当時と今
平成5年に放送された「振り返れば奴がいる」。この作品は、劇作家の三谷幸喜氏がテレビドラマを初めて書き下ろした作品で、当時好青年役のイメージが強かった織田裕二が初の悪役を演じたことで知られている。当時このドラマには別の脚本家が充てられていたが、ある事情でできなくなり、三谷氏に白羽の矢が立てられた。
この作品が最新映画「スオミの話をしよう」の公開に合わせて再放送されたが(関東のみ)、今思えば不適切な内容だったのは言うまでもない。司馬(織田裕二)と石川(石黒賢)の二人の医師の対立を軸に作られたが、喫煙シーンや医師同士の乱闘など今思うとこんなシーンが許されたのが不思議なものだ。
特に司馬の態度は横柄そのものであり、当時はあまり見ていなかった。当時同じ水曜に
石田純一主演の「ジェラシー」(日テレ)が放送されていたが、こちらは黒木瞳の怪演や寺脇康文のDV夫役がトラウマになりそうな内容ばかりだった。
やがて石川にがんが見つかり、司馬は彼の手術をするが、その甲斐もなく石川は亡くなってしまう。そして、司馬は争いに敗れた医師に刺されてしまう。最終回ではその生死が分からなかったが、年末のスペシャルでは司馬が亡くなっていたことがわかる。これで悪役の司馬から織田が離れたことがわかるエピソードとなっている。
やがて彼は同じ水曜枠で「お金がない!」に主演し、司馬とは対照的な明るいキャラクターを演じ、「振り返れば奴がいる」を上回る高視聴率を獲得した。そして、映画にもなっている「踊る大捜査線」で脱サラの青島刑事を演じている。
爽やかな好青年から悪役に転じたこのドラマ。彼にとっては黒歴史だろうが、逆に視聴者の心を掴んだのは言うまでもない。
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