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安さ、便利さの代わりに何を失っているのか?「食品の安全」のバイブル書『食品の裏側』

今回は、シリーズ累計80万部突破の大ベストセラー『食品の裏側』をピックアップします。

みなさんは普段口にしている「食品」がどのようにどのように作られているかご存知でしょうか? 「食品製造の舞台裏」は、消費者には見えない、知らされていない「影」の部分がたくさんあります 。いったいどんな添加物がどの食品にどれほど使われているか、想像することさえできないのが現状です。

本書では、そんな 「食品の裏側」を、食品添加物の元トップセールスマン・安部司氏が明らかにします 。いま、みなさんの口に入る食品はどのようにできているのでしょうか?

「食品添加物の神様」の人生を変えたミートボール事件

暗い土色の原料タラコを添加物の液に一晩漬けるだけで、赤ちゃんの肌のようなプリプリのタラコに変貌。ベージュ色のシワシワ干し大根も、一晩添加物に漬けると、きれいな真っ黄色たくあんに…
著者・安部司氏は添加物の商社に入社後、 「添加物はすごい。魔法の粉だ。」 と感じ「日本一の添加物屋になってやろう」と意気込みました。実際に、漬物、スナック菓子、ハンバーグ、ジュース、インスタントラーメン…ありとあらゆる種類の商品を開発する、ダントツのトップセールスマンとなりました。

しかし、 「歩く添加物辞典」「食品添加物の神様」とまで呼ばれた著者の考えが一変する出来事がありました

その日は長女の3回目の誕生日でした。食卓には妻が用意したご馳走が、所狭しと並んでいます。その中に、ミートボールの皿がありました。可愛らしいミッキーマウスの幼児が刺さったそれを、何気なく口に放り込んだ瞬間、私は凍りつきました。それはほかならぬ、私が開発したミートボールだったのです
見れば娘も息子たちも、実においしそうにそのミートボールを頬張っています。私は慌ててミートボールの皿を両手で覆いました。父親の慌てぶりに家族は皆きょとんとしていました

「序章」より一部抜粋

そのミートボールは、スーパーの特売用商品として、あるメーカーから依頼されて開発されたものでした。使われているのは「端肉」という、牛の骨から削り取る、肉とも言えない部分です。
「端肉」に添加物を20~30種類加えた、「添加物のかたまり」と言ってもいいぐらいのものでした。
本来なら産業廃棄物となるべきクズ肉を、添加物を大量に投入して「食品」に仕立て上げた ーーそれがこのミートボールだったのです。

そして重要なのは、 このミートボールは自分の子どもたちには食べてほしくないものだった 、ということです。この出来事をきっかけに、著者は、会社をすっぱりと辞めることになりました。

100キロの豚肉から、130キロのハムができる!?

食品添加物が大量に使われている食品の代表例として、 「明太子」「漬物」「練り物、ハム・ソーセージ」 があります。これらは添加物の効果が如実にあらわれる食品でもあります。いったいどれだけの添加物が使用されているのでしょうか。今回は「ハム」の舞台裏を紹介します。

年末になるとスーパーの店頭に特売品として並んだり、普段でも「目玉商品」などとして特売されているスライスのハムの多くは、業界では「プリンハム」と呼ばれています。「雑巾ハム」や「水増しハム」と呼ぶ人もいます。

ハムの原料はもちろん豚肉ですが、たとえば100キロの豚肉のかたまりから120~130キロのハムをつくるのです。 では、増えた20キロは何か?「つなぎ」で増量させているのです
増量させるために一番安くて便利なのは「水」ですが、水をそのまま入れ込むと肉がグチャグチャになってしまいます。そこで、加熱すると固まる「ゼリー」を使用するのです。

この肉用ゼリーの原料は主に大豆や卵白ですが、乳たんぱくや海藻抽出物なども使われています。要するに 「固まればなんでもOK」 という世界なのです。また、増量した分だけ、色や弾力を持たせるために、添加物も余計に入れなければなりません

豚肉で作られるはずのハムに、なぜ「大豆たんぱく」「卵白」「乳たんぱく」が使用されているのか。 添加物の知識がとくにない人だって、おかしいとは思わないでしょうか

食品の「裏側」を告発するはじめての本

いまのように、楽に簡単に食事ができるのは添加物のおかげです。いつでもどこでも、手軽に空腹を満たすことができるのは、添加物あってのことです。 もしこの世から添加物がなくなれば、食事をつくる時間と手間は何倍にもなる でしょう。
しかし、そんな便利さ豊かさを支えるものには、 「光」と同時に「影」もあります 。本書を通じて「影」の部分を知り、食生活を考え直すきっかけにしてみませんか?

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