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トヨタデイズ第六回   RAV4 PHV、これいいわあ。でも、こんないいものがお金を積んでも買えないなんて…

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PSAとFCAが本当に経営統合して、新会社「ステランティス」ができた。中でもプジョー、シトロエン、オペル、フィアット、アルファロメオ、ランチア、マセラティ、クライスラー、ジープあたりが日本でも知名度のあるブランドだが、大集合したことは日本の自動車産業には脅威だろう。フォルクスワーゲン、トヨタ、日産ルノーに次ぐ規模になるらしい。しかし、それぞれのブランドの独自性はいつまで維持されるのだろうか。かつて変態シトロエンが大好きだった身としては、諸行無常を感じざるを得ない。

これらのブランドではそのうち、電気自動車(EV)技術が共有されて、全ブランドから登場するといった展開になるのだろう。EVは走りの個性が出しにくいらしいから、ブランドの違いはデザインだけ、という方向へといってしまうのだろうか。シトロエン・ベルランゴ、プジョー・リフター、ボクスホール/オペル・コンボライフみたいに。

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そういえば、今シーズンはあちこちで雪の中に多くのクルマが閉じ込められてしまうという事故が起きた。そうして動けなくなったクルマもガソリンが残ってさえいれば、暖は取れる。ゆえに凍死するようなことはない。閉じ込められたクルマの中にEVはあったのだろうか。特に報道されなかったからには、多分なかったのだろう。

EVは暖房でどんどん電池が減る。今回のような事態となれば、すぐにバッテリーがあがりそうだ。つまり生命に危険が及ぶ可能性は高い。先日の事態では自衛隊が燃料を運んできてくれようだが、電気は持ってこられない。寒い欧州でもEVの普及に躍起だが、こういうケースの対応はどう考えられているのだろう。

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そんなEVに関して、雪国の知人からは面白い話を聞いた。北海道の小樽に住むその人は、日産リーフを絶賛していた。いわく、自宅ガレージ内で充電でき、寒いガソリンスタンドへ行かなくても常に満タンにできる。また、スイッチ一つで、出かける時には室内が温まっている。排ガスを気にしなくていいので屋内ガレージとは相性抜群らしい。冬場の足にこんな便利なものはない、というのだ。通勤や買物でそう遠くない距離をクルマ移動する北海道の都市部では、EVの方が便利で快適ということのよう。なるほどそれはありかも。

となれば、やはりプラグインハイブリッド車(トヨタの言い方ではPHV)は無敵なのではないか。RAV4PHVは四駆だから、雪国での使い勝手はなおいいはず。今回の試乗ではフル充電しておくと電気だけで70キロほど走ってくれた(実際には、時にエンジンも動いていたのかもしれないがそれが感じられなかった)。この70キロは大半が高速道路だったので、1時間ほどでEV走行は終わってしまったが、一般道であればもう少し長く走れるはず。

EV走行はトルクフルで加速は力強く、速く、静かで快適ゆえ乗っていて断然気持ちいい。電池が減ってハイブリッド走行に切り替わると、いわゆるトヨタのハイブリッド車の走りだが、しかしこれがもの凄くパワフルで、前輪が暴れそうになるほど。パワフルなのはモーターがずいぶん仕事をしているからだろう。システム出力は300馬力以上あるらしいが、そういえば思い出すのは初代ハリアーHV。RAV4PHVに乗っているとあの速さが再現されたという感がある。(webCGの試乗記こちら

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初代ハリアーHVのモーターデイズの試乗記はこちら

EV走行できるのが70キロでは確かに少ない。しかし考えてみたらこれで大丈夫なのかも。筆者は月間1500キロほど走るので、一日にすると平均50キロだ。RAV4PHVならほぼEV走行で事足りる。ということならPHVじゃなくてEVでもいいじゃん、となりそうだが、東京まで350キロを往復して一日700キロ以上走ったりすることもあるので、そんな時はEVではどうにもならない。

またホンダeを購入した知り合いによれば、実質航続距離は70キロくらいとのこと。もっと走れなくはないが、充電施設に着く前に使い切ったら大変なのでこのあたりが限界かもと。確かに昔初代リーフに試乗していて、電池残量が半分を切ると心理的には相当怖くなるのを実体験しているので納得できるところだ。奇しくもRAV4PHVとホンダeは同じ距離をEV走行できるようだが、充電の安心せず電池をフルに使えるのはRAV4PHVのメリットということになる。

電池が切れてもRAV4PHVなら通常のハイブリッドで走れるから、EVモードでの航続可能距離を毎回目一杯使い切れる。また雪に閉じ込められたとしてもガソリンがある限り大丈夫。普段はEVとして一日70キロ未満を乗って、必要となればどこへでも、いつでも出かけられる。しかもRAV4PHVの航続距離は1300キロを超えるというのだ。クルマの最大の価値は移動の自由だと思っている。思ったところへいつでも自由に移動することは、長い間の人類の夢だったと思うが、クルマがそれを可能にした。RAV4PHVなら1000キロ走っても、さっと給油すれば、また1000キロ走る事ができる。そんな移動の自由こそがクルマの最大の価値だと思うのだが、一般のEVにはそれがない。PHVにはそれがある。PHV最高。しかし今後は環境のためにEV以外乗るな、移動の自由など制限しろという世の中になるのだろうか。

日本国も2050年にカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出が実質ゼロ)を実現するため、30年代半ばまでに純ガソリン車は売れなくなるという(ハイブリッド車は売ってもいいらしい)。それを受け、自動車工業会の会長として豊田章男さんがEV偏重に物申している。乗用車400万台をすべてEV化したら、電力は原発でプラス10基、火力発電であればプラス20基が必要になりますよ、と。さらに充電インフラには約14兆円から37兆円かかり、電池の供給能力も今の約30倍以上必要になりますよ、と。

日本でクルマを作るとCO2排出量が多いからもう生産はやめましょうとなりかねず、EVになると部品も減るので関連企業が苦しくなりかねないわけで、ようするに、カーボンニュートラル、そしてEVばかり重視しすぎると、日本のクルマ産業はダメになりますよ、ひいては日本国がダメになりますよということだろう。日本の(トヨタの)強みであるハイブリッド車、燃料電池車、そしてPHVなどをEVと並行して作り続ける必要がある、という当たり前の話だが、どうも世の中ではカーボンニュートラル至上主義、EVの優位性ばかりがもてはやされることに警鐘を鳴らした、ということか。

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2050年のカーボンニュートラル達成は、何より国家のエネルギー政策の大変化なしには難しいということが一番重要ではないか。資源に乏しい日本の場合、単純に考えると「EVは原子力自動車」となってしまう。原子力発電の比率が高いフランスがEVを推すのも当然だ。ただ、それはとても喜ばしいこととは言えない。福島の期間困難地域を実際に見てきたことがあるが、故郷がそこにあるのに戻ることができないという悲惨さは筆舌に尽くしがたい。原発反対。であるならどうしたらいいのか。原発に頼らない電気の調達方法を考えるしかない。

実際、経産省の稼働原発試算では、2050年に原発は最多で23基、最小では3基しか稼働してないという。新設は難しく、法的に最長60年しか運転できないからだ。そうなると50年に原発は日本で必要な電気のわずか2%から最大でも12%しか発電できないらしい。これが本当なら、由々しき事態だ。もしその時までに乗用車400万台がEVになったら、とてもじゃないが足りない。カーボンニュートラルは重要だが、といって原発は作れないのが現実だ。トヨタでは全固体電池の開発が着々と進んでいるはずで、遠からず製品化されるだろう。そうなればいよいよEV比率が高まる時代となるのかもしれないが、肝心の電気はどうなるのか。そこをはっきりさせない限り、1000キロ走れる電気自動車が登場しても賞賛のしようがない。

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EVを押す論は、日本の自動車産業も早くEVへ転換しないと、いずれスマホのように、日本製はすっかりダメになりますよというものが多い。しかし長年クルマに関わってくると、クルマはIT機器のように簡単に作れるものではないとつくづく感じている。テスラが作ったので簡単だと思う人は多いが、相当な投資の結果だ。そして金持ちに売る。高級車ならEVは出せると思う。ポルシェのタイカンなどもその典型だろう。大衆車としてリーフがあるが、これもまたそこそこお金がない限り買えないし、使用用途が限られているゆえ、真の大衆車とはいえないだろう。何より安易にEVへシフトすれば、結局スマホのように中国に負けるだけだと思う。EVはスマホのようなものだと思う人は、EVもスマホのように中国製が安くて高性能となる世界となってしまっていいと思うのだろうか。いやそうならないために日本のメーカーは早くEVへ転換しろ、と言っているのだとは思うが。

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ということで、今のところ一番良さげなのはRAV4PHVのようなプラグインハイブリッド車ということになると思う。ところが現在、RAV4PHVは受注中止状態だ。搭載されている新開発リチウムイオン電池(プリウスPHVが搭載するリチウムイオン電池の倍近いエネルギー密度)はトヨタとパナソニックの合弁会社が国内で作っているらしいが、受注が多すぎて生産が追いつかないらしい。いやそうじゃないだろう。やっぱり生産能力が低い、つまりは材料が手に入らないということでは。その部分も課題は多い。

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こういった様々な問題をどうしていくか、なんだかはっきりしないま、世の流れだからと安易にガソリン車を規制するのでなく、もっと議論が深まって欲しいと思うのだが、新型コロナ問題など目の前の課題が多すぎて、大丈夫かこのままで?という結論になってしまう。自動車だけが今や、日本最後の基幹産業とも思えるのだが、そこを大切に考えて政策は打ち出されているのだろうか。マスコミは相変わらずクルマというものに冷たいし、カーボンニュートラルは絶対的な正義のようで、クルマ業界以外からEV押しの論調がどんどんでてくるばかり。米国がバイデン大統領に代わったことでその傾向に拍車がかかりそうだ。筆者としては2050年まで生きて結果を見てみたい気もするが、悲惨な世の中になるのであれば先に死んだほうが幸せかも。実際ここ数十年の動きは、どんどん悲惨な方向へ向かっているように思えるし。

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