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トランプ氏の強さの背景にある「アメリカの病」とは?『それでもなぜ、トランプは支持されるのか』

11月にアメリカ大統領選挙を控え、共和党内で圧倒的支持を集めるトランプ氏。演説中に起きた銃撃事件やバイデン氏の撤退表明など、目まぐるしく変わる選挙戦の動向に世界が注目しています。
一方で、複数の訴訟を抱えていたり、暴言・虚言がたびたび話題になったりと、そもそもなぜトランプ氏がこれほどまで支持されているのか疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。

今回は、“トランプ現象”の本質を最も早く見抜いたアメリカ・ウォッチャーの第一人者による徹底考察、『それでもなぜ、トランプは支持されるのか』をご紹介します。

なぜトランプ氏はこれほど支持されるのか

著者によれば、トランプ氏の強さの理由を解明するにはまず、トランプ氏の登場が「原因」ではなく「結果」であることを理解する必要があるといいます。いったいどういう意味でしょうか?
本書の序章にこんな記述があります。

「トランプが民主主義を破壊している」と、よく聞く。「民主主義」が「アメリカ社会・政治」、あるいは「国際秩序」といった言葉にも置き換えられる。メディアに登場する専門家や識者らの説明だ。だが、どこかズレていないか。逆に、民主主義が壊れたから、あるいはアメリカ社会や政治、そのアメリカ主導で作られた、自由で開かれたとされる国際秩序が行き詰まったから、トランプが登場したのではないか。

アメリカの民主主義が行き詰まった「結果」として登場したのがトランプ氏というわけです。
トランプ氏の言動にばかり注目しがちですが、このように捉えなおしてみると、「アメリカで何が起きていて、その原因は何なのか」を知ることが、トランプ氏の強さの理由を探る上でも重要であるとわかります。
では、いまアメリカで何が起きているのでしょうか。

拡大する経済格差と「絶望死」

今日のアメリカの民主主義が抱える様々な問題には、根本的な背景として「経済格差」があるといいます。

具体例として、2023年第三四半期のアメリカの世帯資産をみてみましょう。
上位10%の層が、全世帯資産の総計の約3分の2を占めています。このグループの平均世帯資産は、円換算で10億円近くにものぼります
一方で下位50%の世帯資産は全体の2.6%を占めるだけで、このグループの平均世帯資産は750万円程度です。これだけでも格差の大きさを感じられるのではないでしょうか。

さらに衝撃的なのは、ジェフ・ベゾス氏、ビル・ゲイツ氏、ウォーレンバフェット氏の資産を合計すると、アメリカ国民の下位50%の資産合計額に並ぶということです。

こうした凄まじい格差を背景に、低学歴の白人労働者階級の間では「絶望死」が増えてきているといいます。

自殺、薬物中毒、過剰な飲酒に起因する肝疾患を原因とする彼らの死は、「絶望死」と名付けられるようになった。他の先進国には見られない異様な事態だ。「封建社会」どころか、死者まで生み出すのだから、今日のアメリカの資本主義は暴虐な圧政に似た状況を生んでいるともいえる。そうして「絶望している国(人々)」がトランプを生んだのである。トランプが格差を生んだのではない。格差がトランプを生んだのだ。

深刻な格差の中で、躍動するアメリカ経済から疎外され、ないがしろにされた人々の「絶望」に言葉を与えたのがトランプ氏であり、それがトランプ氏の強さにも繋がっているのです。

アメリカの“病”はどこから来たのか

ここまでで、トランプ氏が支持を集める背景に経済格差があることがわかりました。ではその格差の原因は何なのでしょうか。

本書ではそれをアメリカ建国以来の保守思想に遡りながら探っていきます。その中で、「内戦は起こるのか」、「ウクライナは見放されるのか」、「日米安保は破棄されるのか」といった気になるテーマにも踏み込み、考察しています。

3カ月後に迫るアメリカ大統領選挙。支持され続けるトランプ氏の強さの根底にどんなアメリカの“病”があるのか、その原因は何なのか、選挙戦のゆくえとともに注目してみませんか。


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