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【物理】共通テスト講評

今年度の大学入試から共通テストがスタートした。初めての試みであり、受験生は勿論のこと、学校の教員をはじめ、塾・予備校関係者にとっても手探り試験対策をしてきたことと思う。

以下、2021年度共通テスト(物理)の振り返りを行いたいと思う。個人の所感なので、大手予備校の分析と異なることもあるかと思うが、その点は注意されたい。

第1問:小問集合

問1 台車の加速によるおもりおよび水そう内の水面の傾きに関する問題。「見かけの重力」の意味をしっかり理解していれば瞬殺だが、そうでないと水面の傾きで間違えかねない。

問2 滑車の組み合わせによる力のつり合いの問題。人にはたらく力を正確に書けないと正答できない。差がつく問題。

問3 極板間におかれた粒子にはたらく力の大きさの大小を問う問題。電場の大きさが電位の勾配であることを着目すればよいだけ。

問4 ドップラー効果の問題。数式がなくても定性的に考えることができれば答えは自ずと導かれる。

問5 断熱曲線の曲がり具合が、等温曲線のそれより急であることを知っていればエとオはすぐに決定できる。カは同じ圧力の時の体積を比較すれば正答できる。

第2問:電磁気

A
問1 等価な回路および、スイッチを閉じた直後に流れる電流の大きさを問う問題。直後はコンデンサーの両端の電位差が0であることと、そこに電流が流れることがわかればよい。断線するわけではないことに注意。

問2 抵抗にながれる電流の大きさは抵抗値の逆比になることを使えば計算がスムーズになる。問1で選んだ等価回路でQのすぐ横に導線が入るので混乱した受験生もいたと思う。

問3 点Pに流れる電流はスイッチを入れた直後の値を保持するとき、コンデンサーの箇所に終始電流が流れないのだが、その条件がホイートストンブリッジになっていることに気が付けたかどうか。ホイートストンブリッジの結果だけしか頭にない受験生は気づきにくいと思う。

B
問4 抵抗値rが「単位長さあたり」の抵抗値であることに注意。次元を考えればΩに直すことは難しくない。

問5 回路は1本道なので、各導体棒が受ける力の大きさが等しいのは自明。向きはフレミングの左手の法則で決めるだけ。

問6 終端速度が等しくなることと、内力しかはたらかないので、運動量が保存することに気づけたかどうか。

第3問:波動・原子

A
問1 「波長が短い光ほど屈折率が大きくなる」ということまで明示されているので解きやすい。忘れていた人は覚えておこう。

問2 屈折の法則を適用するだけ。

問3 ほとんどの受験生は背景を知らないのでうまく誘導にのる必要がある。「部分反射」に関する説明があるが、部分反射で光が漏れてしまうとその分輝きが失われるということに気づきたい。図5の解釈が難しい。

B 原子:背景はフランク・ヘルツの実験
問4 基本問題。水銀原子とのエネルギーのやりとりはないので、運動エネルギーはeVになる。

問5 衝突現象なので、どちらも運動量は保存する。

問6 過程(b)は励起させるのにエネルギーを要した分、運動エネルギーは減少する。系全体でのエネルギー保存則。とくに難しいところはない。

第4問:力学

問1 速度ベクトルの鉛直成分を考えればよい。

問2 水平方向の運動量保存則を用いる。

問3 捕球するというのはね返り係数e=0の衝突に対応するので、力学的エネルギーは失われる。

問4 やや誤解を招きかねない選択肢だが、鉛直方向の力積はゼロではない。水平方向ではゼロと言える。鉛直方向のはね返り係数については特に言及がないので、弾性衝突とは言い切れない点に注意。ここで引っかかる受験生も少なくないだろう。


まとめ

センター試験同様、時間的には余裕があるだろう。従来の試験もそうだったが、公式暗記に偏った勉強をしていると高得点は獲れないように練られた問題が多い印象。ただし、第1問の問2や第3問の問3の解釈は難しく、思考力を要する問題も含まれたていた。全体としてはバランスがとれており、基本に忠実に勉強する必要があると感じた。



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