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『真の国防とは何か』亀山眞一

東洋哲理を取り入れる、
経営者・コンサルタントを養成する

亀山眞一先生は、古代から一貫して流れる日本人の思考法を考察する「統貫史法」を提唱、東洋哲理の視点を現在のビジネス環境に適合させた教育活動を行っていらっしゃいます。

今回から、非定期ですが先生からのメッセージを記載させて戴きます。
初回は、東洋哲理コンサルティングの視点から現在の状況を解説して戴きました。

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先月の2020年6月17日、宮城県仙台市などの上空で白色の「未確認飛行物体」が確認されたと話題になった。気球一つがまともに確認出来ない事が、現在の国民の国防意識の希薄さを何よりも物語っているのではないだろうか。

このような状況下にて、改めて、国防とは何か、3つの「防」の視点から考えてみたい。

1.防衛  -戦力による国防-

国防という言葉には幾つかの意味が含まれている。
まず最初に誰もが思い浮かべるのは、戦力による国防であろう。

地球を何度も破壊出来る程の大量の核兵器を、かなりの数の国々が保有する現代においては、他国に対して圧倒的に優勢な戦力を保有することは不可能である。

軍備を揃える意義とは果たして何なのだろうか。

「戦闘」とは、国防のため、国や民族、宗教や家族を守るための戦いである。つまり、戦闘の目的とは「守る」ためのものであり、相手を侵略する目的では、志気は上がらないものである。
そもそも人間は、地球上の生物の中でも非常に弱い存在であるため、集団化けして、自分の身を守ることで生き延びてきた。

我々にはライオンのような鋭い牙もないし、
シマウマのように素早く逃げる脚力もない。

武器がない人類は、身を守るための武器を開発し、より強い武器を手にした者が勝利を収めてきた。つまり、より強い武器を持つことにより、相手を威嚇することが、戦力即ち軍備を揃えるという、そもそもの目的となる。

我々の道徳観において、攻撃行動・侵略行為は他者への損害を及ぼすために違背行為ともされるが、一方では、攻撃を受けた側が報復する場合は肯定的に評価される傾向にある。いわゆる、正当防衛である。

正当防衛とは、最大の正義である。
よって、攻撃・侵略に討って出るためには正当性を公に訴える大義名分が必要であるというのが、古今東西の戦の鉄則である。

大義名分なき戦闘とその影響

大義名分なき侵略戦争に討って出た場合、その戦争はどのような結果を生むのか?
相手を攻撃することを目的とし、大義名分が用意できなかった戦の例として有名なものが、アメリカのイラク侵攻である。米国を中心とする有志連合が、国連安保理決議なしの先制攻撃をイラクに対して行った戦争であり、その結果は、フセイン政権を打倒したものの、それ以降アメリカに対する反発が強まり、現在のイラクはシリア政権とロシアに頼ることになった。

「イラクのフセイン政権が大量破壊兵器の開発を続けている」と当時のブッシュ政権は、イラク及び同国から大量破壊兵器を提供されたアルカイダが米国への攻撃を行う可能性があるとして、国連の大量破壊兵器の査察が完了していない中、イラク攻撃を強行した。しかしその後、イラクでは大量破壊兵器は見つからず、当の米国もその主張に重大な誤りがあったと認めたが、世界保健機関はこの戦いにおけるイラク側の死者数は、2008年1月に推計で151,000人だとする調査結果を発表しているし、2013年10月には最も権威があるとされる医学専門誌PLOS メディシンジャーナルでは、およそ500,000人の民間人が犠牲になったと発表されている。

この大義名分なき戦が契機となり、アメリカは信頼を完全に失墜させたという。しかし強大な軍事力を誇るアメリカに対し、当時どの国も正面から文句を付けることが出来なかったのも事実であり、これは現在の中国の振舞いと、それを取り巻く各国の対応と似通った状況ではないだろうか。

外交カードとしての戦力が、実際の戦力になる戦

軍事力を外交カードとして用いている段階では、まだ平和は保たれている。それでは、外交カードとしての軍事力が実際の戦争を引き起こしている現象とは何なのか、その状況を最近の中国外交に見ることが出来る。
現在中国政府は、軍事力を背景にちらつかせ乍ら周囲の諸国に圧力を掛け、結果、南沙諸島の殆どを手中に収めており、香港に関して言えば、イギリスとの条約違反を平気で行っている。

中国3000年の歴史の中でも、今の指導部の様なやり方で対外膨張を図った王朝は殆どなく、強いて言えば、モンゴル族の打ち建てた元のやり方が、それに当て嵌まるかもしれず、そういう意味では、漢民族のやり方ではなく彼らから見ると異民族的なやり方といえよう。

この様に、軍事とは外交カードであり、その外向カードをどう切るかで平和は脆くも崩れる。その視点で、現在最も注目されている国の一つが、北朝鮮である。
カードを一つ切り損なうと、この国は消滅する危機に瀕しており、次にどのカードを切ってくるか、世界は沈黙を守りながら注視している。

所謂「核」というのはジョーカーであり、最初に手にすることがいかなる影響を及ぼすかを熟知しているこの国が、様々な環境や状況を読み解きながら嵐の中の小船のような操作法で、政権を動かしている。これは我が国の国防にも大いなる影響を与えてくるので、しっかりと注視する必要があるだろう。

外交カードに必要なものこそ、情報力

外交カードの一手段として軍事力を最大限 効果的に発揮するために必要なものこそ、豊富な情報力である。
そして、その情報が漏れない為の機密保持の環境を整えて行くことが大切であり、それがなければ、最終的に戦力を活かすことは不可能になるだろう。

そう言う意味合いにおいて考えると、我が国の様に機密保持が得意でない国にとっては、「戦力主体の国防」は為さねばならないことであり、しかも大変な時間と労力を要する課題となることだけは確かだろう。

2.防疫

防衛と共に、今回のコロナウイルス危機に見られる様に、防疫という国防手段の確立の重要さは、今回の流れの中で多くの人が経験し、この方が喫緊の課題になるかもしれない。

具体的に言って防疫の為に先ず何を為さねばならないのだろうか?
それは国家として国民の生命を守る為の、疫病克服の新薬開発であり、医療体制の整備充実であるということは、周知されている通りであり、例えば今回の様にマスク不足に陥らない為に、最低限のマスクや防護服の国内自給を図る等の政策も、今後防疫の手段に含まれることになるだろう。

しかし、それら以上に国防にとって大事なことは、社会問題に対する国民の関心を高め、様々な問題を克服する為に自らが何を為すべきかを自覚して実行出来る人間を育成して行くことではないかと思う。

何時の時代、どの地域を見渡しても、国を守るのも人であるなら、また国を
滅ぼすのも人である。

「管仲論」の中に、「一国は一人を以て興り、一人を以て亡ぶ」とある様に、たった一人の人が国を興して、たった一人の人が国を滅ぼすのだ。

我々国民の意思次第で、不可能も可能になり、また可能も不可能にしてしまうのだ。

そう言う意味では、今回のコロナウイルス危機は、我々全てに対して警鐘を
鳴らしていると考えざるを得ない。

3.防災


そして3番目に必要なものが、防災だ。
ハザードマップを見てみれば、一目瞭然のごとく、日本は災害列島であり、
素晴らしい景観に恵まれている分、その景観を造りだした自然の猛威に備える必要がある。

世界全体に占める日本の災害発生割合は,マグニチュード6以上の地震回数20.8%,活火山数7.0%,死者数0.4%,災害被害額18.3%など,世界の0.25%の国土面積に比して,非常に高くなっている。
(内閣府政策統括官 防災HP引用)

つまり、我が国の永い歴史において、大陸で起きた様な大量殺戮の戦闘が起こらなかった理由として、人間が増長してくると自然災害が起こるという事が繰り返された歴史であったからこそ、日本独特の道徳風土と人間性が創られてきたのかもしれない。

しかし、上に述べたのは日本が災害列島であるが故の恩恵のようなもので、
前提として、国土の保全が出来なくては、「人」そして「国」を守るに至らないのである。

先にも述べたが、防災に関しても、やはり国民の意識を高めることが必要不可欠である。
防災という言葉から連想されるもの
それは「ハザードマップ」ではないだろうか?

しかし、それを実際目にした経験がある方は少ないのではないか?ハザードマップの認知率は3割程度とされ、これが国民の防災に対する意識の低さを物語っている。(出典:NTTドコモ モバイル社会研究所2020/01/23「ハザードマップの認知度と所有状況」)

また、折角みても、頭の中でどうしても「私だけは大丈夫だ」という無意識の安全装置が作動し、どうしてもそのデータを甘く読んでしまう傾向がある。また同時に、日本人は現況から逃げることが不得意故に、危険を認知しながらも現状維持を貫く傾向がある。自然予測が困難な時代はまだしも、ある程度の予測が出来ている現況において、我々の意識も進化させる必要があるのではないか。

今後、国土交通省に於いても、国民に対する防災意識の啓蒙活動は益々重要になってくるだろう。

実際の所、洪水や内水、地震、そして津波などの災害の内、各自治体エリアにおける災害リスクが高いと予想されるハザードマップのみ作成している自治体もあり、災害リスクに対するエリアを問わない均一な情報公開が、国民の防災に対する意識にも大きく関連してくるだろう。

このように、防災に関しても官と民が一体となり、官は民を災害から守るという視点で政策を行い、そして民は防災意識を高め自らを災害から守ることが、国を守ることに繋がるという意識を持たねばならない。

3つの「防」に見る 真の国防

防衛・防疫・防災と、3つの「防」について述べてきたが、この「防」を我々国民が如何に自覚していくか?がこれから非情に重要になってくるだろう。
大義名分は戦の鉄則であると先にも述べたが、「何かから守るという大義」即ち「防の意識」が、これからの我が国が躍進するためのエネルギーとなるのではないか。

そのためには、我々国民が自国の状況、そして世界情勢に関心を持ち、
それぞれの義を自己の中に生ぜしめねばならない。

一般社団法人 数理暦学協会
東洋哲理コンサルタント養成講座
主任講師 亀山眞一


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