【エッセイ】いつだってシャッターチャンスは逃してしまうもの
我が家では、寝室をふたつに分けている。
ひとつは、リビングにつながる和室で私と0歳の次女が寝ている。
もうひとつは、6畳の洋室でパパと長女が寝ている。
0歳の次女はまだ夜中に2回ほど授乳が必要だ。
赤ちゃん時代から繊細で、少しの物音ですぐに目を覚ます長女を起こさないためにこの布陣に落ち着いた。
(パパが出張のときはやむおえず和室で3人で寝るが、その日はふたりの娘が交互に起きるので、私は基本的に夜は寝れないものだと諦めている。)
たまに長女は、夜中にひとりで起きて和室に来ることがある。
どんな物音でも起きないパパをベッドの中で飛び越えて、真っ暗な洋室のドアをあけ、真っ暗な廊下を歩き、リビングのドアを開け、和室の襖をあけるという長い旅をたったひとりでしてくるのである。
怖いのか必ず小走りでくるので、その足音で私は目を覚ます。
書きながら思ったが、少しの物音で目を覚ます長女の繊細さは間違いなくパパではなく私の遺伝子だ。
先日も次女の授乳中に長女のトトトっという足音が聞こえて、次女が満腹で白目をむいて寝た瞬間に勢いよく襖が開いた。
その音で次女が起きなかったことに安堵しながら、襖の先に立つスリーパーの位置がずれた長女を布団の中に招き入れた。
どうしたの?なんでママのところにきたの?と聞くと、
半分寝たような声でこんなことを言ってきた。
「だって、ママのことが大好き」
え、なにこれかわいい。かわいすぎる。
えーーなんで今そんなこというの?
不意打ちの胸キュン発言に、正直そのあとしばらく寝付けないくらい感動してしまった。
暗闇の中。スマホも何も持ってない。
そんな時に限って、生涯覚えておきたいような瞬間はやってくる。
ママの目にカメラやビデオが仕込まれてて、まばたきするだけでカシャッとその瞬間がどこかのハードディスクに保存されるとかそういう仕組み、欲しいのですが。