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老子と学ぶ人間学⑥幸運不運と天中殺

1.作用反作用の法則

物理には、作用反作用という運動法則がある。

作用があれば、かならず反作用が生じ、
その大きさは等しく、動きの方向は反対である。
 
そして、作用と反作用は同じ物体に、
同時に働くことはない。

これと同じく、
物事はプラスがあれば必ずマイナスがある。

これが陰陽理論の基礎だ。

運も同じく、幸運と不運があり、
幸運が大きければ、不運も大きく、
不運が大きければ、幸運も大きい。

この二つが同時進行することはない。

この自然摂理を知っている者を
老子は「賢人」といった。

産業を振興した結果、
豊かな物質社会は誕生したが、
自然環境は破壊された。

カーナビがでた事で、
便利になったが
地図を読める人がいなくなった。

アマゾン登場で、
どこでも何でも買えるようになったが、
商店が減少した。

どのような事象にも、
プラス面があれば、
必ずマイナス面が同じだけ出現する。

逆にいうと、
何て不幸だ!と感じている事の裏には、
同じ量だけ幸運が待っており、

幸運の裏には、不幸の種が内在されている。

それが同時進行で起きないため、
どちらかに極端に片寄り、
バランスを失ってしまうのだ。

それを老子はこのように述べている。

持して之を盈たすは、其の已むに如かず。
揣えて之を鋭くするは、長く保つ可からず。
金玉堂に満つるは、之を能く守ること莫し。
富貴にして驕るは、自から其の咎を遺す。
功成り名遂げて身退くは、天の道なり。
(道徳経 第九章)

器に水を満たしたまま持ち続けると、
すぐに手が疲れて、水はこぼれてしまう。
それと同じく、

刀の刃を鋭くしすぎれば、刃こぼれが早くなり、
刀の寿命は短くなる。

金銀財宝をため込めば、
それを狙う者が気になり、ゆっくり眠っていられなくなる。
優雅な生活を見せると、人の恨みを買いやすく、
いざという時、人の応援が得にくくなる。

それではどうすれば良いのか。
功を成したら、その地位に未練を残さず、
さっさと引退する。
それが自然の理法にかなった生き方だ。
(道徳経 第九章)

2.運の影響力

老子は、なぜ功を成したら、
さっさと引退するべきと言っているのか。

その答えは簡単だ。

運がそこまで永持ちしないからだ。
作用、反作用の法則を思いだして欲しい。

幸運という作用が働くと、
必ず不運という反作用が働く。
その大きさは等しく、
同時に働くことはなく、時間差がある。

考えてみると、
成功者のノウハウをそのまま真似すれば、
誰でも成功できる筈だ。
そうであるなら、
多くの成功者が出現している筈だが、
現実にはそうは簡単にはいかない。

人気ラーメン店を支えている店長が、
同じ味の店を繁華街に出しても、
決して同じようには成功できない。

その理由は、その人の幸運までは真似ることができないからだ。

ハーバードレポートに興味深い統計結果があった。
"Don't Underestimate the Power of Luck When It Comes to Success in Business," HBR.org, June 14, 2021.

超優企業を50社厳選し、その後の業績の統計をとったところ、5年以内に16社が苦境に陥り、23社は並の評価の企業になっていたという。

残りの11社のうち、以前と変わらないレベルの優良性を維持できていたのはわずか5社だけだった。

この著しい衰退に関し、ありがちな説明としては、CEOの油断と自信過剰による無駄な投資などが言われるが、
「CEOがそもそもそれほど優秀ではなかった」というのが、根本理由ではないか。

つまり、彼らが成功し、分不相応な評価と注目を浴びることになったのは、運のおかげであり、そのうちの多くが失敗して不当な非難を受けたのも幸運が終わったからということになる。

1980年から2008年までの米国のビルボードチャートで、トップ100に入ったミュージシャン8297組を対象にした分析によると、

最初のシングルで、トップ20に入ったアーティストは、
次のシングルでは40位から45位になる可能性が高いという。

一方、チャートの21位~30位に入ったアーティストの成功には、運がそれ程大きく作用していないため、芸術的価値が信頼できる材料である。

そのため、音楽レーベルの経営陣は、トップ20にランクインしたミュージシャンではなく、21位~30位までにランクインしたミュージシャンと契約すべきだという。

3.運を維持する方法

それではどうすれば運を持続できるのか。

善く士為る者は武ならず。
善く戦う者は怒らず。
善く敵に勝つ者は与わず。
善く人を用うる者は之が下と為る。
是を不争の徳と謂い、是を人の力を用うと謂い、
是を天の配と謂い、古の極。
( 道徳経 第六十八章)
真に優れた戦士は、武力で物事を解決しない。
怒りに身を任せて戦わない。

巧みな成功者は、自らは競争せず、
奢らず、高慢にならず、上手に人を使う。
これこそが、太古の昔からの究極の方法だ。
自然の摂理を知る者が行う、成功者の王道である。

謙虚な態度を貫き、人を使う。
それではどういう人を使うのか、
天がその時、味方をしている人

作用反作用の法則を忘れずに、
タイミングよく、
バランス良く相手の運を活用する。

そのタイミングをつかむ方法を、
暦学では天中殺理論といい、
四柱推命では、空亡という。

空が亡きもの
天が味方をしていない時期。

それを干支暦理論で論理化し、
その論理に基づいて統計データを集計したのが
天中殺・空亡理論だ。

それではいつからこの技法は確立し、
統計を取り始めたのか。

殷時代の遺跡に干支が記されていたことから、
この時代に暦に干支の組み合わせて記し、
六十干支理論を成立させていたという。

六十干支理論が成立していたというと、
天中殺・空亡理論は成立していた。

そうなると、3500年、4000年の統計結果
そして12年に2年間だけ、天が味方をしていない時期を統計学的に見いだした。それが天中殺・空亡理論だ。

ただ見つけただけではない。

自らの天命が味方していない時期、
あなたを救うのは誰なのか。

それまでも解明させた。

天中殺(空亡)理論は、一対になっている。

子丑と午未
寅卯と申酉
辰巳と戌亥

この対の相手が救いの道を切り開くという。

子丑天中殺の人の天中殺期間を救うのは、
午未天中殺の人
午未天中殺の人の天中殺期間を救うのは、
子丑天中殺の人
寅卯天中殺の人の天中殺期間を救うのは、
申酉天中殺の人
申酉天中殺の人の天中殺期間を救うのは、
寅卯天中殺の人
辰巳天中殺の人の天中殺期間を救うのは、
戌亥天中殺の人
戌亥天中殺の人の天中殺期間を救うのは、
辰巳天中殺の人

古代に見いだされた自然摂理論は、
2500年以上経過した後、ニュートン力学として発表された。

量子力学の時代、
中国哲理は膨大なる人間心理に基づく理論があり、
インベーションのヒントがたくさんある。

最後に運をコントロールする上で、
何よりも大切なのは、
どの程度の功で心が満足できるかだ。

足るを知れば辱められず、
止まるを知ればあやうからず。
もって長久なるべし。(道徳経第四十四章)

10を要求して5で満足せよといっているのではない。
最初から10を要求しない。
そうすれば5で十分満足なのだから。

足るを知る者は富む(道徳経第三十三章)

この言葉に老子の人間学の全てが凝縮されている。


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代表 山脇史端

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