超短編小説『ナンセンス劇場』067
【エサ】
「大漁、大漁。やっぱりエサを替えたのが良かったのかな」
男はクーラーボックスを抱え車が止めてある駐車場へ向かった。
その途中一万円札が落ちているのを発見した。
「おいおい、今日はツイてるぞぉ」
そう言って一万円札に手を伸ばすと体が突然動かなくなった。
さらに地中から次々と手が飛び出し男を地底へと引きずり込んでいった。
「う~ん、どうやらこの百円玉というものよりも一万円札というものの方が喰いつきがいいようだな」
【力丸】
「うちの犬、凄い芸ができるんだぜ」
「うわ、見せて見せて」
「よしいくぞ、力丸。エクスプロージョン! ファイナルサンダーアターック!」
「それって言葉変えてるだけで『お手』と『おかわり』だよね」
「分かった。それじゃもう一つ芸を見せてやる、よく見とけよ。力丸、お手」
力丸、動かず。
「ダメじゃん」
「いや、力丸はこう言ってるんだ。『僕には手などありません。あるのは足だけです』と」
「ふ~ん」
「力丸、エクスプロージョン!」
【熱愛甲子園】
「さぁ池田、振りかぶって投げました!」
「なんだか上手く言えないけど、俺、君のこと昔から知っていたような気がするんだ。まるで前世で結ばれていたみたいに。君のためならどんな事だってできる。俺と付き合ってくれ」
「私もあなたのことが好きでした」
「高速スライダーが見事に決まった! 見逃し三振だー!」
「さぁ今度は西本、振りかぶって投げました!」
「俺さぁ、とにかくお前のナイスバディにしか興味がないんだよ。もうその体見てっと、たまんなくてたまんなくて。多少頭悪くても性格悪くてもそのナイスバディさえあれば俺は大満足だから俺と付き合ってくれ」
「ふざけんじゃねーぞ、このど変態! 家帰ってクソして寝ろ!」
「あ~っと、ストレートど真ん中が打たれた! 場外ホームランだー! これはあまりにもど直球すぎたー! 西本、膝から崩れ落ちるぅ~!」
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