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今日のテーマは「技能」にこだわる理由。

先月から動き始めたザ・クラフターズプロジェクト。今週末に残るあと一人が増えて勢揃いします。

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このキャラクターたちを生み出したのは「ブラスター松下」というイラストレーターさん。各社に訪問してそれぞれの特徴を見聞きして絵で表現する。
私にはない能力すぎて毎回感心してました。2時間弱で仕上げてしまうその能力は彼にしかない特殊技術なのではないかと思います。
「ザ・クラフターズ」は”技能で人を変え、世界を変える”というコンセプトで、各専門の技能を持つ企業が集まりました。
「技能」と「技術」何が違うの?ここについてお話したいと思います。

技能と技術の違い、調べてみました。


人の働きや動きに着目した内容を「技能」
技の表現・伝達・置き換えに着目した内容を「技術」として方法・手段を表す。

その違いを自分で振り返る

20年ほど前になりますが父の家業である金型屋さんで仕事するようになった時、退社する社員さんの代わりに私が現場に入ることになりました。
その時にいきなり使い始めたのが
「マシニングセンター」「ワイヤー放電加工機」「NCフライス」
というプログラムを読み込ませて金属を削ったりカットしたりする機械。
指導を受けたのは1日だけ。翌日から自分で金属を削っていました。機械を動かすには条件設定とプログラムが必要です。それを知って動かさないときちんとした加工はできません。
もちろん、当時未経験者の私がそんなことを知ることはありません。
だけど、機械を使って加工できていました。
その理由は「条件設定されている」からです。要はプログラムを作成するときに必要な条件を選択して作るだけで機械を動かして加工ができたということです。

その後、さまざまな素材を加工していましたがある時、トラブルが発生します。素材が熱を持って反ってしまったのです。それも20個も。
1個でわかればいいものを「機械は絶対」だと思っていたために全数加工してしまったんですよね。不良で大損害になるところでしたが良品にしてお客様へ納品しました。これ、機械を使えるだけの私だったら全数やり直しという大赤字を発生させるところでしたが、職人さんが修正して寸法通りの製品に仕上げてくれたおかげで事なきを得ました。

なぜそんなことができるのか。職人さんに聞いたら「材料と友達になったらできるんや」という一言。その意味の深さは後々知ることになります。

その時をきっかけに現場の職人さんの見方が変わりました。
NC機を動かすことはできなくても物事の基礎、技術の基礎、構造の基礎
あらゆる基礎を作るという経験を積んで理解している人が職人さん=技能者だと思いました。

技能者のすごいところ。

私の中の解釈は簡単です。「経験している数の多さ」です。
職人さんと聞くと年配の方のイメージが出てきがちではないでしょうか?
その理由は年配の方々の方が膨大な量の経験を積み、体で覚え、頭で覚えていることが多く、何でもかんでも必要となれば「機械がなくても作る」からではないかと思っています。職人さんが作ったものって
機械がないのにこれどうやって作ったの!?
3Dデータないのにどうやって形にしたの!?

そう思うものがたくさんあります。
昭和の時代をものづくりで支えてきた方々がよくおっしゃるのが

「自分たちの時代はモノがない、買うことができない、作るしかなかった。"欲しいものは作る"やったからなぁ。」

という言葉。自動で動く機械もない時代に皆さんは自分の手でものを作ってこられました。機械すら自分で作っておられたと聞いています。
今の時代がこんなに便利になったのもその礎のおかげだと思います。
その経験値は何にも変えがたいものづくり業界の財産ではないでしょうか?

デジタルとアナログどっちが大事?

職人さんたちのものづくりの手法は「アナログ」と表現されるようになりました。昔ながらのやり方は大切だ!そこは譲れない!そんなことって町工場でよく起こっていることではないでしょうか?
ではデジタルとアナログ、どっちが大事なの?ってなるんですが私は
どちらも大事で必須だと思います。
デジタル技術を活用しようと思ったらアナログ技術(経験値)が必要。
私の経験が事例になるように、ただ機械を使えるだけでは良い商品を生み出すことはできません。
だからと言ってアナログ技術だけでは今の時代のものづくりには応えることができない。両方の両立が必要でどちらかに寄るのは良くないと思います。
デジタル化するにしても基礎技術というのは必須です。勉強して知った知識ではなく現場で経験して得ることのできる「本の通りに行かないこと」を学ぶ。デジタルにも必要でアナログにも必要なことでもあると思います。

【デジタルが必要な理由】
 ミクロン単位の高精度な製品を作るため
 自動化して同じものをたくさん作るため
【アナログが必要な理由】
 教科書にはないものづくりのノウハウがある
 作るプロセスの中で応用を効かせられる
 現場に活きる工夫力がある

技能にこだわる理由

現場の職人さんの特徴で一番多いのが「なければ自分で作る」です。
生産現場では
いかに早く・的確に・不良が出ない状態でものを作るか。
を考え、治具(部品を固定したり、作業のガイドになるもの)を作って流れやすくする=段取りができます。
製品実現の場面では
どうやったら図面通りにできるか、何を使えば実現できるか。
ありとあらゆる知識と経験を出し切って形にしていきます。

この二つに共通することは「ないものを作る」ということです。
彼らにはものづくりにおける固定概念というものがありません。そこが大きな価値だと思います。創意工夫力の塊だと言っても過言ではないと思います。

工場の方だとあるある話だと思います。
現場にちりとりが必要。このシーンに直面した時、現場の方は何をするか。
目の前にある一斗缶(油が入っている缶)を斜めにカットして取ってつけてちりとりにします。怪我しないようにと端面の処理もきっちりして。
一般的な考えだと「なければ買う」になると思いますが彼らは違います。
「いると思ったら作る」です。しかも周りを見渡して「あるものから作る」んですよね。

0から1を作り出す力がある。

ものがたくさんある時代になりました。何でも買えば揃う。昭和の時代を生きてきた人とは真逆の環境です。しかし、そのせいで創意工夫する、自分で作る、それができた楽しみ、感動を知る、人に感謝される、そういう経験ができないのではないか?と思います。
ものが溢れる時代だけれど人が求めることはある。それを実現するためには
0から1を作る力を求める人がたくさんいます。
人のことは人にしかわかりません。誰かのために何かを生み出すのは人にしかできないこと。日本にしかない技能を増やしていきたいと思うのです。

技能は経験を通して学ばないと得ることができない「技」。人が作り出したもので伝承によってのみ受け継ぐことが可能。答えは同じでも人が違えばやり方も違います。技能が育つと人間も育つ。人間が育てば技能も育つ。

技術は伝達を目的として生み出された「技」。流通性が高い。やり方・方法・手段で、マニュアルなどの情報により伝達が可能。

技能にこだわって2つのことが始まりました

技能は人から人へ伝えることでしか伝承できない。
職人さんが持つ「技」を1日でも多く経験し、教えてもらって欲しい。
その想いから「体験型ものづくりの習い事、リトルマイスター」を始めました。
https://note.com/toya_machico/m/m9de009282582

そして作りたい想いを持つ方々をサポートする技能チームとして「ものづくり日本代表!ザ・クラフターズ」が誕生します。
指示されたものを作る。これにより職人さんは多くの技能を身につけています。その技能を0から1を生み出すものづくりに活かしていきたい、そう思って多種多様な専門企業の皆さんとチームとなったのがクラフターズです。

日本が培ってきた技能を今現在、そして未来に広げていきたい!!
その想いでいろんな取り組み進めています。
どんな形で広がっていくのは未知数ですがまずは「楽しむこと」かな。

すでにクラフターズで商品開発などお手伝いさせていただいている今日この頃。いろんな面白いものづくりやっていきたいと思います。

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