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『チェンジ・ザ・ルール!』~ユーザー編~ そのシステム導入、本当に儲かりますか?

『チェンジ・ザ・ルール!』エリヤフ・ゴールドラット 著

関係者全員が幸せになれるシステム導入とはどのようなものか?本書、『チェンジ・ザ・ルール!』(原作名:Necessary But Not Sufficient)はそれを考えさせてくれる小説だ。

今回は、本書から学んだITシステム導入時にユーザー側で心がけておきたいことについてまとめる。

システム導入の決裁を得るために

近年は様々なITシステムが溢れている。それらを利用することによって苦痛な業務から解放される、データの一元管理ができるという効能が謳われている。

本書で取り上げられているのはERP(Enterprize Resource Planning:統合業務パッケージ)システムであるが、そのほかにも多くのサービスが溢れている。

現場部署としては、便利なシステムを利用したいという気持ちが強くなり前のめりになってしまいがち。「このシステムはすごい!何としてもウチの部署に導入するぞ!」と意気込むこともあるだろう。

一方で経営者の立場で考えた場合、システムに求める内容が現場部署とは異なってくる。経営者が優先的に気に掛けることは、「このシステムを使うことで利益が上がるのか?」ということだ。

利便性を追求したい現場と、利潤を追い求める経営者。両者の意見は必ず一致するとは限らない。こうした価値観の違いが、システム導入前の合意を妨げることになる。

経営者からシステム導入の決裁を得るためにはどうすればよいのか?それは、現場部署がシステム導入によって全体最適に近づく、すなわち組織の利益(≠現場の利益)に貢献することを経営者へアピールすることだ。

現場特定業務の工数が削減されたとしても、その工程がボトルネックでないのであれば全体効率には影響しない。業務プロセス全体像を整理し、ボトルネック解消のためのシステム導入を提案することだ。

ITシステム導入時に使われる「三つの言葉」

本書によると、ITシステム導入時には三種類の言葉が行き交うという。

一つ目はITの専門用語。システムの中身を示すために必要な言葉で、ITベンダの技術者が頻繁に使う言葉だ。

二つ目は現場レベルのマネジメント層が使う言葉。リードタイム短縮や、生産性向上など。現場レベルではこれらを目的にITシステム導入を検討することが多い。

そして最後の三つめが、トップマネジメント、すなわち経営幹部が使う言葉。それが利益だ。純利益や投資収益率などカネの流れを説明するために使われる。

対応する相手によって言葉の種類を使い分けうまく関連付けることで、ITシステム導入の提案が受け入れられやすくなる。逆に、自分がいる立場の言葉だけを使ってシステム導入の利点を説くことは避けたほうがよいだろう。

難しいIT用語を並び立てても現場や経営者には伝わらないかもしれない。経営者に現場の効率を説いても、それが利益向上につながらなければ受け入れられないかもしれない。

補足:ITシステム導入時の経営者にとってのリスク

経営者にとってのITシステム導入は、工場の機械や設備を導入する際とは異なるリスクが存在する。それは効果が不十分だったり、うまく使いこなせなかったとき、ITシステムは他社に売却することができないという点だ。

たしかにこれは盲点だった。ITシステムと機械はどちらも高額な買い物になるが、上記の理由からITシステム導入のほうが慎重な検討が必要なのだ。

言われてみれば納得できるものの、経営者としての経験がなければ想像しづらい。異なる立場で考えるということは、自分に見えていないものを見ようとすることであり、当然ながら難易度が高いことだと痛感させられる。

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