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【エッセイ】ひとりはいる、親戚のおじさんの話
夫側の祖父の法事で、親族が集まった。
そこで小さい子どもたちの人気を偏にひきつけたのは、60歳手前の夫の叔父だった。
首が座ったばかりの次女に、「この子は最近何を食べてるの?」(もちろん母乳とミルクだけです)と聞く程度には我が子の育児に参加をしてなかったことが伺えるが、なぜか子ども達は彼に夢中になるのである。
古いロシア土産のマトリョーシカを使って、
よくわからない呪文とともに小さい人形を中からどんどんと取り出していく。
それだけで子どもたちはひっくり返るほど大ウケするのである。
おそらく、両親や保育園の先生がこうしてもここまでは喜んでもらえない。
親戚に必ずいる、さほど育児経験が無いのに子どもから絶大な人気を誇るおじさんの魅力は一体何なんだろう。
それは、「ただ眼の前の子供を喜ばせたい」という純粋な想いしか持ち合わせていないからだと思う。
親や先生だと、どんなに夢中に遊んでいたとしても、頭の片隅で「この子のいまの発達は‥」「食育的にこのお菓子って大丈夫かしら‥」「いまこんなにはしゃいでてお昼寝しなくて夕方変な時間に寝ないかしら‥」そんなことを考えざるを得ない。
でも親戚のおじさんは、いい意味でそこには無関心でいられる。
一緒に過ごすこの数時間、全力で子どもに楽しんでもらえればいいのである。
その無関心さと無邪気さに、親や先生はどうしても勝てないのだろうなと思った。
日常のペースが乱されるという懸念はもちろんあるものの、
目に涙を浮かべるくらいの我が子の笑顔を見られるのは嬉しい。
親戚のおじさん、さまさまだ。