東洋ソーイング

東洋ソーイングは1985年の創業以来、婦人服の縫製を専門に行っています。ゆっくりながらも、婦人服や縫製についてお伝えできればと思います。 http://www.handmade-in-japan.com/

東洋ソーイング

東洋ソーイングは1985年の創業以来、婦人服の縫製を専門に行っています。ゆっくりながらも、婦人服や縫製についてお伝えできればと思います。 http://www.handmade-in-japan.com/

最近の記事

サスティナブルを少しだけ

「サステナブル」という言葉を最近良く耳にします。これは、「将来にわたって持続可能」なことを意味します。環境への負荷を最小限に抑え、社会的な公正さを重視する考え方が、「サスティナブル」です。 ファッションにおいて、サスティナブルな考え方を取り入れるとどうなるでしょうか。例えば、ペットボトルなどをリサイクルした素材を使った洋服などが思い浮かぶかもしれません。もちろん、そのような特殊な洋服はサスティナブルの考え方を取り入れた素晴らしいものですが、私達はそれだけでは無いのではないか

    • 裾幅の広いスカートを作る

      フレアスカートやギャザースカートのような裾幅の広いスカートを美しく仕立てるのは難しい作業です。まずは歩いた時に均等に揺れるようでなければなりませんし、それでいて、立ち止まったときには元に戻って収まっているようでなければなりません。特に生地の分量の多いスカートほど様々に気配りが必要になります。 このような条件をクリアするためには、デザイン画を立体にする型紙制作の段階が重要になります。ウエスト、腰など体の丸みに沿わせて型紙を作っていきます。布が大きすぎてシワができたり、逆に小さ

      • 生地の厚さ

        縫製工場では生地の厚さに気を使います。布の厚さなんて大したことないと思うかもしれませんが、場合によっては非常に重要になってきます。 厚みのあるコート、例えばキルティングのコートを作るとします。そうした場合、制作にあたって同じ色柄の生地を3種類は用意します。同じ色柄の普通の厚み、それよりも半分の厚み、もっと薄い生地の3つです。 服は、その部分によって、重なる生地の枚数が違います。もしも、1種類の厚さの生地でキルティングのコートを作ったとすると、ポケットのような何枚も重なる部

        • 裏地について

          世の中にある大半の服、スカート、パンツには裏地がついています。表からは見えない裏地は、一見すると全く重要ではないように思いますが、実際には多くの点でこれらのアイテムを支えています。 裏地には硬い裏地と柔らかい裏地があります。硬い裏地には服の形を決めたり、型崩れを防ぐ役割があります。一方、柔らかいものは形そのものをつくる機能はありませんが、透けてしまうのを防いだりといった役割があります。 裏地は着心地にもかなり影響します。一番大きい部分は、服のすべりです。もしも裏地がついて

          端正なタイトスカートを仕上げるために

          スカートにはプリーツスカート、フレアスカート、ギャザースカートなどいろいろな形がありますが、最も基本となるのがタイトスカートです。 理想的なタイトスカートは無駄な線や緩みが無く、体に立体的に沿った釣鐘型になります。この理想形に仕上げるために、縫製工場では様々なことを考えながら制作していきます。 まず、体の横の垂直方向の曲線と、おへそから脇に向かう水平方向の曲線の形を計算し、型紙を作ります。さらに、ダーツの長さ、深さと入れる位置を決めます。縫製の面でも、ベルトを付ける時に、

          端正なタイトスカートを仕上げるために

          平面から立体を作るということ

          服を作るということは、平面から立体を作るということです。服の材料である布地は平面、一方で服を着る体は立体です。もしも布地を切ったり縫ったりしないで体にまとわせると、シーツを頭から被ったように余分なしわやダブつきが出来てしまいます。 そこで、設計段階で各パーツの型紙の曲線を工夫して、これに合わせて裁断し、縫い合わせることで服の各部分の凹凸 (おうとつ) を作ります。さらに、ダーツ (生地の一部分をつまんで縫うこと) やギャザー (生地に複数のしわを入れて縫うこと) を配置して

          平面から立体を作るということ

          アイロンの重要性

          洋服は、デザイン画から型紙を作成し、型紙に沿って生地を裁断し、裁断された生地を縫製して作られます。この製造過程では、鉛筆、ハサミ、ミシンなどたくさんのスタープレーヤーが登場するのですが、今日は縁の下の力持ち、アイロンの話をしようと思います。注目はされませんが、アイロンは洋服作りのいろいろなところで活躍しているのです。 アイロンは、生地のしわを伸ばすことに加えて、生地に折り目をつける役割があります。 折り目をそれぞれのパーツに付けておくことで、縫製の作業はとてもしやすくなりま

          アイロンの重要性

          袖を付ける

          服は様々なパーツで出来ています。それぞれのパーツの出来不出来によって、全体の印象は大きく左右されます。その中でも、特に袖 (そで) の仕上がりは服の品格を決める重要な要素です。 胴体部分つまり身頃 (みごろ) に袖をつける工程は、平面の布を縫い合わせて立体にする必要があるため、簡単ではありません。デザインにもよりますが、袖が身頃にふわりと載っていることが、袖の取り付けとして最良な状態です。 良い仕上がりのために、袖の縫代 (ぬいしろ) に非常に細かいしわを入れます。このと

          魅力的な服の理由

          街を歩いている人の服を見て、いい服だなあと振り返りたくなる時があります。雑誌のページをめくっていて、載っている洋服の写真から目を離せない事もあります。 奇をてらったデザインというわけではない、ブラウスやジャケット、パンツ…。特別なものではないのに、いい洋服だと目を止めたくなる理由は、いったいどこにあるのでしょう。 例えばブラウスだと、衿やポケットのまるみはなめらかな線になっていること。ジャケットだと、打ち合わせの上と下が合っていること。パンツだと、腰の線に沿い余分なシワなど

          魅力的な服の理由

          混沌と混乱のファッション用語

          若者の言葉の乱れはよく聞かれる話題で、眉間に皺を寄せて「まったくもってけしからん」という人がいる一方で、訳知り顔で「言葉は生き物だからしょうがないし、問題ない」という人もいます。よく使われるような言葉ほど、間違った使い方がそのまま定着してしまったり、意味が変わっていったりするようです。 洋服は毎日人間が着るものだから、とても身近な存在。ファッション用語も他と同じように意味の移り変わりからは逃れられません。さらにファッション雑誌が新しい言い回しを日々考えるもので、この変化に拍

          混沌と混乱のファッション用語

          「価格」と「研究」

          量販店の洋服と百貨店の洋服、一見同じような洋服にかなりの価格差があるのを感じたことはないでしょうか。例えば普通の白のブラウス。量販店なら5千円くらいまでのことが多いですが、百貨店だと1万5千円、高級品だと2万円を超えるものも珍しくありません。同じ布と糸からできた洋服に、どうしてそんなにも差が出るのでしょうか。 理由の一つに洋服が企画されてから出来上がるまでの「研究」の過程があります。 一つの新製品を新たに作る場合、デザイン画を描き、そこからパターン (型紙) を作り、材料

          「価格」と「研究」

          柄合わせ

          無地や細かい柄、上下左右のない柄のものでは必要ないのですが、チェック柄や大きい柄、一枚の絵になっているような柄の洋服では、柄が続くように複数のパーツを縫い合わせなければなりません。例えばチェック柄では本体の横の線が脇の縫目で合い、さらに袖の柄の線とも合うようします。また、縦の線も服の中央でチェックの間隔がつながるようします。このような柄合わせが必要な場合、裁断と縫製に大変気を使うことになります。 柄合わせの必要のある布を何枚も重ねて裁断するときのことを考えてみましょう。この

          生地による印象の違い

          以前、お客様の依頼で、同じ型紙を使って二種類の生地でジャンパースカートを作ったことがあります。 一つは厚みがあり、色数の多い柄のはっきりした生地、もう一つは薄くなめらかで柄のない無地の布地でした。縫製を行い、できあがってみるとその二つの印象は全く違っていました。 厚い生地から作った方はセーターに合いそうなカジュアルな感じに、薄い生地から作った方は柔らかいブラウスを合わせてフォーマルに着こなせるような感じになりました。それは同じ型紙を使って作ったとは思えないほどでした。

          生地による印象の違い

          布を歪ませない努力

          どんな洋服も、布から出来ています。全てのはじまりは一枚の大きな布です。 服を仕立てる第一歩は、布を切る(裁断をする)ところから始まります。布なんて薄っぺらいもの、切るなんて簡単と思うかもしれません。でも、実は裁断は奥が深く、慎重に切らないと服が台無しになってしまうのです。 布は伸びたり、縮んだり、シワが出来たりします。そこで、まず布が垂れ下がらない大きさの、とっても広い台に乗せます。(東洋ソーイングの裁断台は、横2m縦7mあります。) そして、生地の縦糸と横糸が直角になる

          布を歪ませない努力

          Less is More

          タンスの中に大量の洋服を持ってはいないでしょうか。アイテムの数が多いと洋服のコーディネートの組合せは膨大な数になり、今日の気分やTPOに合ったのを探し出すのは至難の業で、毎日時間がかかってしまいます。また、収納スペースがより多く必要になり、その管理も大変です。今は着ていない、サイズが合わない、色が似合わないなど、長い間手にも取っていない洋服が、自分の労力・時間と家のスペースを消費してしまうのは無駄が多いと言えます。 それでは、洋服を持ちすぎないようにするためにはどうしたら良

          ボタンにスポットライトを

          洋服についているボタン。この部品は私達にとても身近なものです。洋服を洋服として成立させている、この小さいバイプレイヤーに今日はスポットライトを当ててみたいと思います。 ボタンの歴史は紀元前まで遡ります。布と布を留めたり外したりできて、より着やすく動きやすい衣服にするため、動物の骨で留め具を作ったのが始まりと言われています。ボタンは単なる留め具の機能だけでなく、豪華な作りのものは―古代エジプトから近世ヨーロッパまで―歴史上の権力者の権威を表す装飾品とされたりしました。このよう

          ボタンにスポットライトを