続・ー196℃ですら高温と言われる世界
前回の記事で超伝導の世界ではー196℃ですら高温と言われる所以について述べました。
物理業界界隈ではその後、高温超伝導ブームが巻き起こり、物理学会では立ち見も出ていたようです。
当時ほどのブームではないものの、現在でも高温超伝導を実現する材料探しは世界中で行われています。ウィキペディア情報になりますが、2019年5月時点で、なんと、-23℃で超伝導になる物質が存在することが報告されているようです。ただし、170万気圧という、超高圧下での話だそうです。
願わくば、常温・常圧付近でそのような物質が見つかればうれしいですね。はたして、それは夢物語なのでしょうか。
話は変わりますが、巷では量子コンピュータの開発競争が過熱しています。私が学生の頃、広い意味で量子コンピュータなどを含む量子情報という分野で研究していましたが、卒業する頃には実現できるかどうかはかなり懐疑的でした。
それから数年の時が経ち、2019年には、特定の問題を解くことに関して、従来の原理に基づくコンピュータ(富岳のようなスーパーコンピュータも含む)をも凌ぐ量子コンピュータの開発がGoogle社によってなされ、世界を震撼させました(量子超越性)。
しかし、完全な形で量子コンピュータが身近なものになるにはまだまだ時間がかかるでしょう。その理由として以下のようなことが挙げられます。
量子コンピュータは量子ビットと呼ばれる、量子力学特有の状態を用いて計算を行います。その量子ビットを具現化する物理系として超伝導量子ビットが有力な候補となっており、世界中で開発競争が繰り広げられています。この超伝導状態を利用して量子コンピュータを作る場合、超伝導状態を実現するために十分に冷却する必要が出てくるわけです。超伝導量子ビットは熱に対して脆弱なので、低温を維持しないといけないのです。なので、量子コンピュータを庶民が使うようになるのははるか先のことになるかもしれません。
常温超伝導に向けて
先述したように、現時点ではー23℃で超伝導状態が実現されたという報告について触れましたが、170万気圧という途方もない圧力をかけないといけないので、まだまだ現実的ではありません。しかし、今後材料研究が進んで、まったく新しい物質群によって達成されてしまう可能性だってあるわけです。量子コンピュータ開発の研究と共にこちらの研究も加速していくものと思われます。
もしかしたら、常温で超伝導が出現するような、夢のようなことが実現される日が来るのかも知れません。
画像の引用先
https://www.technologyreview.jp/s/7902/googles-quantum-dream-may-be-just-around-the-corner/