言葉の変化は考えている以上に早い?
noteを始めてから、国語辞典を開くことが多くなった。
あれ、この場合はこの漢字だっけ?
この言葉の使い方あってる? 意味を勘違いしてない?
などなど、次々に気になることが出てくる。
以前にも、気になった言葉をテーマにして記事を書いたことがある。
TVで聞いた言葉が正しいとは限らない。わざと間違った言い方をして笑わせることもあるし、咄嗟に出た言葉が、適切ではなかったということもある。
けれど正式の場ではそれはまずい。
私にとってはnoteも、大切な場所であると同時に公式の場でもあるから、きちんと伝わる文章を書きたいと思っている。
文字だけだと、対面や電話でのアイコンタクト・発声などの、文字以外の要素が加わらない分、伝わりづらいから注意が必要だと。
こんなことを考えていて、最近目にしたのは、「抗う」という言葉。
「あらがう」と入力して「抗う」と変換された。
” 反抗する・抵抗する ” という意味から考えて、この漢字であっていると思ったけれど、なぜか妙に気になって国語辞典を開いた。
あれ? 載ってない!
「あらがう」は、「争う・諍う」とだけ。
意味はあってるけど漢字が違う💦
家にあるのは、角川最新国語辞典 (山田俊雄・石綿敏雄 編) 1998年1月20日39版。確かに古いんだけど・・・
え? この「抗う」って漢字の使い方は新しいの?
WEB版の辞典には意味だけで、いつから使い始めたかなどの説明はない。
国語辞典には「争う」には小さな▲のマークが付いている。
表紙を開いた所に、この印は ” 常用漢字表にない音訓 ” とあった。
常用漢字表ってどこにあるの?
文化庁にあった。
常用漢字表 平成22年11月30日内閣告示 (つまり2010年)。
本表・付表があって、本表には字種2136字掲載され、標準とされる音読み訓読みが記載されているとのこと。
「争」は「ソウ」と「あらそう」が載っていて、「抗」は「コウ」と音読みしかない。
なるほど、「あらがう」は ” 常用漢字表では標準とはされない訓読み ” ということか。
じゃあ、 新しい辞典には「抗う」が載っているのかな?
辞典を探してみたくなって図書館へ。
2冊の国語辞典と1冊の大辞林があった。
岩波国語辞典 第七版 2009年11月20日第一刷
西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫 編
三省堂 新明解国語辞典 第八版 2020年11月20日第一刷
山田忠雄 倉持保男 上野善道 山田明雄 井島正博 笹原宏之 編
三省堂 大辞林 第四版 2019年9月20日第一刷
松村明 編
3冊とも「抗う」が掲載されていた。言葉そのものの意味はほぼ同じ。
マークやその説明は少し違っていたけれど、” 漢字は常用漢字表に含まれるけれど、訓読みは表には含まれない”ということは一致していた。
2009年の岩波国語辞典に載っているのに、2010年の常用漢字表には載っていない???
はてなマークが増えてしまった。
どうして常用漢字表にある漢字なのに訓読みは表に含まれないのかとか、
含まれないのにPCなど日本語入力機能に入っているのはどうしてかとか、
謎は残ったけれど、ここで探すのは止めることにした。
専門家の方に伺わないと答えは見つからないと思うし、それより私には気になったことがあったから。
言葉が変化することは知っている。
例えば「いとをかし」は、音の響きから想像する意味とは全く別の意味を含んでいた。そして現代ではほとんど使われなくなった言葉。
「あわれ」は古文では「あはれ」と書いたけれど読みは同じ。こちらは意味は変わっているけれど、現代でも遣われる。
私は、とても長い時間をかけて変化するのだろうと思っていた。ゆっくりゆっくり、気づいたら変わっていた、というような。
流行語や造語の類はちょっと脇に置いておくとしても、言葉や漢字の変化はもっと早いものなのかもしれない。
もしかしたら、変化が激しくなった現代だからこそ言葉の変化も早くなっているのかも。
まるで生きているように、時代や社会に順応し、その時代を特徴付ける言葉になる。さまざまに変化し、その言葉を遣う人そのものを、顕しているのかもしれない。
いやそれだけに留まらず、遣う言葉がその人を変えていくのかもしれないとさえ思う。
記事を書くとき、状況や自分の考え・感情に近い言葉を探すように努めてきたけれど、こう考えると、ますます迂闊な言葉は遣えない、いや遣いたくないなぁと思う。
※ 因みに、「顕す」も常用漢字表には含まれない読みだった(笑)
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