超短編小説『ナンセンス劇場』056
【行列のできるラーメン屋】
「今日は行列のできるラーメン屋さんに来ています。
それじゃ中へ入ってみましょう」
「へい、らっしゃい」
「こんにちはご主人。今日はけっこう空いていますね」
「そうなんですよ。
まぁ取り敢えずこの自信作のラーメンを食べてください」
「うわ、美味しそう。それでは早速」
“ズズズ~”
「うん、これは魚介の出汁が利いていてとても美味しいです」
「そうでしょ? テレビも来てくれたしこりゃ明日から大忙しだな」
「ということで今日は完全に名前負けしている『行列のできるラーメン屋』さんからの中継でした」
【笑い上戸】
男がパソコンをいじっていると後ろの方で何か音が鳴ったような気がした。
振り向くと押し入れの戸が少し開いている。
目を凝らしてよ~く見てみると隙間から誰かがこちらを覗いていた。
「うわ~!」
男は驚いてイスから転げ落ち床に尻もちをついた。
押し入れの戸がスーと開き中から鬼の形相をした女の幽霊が現れた。
「うわ! うわ!」
男は膝をガクガクと震わせ立ち上がろうとするがなかなか立てず、産まれたての子牛みたいになっている。
「ププッ・・・」
「ゆゆ、ゆう、れれれ・・・」
男はやっと立ち上がったが膝はまだガクガクと震え、今度は阿波踊りを踊っているみたいになった。
「クククッ・・・クククククッ・・・ダ、ダメ、お腹痛い・・・」
男の慌てふためく姿があまりにも面白くそれを見て笑っているうちに怨念が無くなり、幽霊はこの世から姿を消した。
【ソフトタイプ】
その台風はフラフラと進路を変えながら進んでいた。
私達は台風の目に突入した。
思った通りコンタクトレンズがかなり汚れている。
コンタクトレンズを洗浄すると台風は真っ直ぐに進み始めた。