超短編小説『ナンセンス劇場』001
【クロスカウンター】
「あー、ワンちゃんだ! 可愛い!!」
「あれネコだよ」
「お前ズボンのチャック開いてるぞ! ぎゃははは! 恥ずかしい奴だな、ぎゃははは!」
「お前も開いてるぞ」
「お客様、足元にご注意ください」
「係員さん、ウンコ踏んでますよ」
【まぎらわしいタイミング】
明日はマサト君のお母さんの誕生日だ。
「ねぇお母さん、お母さんが1番好きなものってなーに?」
「そーねぇ、お花かな。お花なら何でも好きかな」
「お花か。じゃあ、2番目は?」
「2番目? う~ん、似顔絵とか描いてもらえたらうれしいかな」
「じゃあ、3番目は?」
「3番目はそーねぇ、あっ、鍋つかみがもうボロボロだから新しい鍋つかみがあったらいいなぁ」
「じゃあ、ぼくは何番目?」
「え?」
「ぼくは何番目に好きなの?」
「え?・・・何の話?」
「ぼくのことを何番目に好きかって話だよ」
「えっと~・・・え?」
【逃げるなワタナベ】
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」
「ワタナベー、それは問題じゃないぞー。
早く数学の教科書を出せー。
お前の問題は36ページの問2だぞー」
「先生、数学なんかよりもっと人として考えなければいけない問題が…」
「ワタナベー、現実逃避はやめろー。
目の前の問題を1つ1つ確実にクリアーしていけー」
【3択だっていいじゃない】
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」
「よー、あんちゃん、『食べるべきか』が選択肢に含まれてたっていいんじゃねーの?」
そう言ってオヤジはワタナベの口の中に肉まんを押し込んだ。