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老子と学ぶ人間学⑩老子を学べ!Z世代

1990年後半~2000年代生まれの人達を、
Z世代という。
年齢でいえば、10代~25歳前後。

ノキアの電話機能付きPDA端末機で
スマホの歴史が始まったのが、1996年

ジョブズのiPhoneが2007年。
Android機が登場したのが2008年。

つまり、スマホの誕生と共に誕生し、
成長したのが、Z世代。

価値観確立に惑うZ世代

Z世代の世界はスマホの中だ。
遊び場も、学びの場も、友達も、
リアルな空間とバーチャル空間
両方に住んでいる両生類。

過剰情報の中で成長してきたため、
不要な情報の取捨選択力が発達、
同じ価値観の仲間と簡単に繋がれるため、
「自分の価値観」に合うかどうかで選択できる。

問題は、その「価値観」

何に価値を見出すのか。
何にバリューを感じ、
有限のリソースを投資をするのか。

価値観は磨かれるものなので、
若さゆえ、粗削り、発展途上の段階だ。

その若さで、下手に価値観を確立し、
自縄自縛(じじょうじばく)しても困るが、
加速する変化に対応するには、
自己、価値観の確立は必須であり、
曖昧なままだと、
自己の存在そのものが
バーチャル上から消滅する。

それなのに、感情の吐露や、稚拙な発言、
信憑性の薄い情報を発信した途端、
すぐにWeb上で拡散され、非難され、
その記録を、消す事すら出来ない。

このような危険に常に晒されながら、
成長してきた世代。

そのため、全てにおいて慎重で、
身の丈をわきまえた「いい子」が多い。

私たちが若い頃は、高齢者はマイナーな存在だったので、世代間に距離があったが、年配者がメジャーな時代に育った彼らは、親や年配者とも仲が良い。
高齢者の方が、自分の言動をSNSで拡散される危険もないため、安心できる存在だという。

そんな彼らが目指すのは、

多くの人の心を動かす何かを提供できる自分

非難されず、「いいね」が拡がり、
多くの人の心を動かす事が出来る自分。
そんな自分を発信には、どうすればよいのか。

それには、大きすぎて、漠然としていて、
誰も否定できないものがいい。

地球環境問題

地球温暖化は全人類共通の課題であり、
自然災害が起こるたびに関心が集まる。

身近な社会問題だと、
偽善的と非難される危険もあるが、
地球環境問題は、大きすぎて、
漠然としているので、
異議を唱える人もいない。

「環境意識の高い系」は、
そういう意味ではトレンドだ。

自己のアイデンティティが、
確立出来ていない間は、
とりあえず、
「環境意識高い系」になっておけばいい。

そのため、環境社会問題への貢献を
しっかり表明している商品を選択する。

故に、企業としては、
なぜ自社が、社会に存在するのかという
存在価値を明確にし、
発信し続けること
が大切だ。

ブランド力ではなく、メッセージ力。
情報は流れるため、発信し続ける企業努力。

本音は勿論、両親が喜ぶブランド力も欲しい。
そのため、両者がある会社は最強だが、
メッセージ力のない大企業より、
小さな企業であっても、
メッセージ力を明確にし、発信し続ければ、
意識が高い(高いように見せたい)人材が集まってくる。

老子の自然

それでは、自然とは一体何か。

自然という言葉を、
はじめて使った人物こそ、老子だ。

英語のNatureは、
18世紀位から現在の意味に用いられるようになった言葉であり、元々は「性質」という意味に過ぎなかった。

つまり、欧米には、「自然」という概念はなかったのだ。

老子のいう「自然」とは、
現在使われているような意味ではなく、
自ずから然る(おのずからしかる)
という意味になる。

反対語は不自然ではなく、他然
他のものによってそうなっている状態を意味する。

つまり、自然という言葉は、
それ自身によってそうなっている状態

それ自身とは、何か。

キリスト教では、世界は、
神の意志により動かされている。
マーケティング手法も同じであり、
カスタマーは神(マーケッター)の意志で購買意欲をかきたてられ、商品を購入する。これは、老子的にいうと、他然になる。

老子は、地球上全てのもの(万物)自体に、
内在している力があり、
自動的にそうなっている。
この状態を、「自然」といい、
無為自然 
神や権力など他力が何もせずに、自ずから然る(おのずからしかる)状態こそ、人間が本来生きる道だと説いた。

道の尊き、徳の尊きは、
それこれに命ずることなくして、
常に自然なり。

道徳経 第51章

青い空は、創造主により
青く塗り替えられたものではなく、
それ自体の本質により生じた現象であり、
それを「道の理」という。

春に草木が芽吹くのも、
それ自体のもって生まれた質であり、
本性に従って起こる現象であり、
自ずから然る(おのずからしかる)状態だ。

個々の性格も同じだ。
すぐに感情的になる人は、
その人自身が持っている性質であり、
太りやすい体質も、
その人の持っている性質であり、
本性に従って起こる現象、
「自然」であり、強制的に変える必要はない。

自然を愛するZ世代に、
「自己啓発」研修合宿など行ったら、
ブラック企業として、
すぐにネット拡散されるだろう。

老子の意味する「自然との共生」とは、
単に山川海などの自然を
保全するという意味ではなく、
そうした個々の多様性を包括し、
認め合い受け入れる相互社会の創出を意味する。

多様性、
ダイバーシティ&インクルージョン
だ。

このような「自然」の概念が、2500年以上前から根付いている東洋人にとって、SDGsなど、何を今更感があるが、キリスト教的他然思考の西欧諸国にとっては、大いなる意識改革である。

従来の欧米型マーケティングでは、
青い空を消費者が求めれば、
常時、青空を提供できる、
ハワイのような場所を観光地として開発し、
大体的広告を打って旅行パッケージを売り出した。

消費者はハワイに行くことを目標に労働し、
それ以外の場所を知ることなく、
人生を終えてしまうこともあった。

だが、情報が世界中から発信され、
個々が情報を見つけに行く事が
当たり前のZ世代には、
マスマーケティングは通用しない。

個人が共感する情報を自由に入手できるため、
当然の事ながら、多様化が生まれる。

個々の行きたいところが多様であれば、
大型開発をして自然を壊す必要もない。
個々の欲しいものが多様であれば、
人と争って入手することもない。

他然によるマスマーケティングは、スマホの登場と共に終焉しており、未だにアメリカ型ビジネス手法に準じている限り、経済の出口は見えない。

世界に多種多様な人たちが住んでいるのに、
販売する商品の企画会議に、
日本人男性しかいないことなど、
不自然極まりないことだ。

多様性の時代のマーケティングとは何か。

そもそもマーケティングという言葉自体が多様性ではなく、ビジネスそのものの根本が変わろうとしている時代なのだ。

ここをもって聖人は欲せざるを欲し、
得難きの貨を貴ばず、学ばざるを学び、
衆人の過ぐるところに復り、
もって万物の自然を輔けて、あえてなさず。


聖人は、世間一般の人が欲しがらないものを望み、
人々が貴重とするものを貴重だと思わず、
学問知識を超えた自然の理法を学び、
人々が気が付かない根源に立ち返り、
万物それぞれの自然に重んじて、作為を加えないのである。

道徳経 六十四章

何に共感するかは個人の感覚、
本性に従って感じる、
自ずから然る(おのずからしかる)。

Z世代が何を感じるのか。

多種多様、千差万別である事こそ本来の姿、自然である。
それぞれが「自ずから然る」活動をすることで、地球と共生していく。
自然発生的に出来たマーケットで、自然発生的に事が進んでいく。
それを認め、彼らが動きやすい仕組みを作ることこそ企業の役割。

多様性の中の個の確立

「環境意識高い系」になったZ世代、
だが、同じ価値観だと多様性は生まれず、
多くの人の心を動かす何かを提供できる自分には至らず、
埋没してしまう。

多様性の中の個を存在させるには、
見せかけの自己を捨てて「無私」になり、
自己の本質を確立させることこそ大切だ。

泰然自若 武士道・禅の世界観

自分が世界を変えられると
本気で信じる人たちこそが、
本当に世界を変えているのだ。
本当の自分を取り戻せ
Think different by Steven Jobs

Steven Jobs

ジョブズは、スマートフォンを発明したことで、
マスマーケティングの呪縛から人々を解放した。
本当の自分を取り戻せ!
老子はいう。
見せかけの自己を捨てて「無私」になれ。

道は常に無為にして為さざるはなし。

無為とは、無行為ではなく、
作為を捨てて自然の理法に従うことである。
見せかけの自己を捨て、自然に理法に従って行動せよ。

道徳経 第37条


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山脇史端

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