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連勤日記 91日目 ヌクリア

8月6日(火)堀栄三氏の大本営参謀の情報戦記、5章4原爆投下機のコールサインを読み返す。先の大戦で日本は米海軍の暗号無線を解読できていなかったが、各機に割り当てられたコールサインと通信慣習は理解していた。

昭和25年5月中旬、ホノルルを飛び立った1機のB-29はV600という今まで聞いたことがないコールサインを出した。そのうえ一介の戦闘機がワシントンに長文の無線を送る極めて不可解な行動をとった。

日本軍は当初、正体不明機と呼んでいが2ヶ月かけて日本近海にまで飛行空域を伸ばす頃には特殊任務機と呼び変えていた。何かあるのは明白だった、7月16日のニューメキシコ州での米国新実験の情報はつかんでいた。

8月6日午前3時頃、特殊任務機はまたワシントンに無線を飛ばした。短い内容だが解読できない、B-29の3機編成。午前4時すぎ硫黄島米軍基地に対し、われら目標に進行中の無線。何かあるなら今日だと確信。

実はこの前から機先を制しおおもとのテニアンを叩く意見が出ていたが硫黄島陥落後は日本の重爆の航続距離の問題で不可能となっていた。また日本はスウェーデン経由で入手したMー209暗号機での暗号解読も試みていた。

8月6日午前7時20分ごろ、硫黄島以降いっさいの電波を遮断していた特殊任務機の1機が広島上空に現れ簡単な電波を発信。この1機が偵察で後続の2機が爆撃機だ。爆撃機は常套戦法の裏をかき偵察機の逆側から現れた。

午前8時15分万事休す。情報戦の敗北で広島十数万人の生命が失われた。これは、信じたくないのだが、例のM-209暗号機が8月11日に一部解読に成功し「ヌクリア(Nuclear)」が浮かびあがった。


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