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「バオバブの日」とその翌日

我こそは「星の王子様被害者の会」会長なのだ

会員は、まだいない。

「美しい文章と示唆に富んだメッセージが今も世界中で愛されている」とキャッチコピーが付く名作、サン=テグジュペリが書いた「星の王子さま」。
箱根にはミュージアムもありましたね。

利息付きで太陽光を跳ね返すクリスタルツリーの園、箱根ガラスの森のすぐお隣に広がる、パステルカラー風のミュージアムでした。
いつも気になっていましたが、ついぞ入場することはありませんでした。
だって、嫌いなんだもん。

読み聞かせの副作用

私が「星の王子さま」と出会ったのは、バブルの狂乱が北の大地にも「教育熱」を運んできて、異常気象さながらに「お母さんによる寝間の読み聞かせ」が大流行した時でした。

小学校に上がった頃には三大女性誌(女性自身、女性セブン、微笑)を愛読していた私にとって
『大切なことは目に見えないんだ』
『僕のたった1本のバラ』
『ねぇ、ヒツジを描いてよ』
などと、情感たっぷりに読み上げる読書の時間は、兄弟のなかで最年長の私には、正直、地獄のひと時でした。

本来、怒りの矛先は母親へ向けるべきところ。ですが、当時の私は心の中でたった一人の被害者の会を結成。悲しいかな、まだ子供。「星の王子さま」をひたすら嫌うことで心のバランスを取ってきました。
記憶って、恐ろしいですね。

本当のワルモノは、目の前過ぎて、ピントが合っていなかったんだね。


バオバブは無条件に抜く!

物語の中、博愛主義で理性的に大人びた王子様は、大概のことがらに
「わかってないなぁ…(ハァ)」
と、もっともらしいことを述べる訳ですが、
一つだけ、彼の講釈と合わない行動を披露しています。

「バオバブ」という、将来大木になることがわかっている木のこどもを見つけるや否や、引っこ抜く。か弱き小さな木を根絶やしにしようとするのですよね。

2024年、パリで開催中のオリンピックの開会式をテレビ中継で観て、気が付きました。まんま、フランス\(^o^)/

生活を脅かす存在は、手に負えるうちに処分するに限る。
生き延びる知恵ですね。

象を飲み込んだウワバミの挿絵と同率一位で好きなエピソードです。

我が家における「バオバブ」

私は小さな水槽で、数種類の生き物を飼っています。

この水槽に、「水草に混ざって暮らす羽目になった巻き貝」が2種類暮らしています。特に悪さもしないし、見た目もそれほど気持ち悪くない。吠えない。

ですが、生命力が旺盛で、物凄いスピードで増殖します。
水槽の壁や水草に、びっしりと小豆で移動速度の速い貝が棲みついて、倍々ゲームで増えています。さすがに、都合が悪いです。

水槽の持ち主=水槽世界の神である私は、定期的に、徹底的にこの貝たちをつまみ出し、卵を引きはがし、熱湯をかけて処分します。
お店で買ってきた、メダカとミナミヌマエビ、丸タニシは、多少増えても大事に飼って、罪もない2種類の貝は見つけ次第処分。

星の王子さまがバオバブの苗木にするのと同じ仕打ち。

私は、毎回とても悩みながら、貝を選別し熱湯をかけています。
昨日がその日で、今日は落ち込んでいます。


王子様の小さな星はバオバブの大木1本でダメになってしまう。
だから、彼は、見つけ次第処分する。
増えると見た目が悪いから、2種類の貝だけ処分する、私。
日記には「バオバブの日」と書いて、罪の意識を薄めています。


これはネットに書いても、まぁ差支えない「問題」だけれど、忘れてはいけこと。その人にとっての小さな罪や、ささやかな後悔は、きっとだれの人生にもあるでしょう。
(そうあって欲しい。)

そういう傷を忘れないために、多分、私は書いているのだと思います。

グルッと回って、子供の頃に「星の王子さま」を摂取したから、文章を差し出したいのかもしれません。



#なぜ私は書くのか

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