[中間管理職の中期/事業計画の進め方]#5 目線をあげる
目線をあげる
ここまでは分析を中心に考えてきました。現状分析から考えていくことになるので、積み上げの考え方になるかと思います。この考え方だけで計画を進めていくとできる現実的な無難な計画になる傾向が強まります。もちろん実現できる可能性が高いという計画は重要ですが、本来はもっとできるかもとか、新しいチャレンジができたかも、といったように結果的に成長を阻害することも考えられます。
”#2で存在意義について考えてみる”で大きな方針を描いたと思いますのでその方針を踏まえて、考えていくのが重要です。
在りたい姿を創造する
分析結果からどの分野でどういったポジショニングで取り組むのかといったことまでは検討できたと思います。
ここからは例を挙げながら説明していきます。
前の章までの流れで、開発部署コスト競争力が弱いという分析から競争力を高める必要性を分析の中で導き出しましたが、単にコストだけではなく、製品価値とのトレードオフも踏まえたポジションを設定したと思います。
あくまで分析結果から決めた結果で客観的な視点だと思います。
言い方は厳しいですが、ここしかないという消去法で導いたようにも感じてしまいます。冷静な分析の結果として最終的にやることは変わらないかもしれませんが、何かにぶち当たったときにブレてしまうかもしれません。
そこに存在意義を踏まえた意思を入れる”そこ意思があるんか?”とどこかのCMではないんですが、これを意識して、在りたい姿として表出化することによりより目標に対して取り込む姿勢が違ってくると思います。
2倍先で考える
在りたい姿を考えるときに、2倍先を考えるといいと思います。
事業計画であれば2年先
3か年の中期計画であれば6年先
5か年の中期計画であれば10年先
といった形で、2倍先を考えてみます。
今回の計画のレンジで在りたい姿で考えてしまうと、できることの在りたい姿にどうしても引っ張られてしまいます。かといってあまり長すぎる将来で考えてしまうと、部門の在りたい姿としては少し離れてしまうと思いますので2倍先というのは実現可能性もとらえつつ、今すぐにはまだ無理という絶妙なものになると思います。
キャッチフレーズを考える
3か年の中期計画を立てる際には2倍先の6年後の在りたい姿を考えてみます。
その際に現在の状態をまず置いてみます。そのあとに6年後にはどういった姿になりたいか考えてみるのですが、いきなり状態から入るよりは少しイメージしやすいようなキャッチフレーズを置いてみると検討しやすいかなと思います。また、メンバへの指針として浸透させやすいと思います。
引き続き例を用いて考えてみましょう。
開発部署では、コストは高いが要求された設計は問題なくこなせている状態だとすると、状態としてはどう考えると例えば
・受注型
・従来通りの開発手法
・設計品質は高い
といったような要素に分解してみます。ここでキャッチフレーズつけてみましょう。慎重になりすぎてやることはできているが成長ができていない感じでしょうか?
石橋たたいた開発
とかどうでしょうか?
在りたい姿
次に6年後について考えます。石橋たたいた開発をどう変えたいですかね。
変えたいというよりは、現在の開発自体は悪くはないとすると、どう越えていきたいかと言ったほうがしっくりするかもしれません。
例で考えていけば、そもそも慎重にしなくても確実にできれば、石橋をたたく(こと細かく確認していく)必要がないような設計を進めるといった高品質な開発を目指すということも考えられます。慎重な開発を超えて大胆なものを作るという方向もありかと思います。
超えていくとなるとこんな感じはどうでしょうか?
期待を先取りする開発
キャッチフレーズだけでは中身がわかりませんので、具体的にイメージできる実際の在りたい姿を考えてみましょう。
現在の姿をキャッチフレーズを元に在りたい状態を考えてみると
・受注型 →提案型
・従来通りの開発手法 →AIを取り入れた開発手法
・設計品質は高い →製品品質が高い
と考えてみました。
どうですか?少し開発部署のイメージが見えてきますか?今の開発も悪くはないと思っていた状態から、もっといろいろできるのではと思ってきませんか?
バックキャスト
将来の在りたい姿ができた時点で、計画上の目標をどう置くかを考えていきます。
現在があって、6年後ができたということで3年後が計画の目標になりますが、目標の置き方としては6年後の状態になるためには3年後にどういう状態にならないといけないかということ自体が目標になります。
現在から予想するフォーキャストと違い、未来の姿から逆算して目標を置くことをバックキャストといいます。
上記の図のように3年後の状態そのものが目標となります。
ここでも設計部署の例で考えてみましょう。
それぞれの状態遷移を考えてみましょう。
受注型から6年後に提案ができている状態ということは、3年後においても何等か提案に近いことができて、実績を積み始めないと6年後には提案ができないと考えると、3年後はどういう状態かといったように考えていきます。
製品の提案までいかなくても今の仕事に対して改善の提案ができている状態というのはどうでしょうか?そういったことができるという積み重ねが信用を勝ち取っていき提案型へのきっかけにつながると考えていくとすると、3年後は改善型みたいな状態はどうでしょうか?
次の従来通りの開発手法からAIを取り入れた開発手法になっていくとした場合はどういうことかと考えると、設計においてAIに設計を任せるということではなく、AIにできる部分と人が考える部分をうまく使い分けて設計に生かすということになります。
それを踏まえると3年後の状態というのはどういった状態であれば、6年後に実現できるかを考えてみると、少なくともAIを設計に何等か使っている状態は最低必要ではないかと想像できますね。
しかもそこから3年で使っている状態となると、すでにどこに使うかといったことは決めているくらいでないと間に合わないかなと思いますので、AI活用の開発をPOC(Proof of Concept)をしながら改善を進めている状態となりますので改善する開発手法とおいておきます。
最後の設計品質が高いという状態を製品品質が高い状態としていますが、これは最近のトレンドでもありますが、アクセシビリティ等でもありますが、高性能な製品よりも使いやすい製品を重視するといったように、ユーザー目線で考えるといった少し高い概念を持ち込んだ状態になります。
製品品質をどう考えるかはいろいろありますが、6年後にその状態に持っていくには3年後にどういった状態がいいでしょうか?
最初の提案型にもつながりますが、そもそも使う人の理解が必要ということになるので、商品企画の段階からかかわるといったように設計だけをやるのではない状態というのが必要になってくると考えられます。なので、3年後の状態は企画品質が高いとおいてみたいと思います。
言葉を合わせた(○○が高い)ので少し無理矢理感がありますが、企画品質を高めるということは使用状態を把握したうえで設計でどうすればいいかというのを考えている状態によってきあっくそのものの品質を高めるということを示しています。
最後に3年後のキャッチフレーズを付けてみましょう。
・改善型
・改善する開発手法
・企画品質が高い
という状態なので、改善を実感する設計というのはどうでしょうか?ここで実感と入れましたが、PDCAを回していく際にもこの実感できているかというのは非常に重要になります。
どうでしょうか?目線が上がった形になってきましたでしょうか?また、状態がイメージできるようになってきた感じでしょうか?
存在意義から始まり、客観的な分析、主観的な目標設定ができましたので、課題となる重点項目を設定していくことになります。
#1 はじめに(2024/5/19公開)
#2 存在意義について考えてみる(2024/5/20公開)
#3 客観的/多面的な分析をする(2024/5/30公開)
#4 STPを考える(2024/6/9公開)
#5 目線をあげる(本投稿)
#6 重点項目を設定する(2024/6/24公開)
#7 幅で考える(2024/7/1公開)
#8 KPIを設定しよう(2024/7/6公開)
#9 計画と存在意義の一致(2024/7/13公開)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?