他人事ではない貧困の現実。彼女らの「貧困の物語」に迫る『東京貧困女子。』
今回は、現在WOWOWにて連続ドラマ絶賛放送中の 『東京貧困女子。』をピックアップします。
『東京貧困女子。』は、2億PVを突破した東洋経済オンラインの連載、「貧困に喘ぐ女性の現実」がもとになっています。この連載の記事で取り上げられているのは、貧困に苦しむ女性たちです。
「数百万円の借金に苦しむ女子大生風俗嬢」、「理不尽なパワハラ・セクハラが日常の職場で耐える派遣OL」、「明日の生活が見えない高学歴シングルマザー」…など、こうした女性たちの存在は、どこか我々とは遠い存在だと思っていませんか?
離婚や養育費未払い、奨学金利用などの些細なキッカケで貧困に転落した彼女たちの現実は、誰にとっても他人事ではありません。
貧困に喘ぐ彼女たちの心の叫びを聞き続けた本書から、貧困の現実を見てみましょう。
「働き続けないとホームレスになってしまう」
谷村綾子さん(仮名、37歳)都内の図書館に勤める図書館司書です。非正規雇用で、手取り金額は13万3442円。賞与はなく、年収204万円で、手取りは160万円程度です。これは生活保護とほぼ同程度の金額であり、とても平均的な生活はできません。
谷村さんはこう語ります。
彼女のような、嘱託(しょくたく)職員の雇用契約の更新は、最長5年と決まっています。非正規が無期雇用となる道はなく、司書の仕事を継続したいなら、別の自治体が運営する図書館に非正規として再雇用されるしかありません。
「貧困ループ」から抜け出せない雇用システムの罠
元々公務員の仕事だった「図書館司書」。安定的なイメージに惹かれてこの仕事を選ぶ人も少なくありません。しかし、谷村さんの例のように、図書館司書の8割は非正規雇用であり、貧困に苦しんでいる人も多いと言います。
平成から始まったこの貧困の主な原因は、企業の生産性向上のために国が決断した雇用の非正規化です。
1999年、2004年に労働者派遣法が改正され、社会全体でどんどん雇用が非正規化されていく中で、最も非正規化を推進したのが地方自治体でした。
こうして、図書館司書や介護福祉士、保育士などの仕事が次々と非正規化され、谷村さんのような「官製ワーキングプア」が生まれました。
仮に谷村さんが司書の仕事を頑張ってその成果が認められたとしても、使い捨てが前提のシステムの中で最低生活水準の雇用契約を結んでいるので、報酬や雇用形態に反映させることはできません。彼女はどうあがいても貧困から抜け出せないのです。
「見えない貧困」に向き合う1冊。
貧困女性をめぐる社会問題は一向に改善されないどころか、人々は同じ階層、階級で人間関係を築いていくので、下階層の貧困は見えにくいものとなっているのです。
そのため、メディアで貧困問題が取り上げられた際は、「スマホを持っているから貧困じゃない」などと、貧困の当事者へ批判が多く集まることも多くあります。
日本で貧困の当事者が増えているいま、彼女たちの声は決して他人事ではありません。そして、今のような貧困への無理解が蔓延する現状では、SOSを出しても、どこにも届かない可能性が高いのです。
貧困に苦しむ彼女たちの現実を、是非この1冊から知ってください。
また、女優・趣里さん主演、本書を原作とした連続ドラマは現在WOWOWで放送中です。
▶▶▶「東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-」
1/15(月)18:00まで第1話を無料配信しています。是非ご覧ください。
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