのため、流通量も多く価格が安くなります。
この製法で心配なのが底材が剥がれることですが、最近は接着剤の質も良くなっているため、あまりに安い靴を選ばなければ剥がれる事はそんなに多くないです。目安としては1万円以上でブランドネームがあるもの。
例えば、日本の紳士靴メーカー、リーガルが展開する「ケンフォード」というブランドはそのひとつです。
この製法に向いている人は、長時間歩かない方です。家、駅、会社の往復が多い方にオススメです。
安価な靴なため、営業マンが使い捨てという名目で買う場合が多いですが、製法上しっかりと足を支えられないうえ、地面から足の裏までの距離が近いため、地面からの突き上げが強く、長時間の歩行には向いていません。
特に体格が良い方は足がブレて膝や腰への負担が出て来る可能性もあります。靴といえども侮ってはいけません。1日に何万回も屈曲があり、何トンもの衝撃に耐えているのです。
製法➁:マッケイ製法
マッケイ製法は、一見セメント製法と似ていますが、最大の違いは底材を糸で縫い合わせている点です。見分け方は簡単です。靴底をみて、縫い目があり、かつ、靴の内側を除いた際にも縫い目が見えればマッケイ製法です。あらゆるメーカーから出ていますので、ぜひ確認してみてくださいね。
価格はやや高くなりますが、修理ができたり、底剥がれが起きなかったりメリットはあります。デメリットとしては、靴底を直接縫い合わせているため、雨の時に歩いていると糸が水を吸って靴の中まで浸水してしまう点です。ちょっとした雨ならまだしも、豪雨の際は。。。
デザイン的な面では、コバと言われる靴を上から見た際に見える底材の端が出っ張っておらず、スッキリとしたシルエットが多くあります。そのため、細めのスーツに合わせてもバランスが良くなるのが特徴です。
こちらの製法もセメント製法と同じく、地面から足の裏までの距離が近いため長距離を歩く方にはあまりおすすめできません。ただし、近年は底材自体に弾力性があったり、メーカーも様々な工夫をこらして履き心地がいい商品を多く出していますので、改善はされてきています。
まぁ、柔らかければいいってものではないですが、スニーカーに慣れている方が多いとこういった製品が多くなりますね。この話をすると足の骨格や構造の話になってしまうので
また今度お話しますね。
製法➂:ステッチダウン製法
ステッチダウン製法とは、靴のアッパーと底材を一緒に縫い合わせる製法です。イメージしづらいかもしれませんが、前で説明したマッケイ製法の靴はアッパーを内側に釣り込んでから底材を縫うのに対して、ステッチダウンはアッパーを外側に引っ張ります。
外側に縫い目が見えるため、次に説明するグッドイヤーウェルト製法と一見同じに見えるのも特徴の1つです。見分け方については、次章でご紹介します。
カジュアルシューズによく用いられる製法で、靴の中の空間が大きくなり、締めつけ感の少ないソフトな履き心地が特徴。また、屈曲もしやすくはじめから歩きやすいので、この種の靴は特に年輩の方にリピーターが多い傾向にあります。
また、数回なら修理ができますが、甲革を直接縫い付けているため複数回修理すると縫い目が裂ける場合があり、この場合は修理不可能となります。
製法④:グッドイヤーウェルト製法
高級靴に多く採用される製法がグッドイヤーウェルト製法です。
これまでに説明したステッチダウンとマッケイ製法を合わせたような製法で、ひとことでいうと「内側と外側を縫った製法」といえます。
最大の特徴は靴の中にコルクが敷き詰められていること。そして、歩いていくうちにコルクが沈み込み、足の裏の形に沿って変形することでより足にあった靴になるのが魅力です。
ただ、最近はコルクの代わりにクッション材をいれることで、沈み込みはないにしても、履き始めから柔らかい足当たりを実現した商品も出ています。イメージとしては、コルクの代わりに柔らかいインソールを入れている感じです。
修理もステッチダウンとは異なり複数回の修理が可能で、何度も修理しながら長い間履くという方も多くいます。靴の製法のなかでは最もしっかりした作りなので、長時間の歩行にも最適です。また、体格の良い方もグッドイヤーウェルト製法であれば型崩れもしづらく、綺麗に履けるので特におすすめです。
デメリットとしては、履き始めは硬くで重く、はじめは屈曲しづらい点が挙げられます。また、手間のかかる製法なため価格が高いのも否めません。
ステッチダウンとの見分け方ですが、靴の側面を内側に倒すとわかります。簡単に潰れるのがステッチダウン。倒す際に何か引っかかる感じや硬さを感じるものがグッドイヤーウェルト製法です。あまりお店では試さないほうがいいかもしれないので注意してくださいね。
製法⑤:ボロネーゼ製法
最後にご紹介するのがボロネーゼ製法。マイナーな製法で日本国内でこの製法を使用して紳士靴を製造しているメーカーはほぼ皆無ではないでしょうか?
よく、婦人のパンプスなどで使われるので女性の方が知っているかもしれませんね。
こ製法の最大の特徴は、靴の内部が袋状になっている点です。ここまでに説明してきた靴は、中敷きとライナー(靴の内側の足が接触する部分のこと)が別々であるのに対し、ボロネーゼ製法では、中敷きとライナーが袋状に縫われています。
ん?だから?というか、そもそも靴自体袋状って言えそうだけど。。。って思ってますか?
そうですね。確かにその通りです。ただし、靴の内側を見ると、中敷きとライナーは別物になっていませんか?そして、縁がありますよね?
ボロネーゼ製法にはこの縁が存在しません。そのため、靴下を履いているかのような包まれる履き心になります。また、ソールの屈曲性も高いのが特徴です。
マッケイ製法と同様に長時間の歩行にはあまり向きませんが、家から会社までの往復が多いという方にぴったりな製法といえます。
また、かなり技術を要する製法なため高価になりがちな点と、修理ができないことが多い点は注意してください。
紳士靴では、ベトナム発のファクトリーブランドである「FUGASHIN」やスペインの「MAGNANNI」などが有名です。
履き心地だけでもぜひ試してほしい製法ですね。
まとめ
まだまだ、ご紹介したい製法がたくさんありますが、今回はこの辺で。
何気なく買った靴にも様々な背景や思いが詰まっているかもしれません。靴ひとつでもこれだけ異なる製法(本当はまだまだあります。ノルウィージャンなどなど、、、)がある、革靴の魅力に気づいてほしい!
この連載をとおひて、皆様が自分の足とライフスタイルに合った革靴と出会えることを祈っています。
今後ぜひ、こだわりを持って革靴を選んでみてください!