冲方塾 創作講座28 文章の推敲
さて、前回の復習です。
物語の作り方には大きく分けて四つの方法があります。いろんなノウハウが書かれている本がありますけれども、基本は同じです。
ブロック法は、ブロックを積んでいって、出来事を並べていく方法。
脱連想法は、既存の連想から逸脱する方法。内的体験、外的体験、学習体験がもとになります。
ヒーローズ・ジャーニーは、神話の比較研究の成果を現代に活用する方法。
ゴールデン・サークルは、「なぜ」という動機に着目する方法。
で、こうした方法論だけでは物語の中身は作れません。
ブロックを並べたり、突飛な考えをひらめかせるだけでは、瞬間的なシーンが無意味に並ぶだけになります。それは物語とはならない。
重要なのはどんな常識があって、そこから抜け出すかというスタート地点。そしてそうすることにどんな意味があるのかというゴール地点ですね。このスタートとゴールの間にあるすべて、それをあまさず想像することが、物語作りの重要なポイントになります。
もうひとつ、物語とは何か。
前回の講義で、必然は連想である、偶然というのは脱連想であるということを話しました。
常識を抜け出すための連想を積み重ねる。これが物語の始まりになるんですけども、このあと必然ばかり積み重ねたり、偶然だけを連結させても、物語にはならないんですね。
よくあるのが、小学校とか中学校の物語作りの授業なんかで、男の子が公園とか家に立っていて、この次に何が起きるのか連想してみようというもの。隕石が降ってくるとか、UFOが現れるとか、怪獣が襲いかかるとかがあるんですけども、重要なのはそこに立っている男の子がそれについてどう思うのか、どう影響を受けるのかです。
ブロックを積み重ねていって、突飛な連想をさせる訓練ばっかりしていくと、結局その男の子が隕石が降ってきたのを見て、怪獣が襲ってきたのを見て、何かものすごい出来事を散々経験したんだけれども、結局「何も感じませんでした」みたいな結論になってしまう。
そうではなく、必然と偶然の積み重ねを行き来し、常識と非常識、安定と不安定を知ることで、何が得られて心がどう変わったかが重要です。
立っている男の子は隕石や怪獣という体験をどう捉えたのか。
本来物語というのはそこに着目してより豊かに書くための技術であるわけですね。
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