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読書感想文

 講談社「汝、星のごとく」著:凪良ゆう を読んだ.

 何度も挫折してしばらく放置していたのだが,なんだか読了しないといけないような気がして,心が大きく動いた日に,勢いのままに読み切った.読んでいる間ずっと苦しくて,何度も投げ出したくなった.あまりにもリアルで,グロテスクで,普段蓋をしている部分,見たくないものの連続.

 とにかく,徹底的にリアル.同居人も子供も配偶者も居ない,人生経験という意味では限りなく乏しい,悲しいほどに説得力を持たない私だが,この物語はこれまで私が見てきた現実の,あるいは社会の「しんどい」部分そのものだった.

 現実には救いが無い.だからこそ,フィクションくらいは救いがあってほしい.ずっとそう思っていたのだが,ついに救いが無いのに何度も読み返したいと思う作品に出合ってしまった.(救いが無いというのは個人の意見です.この物語に救いを見出す人はたくさんいると思います.これは本心です.)

 救いが無い作品には極力触れないようにしている.「救いが無いなぁ」と思った瞬間に鑑賞をやめる.映画でも,小説でも,音楽でも.しかし今回ばかりは逃げられなかった.最後の一字まで逃がしてはくれなかった.

 いつも世界は「救いがあるかもしれない」と期待させといて突き放してくる.悲観論者にはなりたくないけど,そういうふうに思うことは多々ある.この作品はまさに,いつも感じているこの絶望そのものだった.肯定はできない.でも否定もしたくない.

 なぜだろう.

 なぜだろう,なぜだろうと,いつも理由を求めたくなる.でも起こる現実に理由など無い.厳然とそこにあるだけ,あるいはぶつかってくるだけ.そんなことを思い知らされた.

 価値があるのは経験だけだと,私の尊敬する学者が言っていた.知識をいくら詰め込んだところで,外に出てそれを使わないと価値がないと.その通りだと思っていた.だから外に出てたくさん経験をした(つもりだ).しかしこの物語に関しては,読むことそのものに価値があるような気がする.少しだけ経験値が上がったような気がする.気のせいかな.

 感受性豊かな人ほどきっと読むのに体力を使う作品.だから誰にでもは勧められない.でも,誰か読んでくれないかな.イオンのフードコートでポテトを食べながら感想を共有したいな.

 明日誰かにオススメしてみようかな.この作品の良さを分かってくれそうな人に.

 肯定も否定もしたくないけど,本棚に置いといて何度も読み返したい,そんな作品.そんな作品あるんだね,不思議.

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