超短編小説『ナンセンス劇場』065
【シークレットシューズ】
「すいません、シークレットシューズ見せてもらいたいんですが」
「かしこまりました」
「これなどいかがでしょうか?」
「ああ、カッコいいですね。新製品ですか?」
「いつ作られたかは不明です」
「日本製ですか?」
「どこで作られたのかも不明です」
「これって本革ですか?」
「得体の知れない素材で作られています。
この靴に関する情報はすべて秘密にされているのです」
「そうですか、さすがはシークレットシューズ。
僕が探していた靴はまさにこれです」
【トップシークレットシューズ】
「すいません、トップシークレットシューズ欲しいんですが」
「あなた正気ですか!? 命の保証はできませんよ」
「覚悟の上です」
それは一見なんの変哲もない靴のように見えたが実は上げ底になっており、その部分には某国の国家機密が書き込まれたマイクロチップが隠されていた。
男は妹の命を救うため、このマイクロチップを取引の材料として使うつもりなのだ。
某国はマイクロチップを回収するため男の元へ暗殺者を送り込んだ。
男は無事、妹を救い出すことができるのだろうか!
ちなみにこの靴は誰にも気づかれることなく身長を10センチ高くすることができる。
【タクシードライバー】
男が手を上げるとタクシーが止まった。
男は車に乗り込み行先を告げる。
運転手はメーターを倒しタクシーを走らせた。
「お客さん、何の疑いもなく車に乗り込みましたね」
「うん? どういうことだ?」
「もし私が殺人鬼だったら? とは考えませんでしたか?」
「な、なんだって・・・」
「この車の中は電波が通じず、ドアも開かず、窓は強化ガラス・・・なんてことは考えませんでしたか?
タクシードライバーに扮装すれば結構簡単に人をさらうことができるんですよ」
「な、何を言ってるんだ、お前は」
「いや~、そんな小説を書いてみようかな~なんて思ったりしてるんです、私」
「会社に苦情の電話入れとくからな」