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参加したくなる参加型ショーの話
筆者の私が初めて「参加型のショー」という言葉を聞いたのは、1990年あたりに、今は無きとある遊園地でアルバイトをしていた頃。
その言葉を聞いた最初の感想を正直に言うと「何かダサいな・・・」くらいの感じでした。「練り上げられた演目を魅せる」というのが主流に感じられていた頃に、なぜテンポ感を犠牲にしてまでも、一般のお客さんが占有する時間をショーの中に組み入れる必要があるのだろう?と疑問にも思いました。
けれど、その疑問は全く的を射ない考えだったのは明らかで、「参加型」、言い方を変えて「インタラクティブ」な演目は、いまなお使われる手法となって、多少の進化はしているものの、その基本的な考え方は残り続けています。自分が知っているだけでも30年以上。「何かダサい」どころか、こどもファミリー向け業界では、こっちが主流になりました。
それほどに重要な「参加型」という考え方ですが、長く残るにはやっぱり理にかなった効果があるもので、沢山のショーを作るようになってから、なるほどな・・・と納得しました。
まず、参加型のショーで何が起こるのかを解説します。
(整理するために番号をつけますが、順序に意味はありません)
1. 特別な人(出演者)が、自分に話しかけてくれる。
2.(場合によっては)自分の意見を聞いて貰える。
3.(ヒーローものなど)自分の応援が届いて、ヒーローが勝って達成感。
4. ステージに連れ出されて気恥ずかしい → 自分で笑う
5. 気恥ずかしそうな人を見て家族が笑う
6. 家族のする事に、ドキドキしたり、心配したりできる
7. ステージで特別な人(出演者)の近くにいるのがうらやましい
8. やることなすこと褒められる
9. 声を出し、カラダを動かして体温が上がる(身体は楽しいと感じる)
10. 大人も日常でできないような事を、強制される形ででもできる
などなど、他にもたくさんあるでしょう。
これだけの効果に対して「何かダサい」は「ホント無いわ」です(笑)
ざっと上げただけで、ショーの内容に関係なく、参加型という手法でココロ動きまくるのが分かりますか? 当然、ショーの作りがしっかりしている方が効果は高いのは間違いないですが、いわゆる「お客さんいじり」がうまければ、ショーの内容との相乗効果で満足度を上げていく事ができます。
となると、当然「参加型」という手法であったり、考え方を取り入れていく事を考えないといけないんですが、ここでメチャメチャ大事な分かれ道があるんです。
「参加したい参加型」と「参加させられる参加型」
「参加型のショー」は、観客の誘導の仕方が重要で、うまく誘導できると「参加したい参加型」になれて、失敗すると「参加させられる参加型」になります。前者は「また行きたいね」で、後者は「もういいかな」です(笑)
「参加したい参加型」は、誘導がうまく行っているので、観客がする事は明確。不安もないので、こども達なら、文字通り参加したくなります。自分の声を聞いて欲しいと思うので、しっかり声を出すし、手を上げるし、前に行きたいし、感情もしっかり出やすい。とにかく能動的な行動にあふれています。
一方「参加させられる参加型」は、誘導が失敗している事が多いので、何をしていいか分からず、当てられたくなかったり、目立たないように大きな声を出せなかったり、無理に当てられて固くなってしまったり、とにかく空気が重くなりやすい。
このふたつのシチュエーション、すごく大きく分けて、誘導の方法がどう違うのかというと、「客席をちゃんと育てている」のと、「こちらの段取りでどんどん進める」の違いである事が多いと思います。(例えば外が大雨で雷が鳴っていたり、プールの直後とか食事の直後で眠けがあったり、極端に特殊な事情は除きます)
「客席をちゃんと育てている」というのは、あいさつでしっかり声が出るように誘導して、「元気なごあいさつどうもありがとう!」と、しっかり褒めます。「もっと、元気にできる?」って、さらに元気なあいさるができたとき「すごいね!ビックリした!」って驚きます。するとこども達は、承認欲求が満たされて、満足したり、もっと認められたい!と頑張るようになります。
ステージにいる出演者は、その状況をよく見極めて、こども達がこちらの望むリアクションができた時に、積極的に褒めていく事で、自然にルールのようなものがある事に気づいていきます。
「わかったおともだち!」「知ってるおともだち!」「できる?」「元気におどってくれますか?」舞台からの問いかけに、元気に「はーい!」と答えると喜んで貰える! だったらもっと大きな声で応えたい!とか、もっとビックリさせたい!と思って声を出し手を上げているうちに、すごく能動的な参加が完成しています。古くからあるこども向けの手法は、長らく変わらないだけあって、本当に理にかなっています。
参加型に限らずですが、こども達を誘導していく場合、確認しながら前に進めるというのは、理解度の意味でも、正解の行動を伝えながら進める意味でも大事なポイントです。どうやって能動的参加を獲得していくか?という事を考えずに、参加型を作ろうとすると、ともすれば罰ゲーム大会が開催される事になってしまうので、前に連れ出す時は、こどもであれ大人であれ、答えやすい問題であったり、自尊心を満たせる質問をまず考えてから、ひねりを加えるといいと思います。
帰す時に、恥ずかしいまま帰したり、困ったまま帰すのではなく、必ず褒めたり讃えたりできると、ステージが憧れの場所になって、参加したい意識が強くります。そうすればきっといいイベントになると思うので、誕生日会や学芸会に運動会、何か司会が入る時に、この知識を使ってみてください。
今回は、「参加したい参加型」と「参加させられる参加型」の違いは、ご褒美と罰ゲームくらい違うというお話でした。