超短編小説『ナンセンス劇場』016
【UMA】
「おい、はやまるな。
何があったかは知らんが命を粗末にするもんじゃない。
自殺なんて人間だけがする愚かな行為だ。
他の動物を見てみろ、みんな死ぬその瞬間まで必死に生きようと頑張っているじゃないか。
なりふりなんて構わず君も頑張ってみるんだ」
説得により男は自殺を思い止まった。
それから数週間後。
「私は今、事件があった村へと来ています。
作物が食い荒らされ家畜も襲われるという事件に村の人たちは大変不安な日々を過ごしています。
それでは実際に家畜を襲われたという方にお話を伺ってみましょう」
「俺は見たんだ、2本足で歩く凶暴な生き物を。
あれは猿や熊なんかじゃねえ、得体の知れねえバケモノだ」
【本当なんです】
「お父さん、僕はもう子供じゃないんだ、本当のことを話して」
「いいからもう風呂入って寝ろ」
「お父さんはいつだってそうやって誤魔化すんだよね…」
「だから何べんも言ってんだろーが、お前は俺の子供だよ!」
「お父さん、僕はもう心の準備はできているんだ。
心配なんかしなくていいから本当のお父さんのことを教えて」
「お前はそんなに俺の子供じゃ嫌なのか!
なんだってんだチクショー!」
【案の定】
(うわ~生まれたくない!
俺はこっちの世界にいたいんだ、やめてくれー!)
それから15年後
「人様に迷惑かけるなって何回言ったら分かるんだい!
あんたなんか産まなきゃよかったよ!」
「こっちだって生まれたくて生まれてきたわけじゃねーよ!」