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冲方塾 創作講座17 講評⑥ゴールデン・サークル

 みなさんこんばんは、本日もよろしくお願いします。
 冲方塾出張所第7回、折り返し地点になりました。
 今回のテーマは「解決する」になります。これまで「和解する」と表記してきましたが、どうもみなさん、和解するとは仲良くなることだと解釈されているようなので、「解決する」という言い方に変えました。
 論点を把握し、解決を定義する。それが今回の課題となります。
 さて、その前に復習です。
 命題とは、何度も言っておりますが、「主語」+「~である」という文章であって、特徴はイエス・ノーがいえる。
 
 たとえば「私は男である」という極めて単純な事実に対しても、言葉というのはそれに対してイエス・ノーが言えるわけです。
 前回、意見を表明するときの段取りとして、命題の反芻、反論、解決、なんてやりました。 
 半数の次は、ノー。「しかし、お前は本物の男ではない」。反論です。
 本物の男であるには○○が必要だ、みたいなね。これが解決になります。自信が無い男性用セミナーはこういう文脈で勇気を出させるということをやっておりますね。さておき、○○である、ということに対して、厳密な定義をしつつ、それをひっくり返しています。反論する理由が、目的にもなっていますね。「本物になる」という解決が。

命題とは
 「主語」+「~である」という文章であり、イエス・ノーがいえるもの。
 「私は男である」という単純な事実に対しても言葉の上でイエス・ノーが成り立つ。
 イエス=「確かにお前は性別上は男だ」……命題の反芻。
 ノー=「しかし、お前は本物の男ではない」……反論。
 「本物の男であるには○○が必要だ」……解決。

 前回までこの反論の仕方を学んできたわけですけれども、いよいよ命題、反論、そして解決にいたる。こういった流れを学んでいきたいと思います。
 さて、命題があるということは、いわゆる考えている、ということ。
 あることを思ったり、あることを考えたりしているということは、そこに「命題が存在する」と言い換えることができます。
 命題を言葉にすることで、反論や解決が可能になる。何度も申し上げていますが言葉にならないものは人間は認識できません。
 第一回の講義で見た動画で、ゴリラに気づかないのと同様、人間というのは多くの物事に気づかず生きている。言葉は、物事に気づかせることで最も力を発揮する。それが言葉の役割であり、命題の意義です。

 これをよく理解して頂くため、前回、ゴールデンサークルという考え方を示しました。真ん中に理由「WHY」があって、「HOW」があって「WHAT」がある。
 大量生産・大量消費社会はWHATが最初だった。鉄がいっぱい作れる、蒸気機関車がいっぱい走れる、冷蔵庫をいっぱい作る、頼まれないのに石鹸をいっぱい作る。とりあえず「WHAT」モノが先に来ていた。それをどう消費させるかが今までの広告、経済、資本主義であったわけですね。
 それをひっくり返した形にした。自分はどういう存在か、みなさん個人個人がすでに答えを持っているという前提です。

 個人の最も奥深くにある願いを、どうしたら実現できるのか、どんな行動をすれば、どんな成果を上げれば、このWHYに応えたことになるのか、という考え方の逆転が、世界のあちこちで起こっている。
 
 ゴールデン・サークルはこのように置き換えられる
 「命題」=WHY?  なぜそうなのか、理由は? 
 「反論」=HOW?  どうしたらいいか、方法は?
 「解決」=WHAT? 実現したら、何が生まれる?

 ちなみに、ゴールデンサークルという言葉で検索してみた方はいらっしゃいますか。いろんな企業が一時期バーンと打ち出していましたね。
たとえばマクドナルド。

WHY みんなの笑顔が大好き!
HOW おいしいものを安く提供すればみんなが笑顔になる。
WHAT ビッグマックの三段版が登場。

 不健康になる食品を売っているという批判がある中で、ある種、やり返したといえますね。健康志向やビーガンに対して、「笑顔」で対抗するといいますか。
 こんな風に、世の中のゴールデンサークルを調べると、いろいろ出てきますよ。
 というわけで、さっそくみなさんの提出物の講評に入りたいと思います。

■1
お題、瀬戸内寂聴先生みたいな人生を送りたい。
WHY、自由に楽しく生きて、90過ぎまで現役で仕事して色恋も充実させたい。
HOW、小説を書く。
WHAT、売れっ子作家になって、お金をもうけて、各方面からちやほやされる。

■講評
こうなりたいというモデルロールと、たいへん素直なWHYが出ましたね。
HOWは小説を書く。寺に入るんじゃないんだっていうね(教室・笑)。
ロールモデル、つまり参考になる人間から、羨望や目標となるWHYを抽出しようとしている。
まず自由であること。瀬戸内先生は、自由に振る舞っているように見える。楽しく生きているようにも見える。そしてなにしろ90過ぎまで現役で仕事をし、色恋まである。仕事と色恋というのがセットですね。ちょっと一足跳びにWHATになっちゃってますけれど。
人生を自由に楽しく生きるとは? ちゃんと仕事があって、色恋がある。これらを実現するにはどうしたらいいか、ということで、小説を書くという答えをこの方は見いだしたわけです。
 では小説を書いたらどうなるのか。
 WHAT、売れっ子作家になって、お金をもうけて、ちやほやされる。
 これくらいわかりやすいほうが、ご本人の心の支えになるというか、何のためにやっているかがはっきりする。ただこれは難点があってですね、自由に楽しく生きるということと、売れっ子作家になってお金をもうけるというようなことが、つながってないんですね。現役で仕事をするという点では、売れっ子作家になるというのはわかりますけれど、各方面からちやほやされることで必ず色恋が充実するかは、なかなか難しいのではと。まあ可能性は高まるんでしょうけれど。
 尼さんなのに色恋が充実しているというのは表面的なWHATであって、裏側には寂聴先生イズムがある。それが自由な印象をもたらす。
 全部のファクターが小説を書くことで成り立つというのは、けっこうな飛躍ですね。どちらかというと、小説を書くことが先にあって、モチベーションを後から考えた感じです。もしかすると「売れっ子作家になる」から逆算したゴールデン・サークルを考えたら、心の根っこに瀬戸内寂聴先生がいるのがわかった、ということかもしれません。
 まあスタートとしてはよろしいと思います。あとはこれを詳細に検討していくことで、より深くゴールデンサークルが見えてくる。

 ちなみの小説では、登場人物全員のゴールデンサークルがわからないと、生き生きと描写できません。また、議論する相手のゴールデンサークルを知らないと、その人たちを論じることもできない。
 自分のゴールデンサークルを作りながら、いろんな人のゴールデンサークルを見抜く目を養う。そうすれば、色恋を充実させるとか、そういうことへの近道にもなると思います。
 では次の講評です。こちらはWHYに小説を書きたい、とある。

■2
WHY、小説を書きたい。
これまでは小説論、脚本術、演劇論等々を扱った書籍で理論を自習し、たまに短編を自作することで実践を重ねてきた。
しかしどこか手応えがなかった――自分の実感としても、他者からの反応についても。その実感を例えて言うならば、必殺剣の真似事に耽るばかりで、剣の持ち方、振り方といった部分がどうにも覚束ないような。
他者からの反応も芳しくない。読者がどう感じ取るのかを意識した文章が書けていないのではないか……と、通り一遍に反省するも、堂々巡りの独り相撲に陥っている感が拭えなかった。

HOW、そういうわけで、まずは基本に立ち返るべきだろうと考えた。思えば、「剣」そのものの――日本語の特性を意識することが少なかった。どう使えばどう切れる道具なのか、そもそもどのようにして発展してきた道具なのか。それを知らねば切れるものも切れないだろう。
現役の小説家による講義でそうした特性を理論立てて学び、毎回の課題でその実践を行う冲方塾出張所はまさに渡りに舟だった。

■講評
ちょっと「必殺剣」の定義が不明ですが、基本がおぼつかない、と。小説論を学んできたけれど身についていないような気がする、ということかな。
 手応えが無い。実感がない。堂々巡りで成長の実感がないと。
 現状について書かれていてWHYが行方不明になりそうですね。
 次がHOW。「剣」は言葉のことですかね。基本に立ち返ろう、自分が使おうとしているツールの正体を見抜かなければいけない、と。
 最後のところはキャッチコピーで使わせていただきますね(教室・笑)。

■2続き
 自由課題についても、かつて挫折してしまった書写訓練を再開する切っ掛けとなった。最前線にいてすら多様な表現技術を常に取り入れるために「素振り」を欠かさないのだという事実も、自らの糧となった。それまでは「ある程度文体を取り入れられればそれで終わり、いつまでも続ける必要はない」と甘く考えていたのだ。

WHAT
そうした過程の中間産物として、ひとまずはこの文章ができたというわけである。

■講評
 いままでの自分の態度に対し、反論して、反省を促した。
 もうちょっと具体的になるといいですね。どんな小説を書くことが目標なのか。長さだけでも、短編、中篇、長篇、掌編、ショートショートなどある。どれぐらいの時間、労力、技術を必要とするものを書こうとしているのか。もっとHOWとWHATを考え、反省した結果、何をやるか見えれば、はっきりとしたゴールデンサークルになります。
 次は他者のためのゴールデンサークルです。

■3 ①
 経営者として、誰もが働きやすく、誰もが働きたいと思える職場を作りたい
WHY、何故そう思うのか。それは、私が会社を運営する目的は、社員の皆さんの幸せを守ることだからです。

■講評
 マクドナルドのみんなが笑顔になってほしいと一緒です。全ての原理となるWHYですね。では手段。

■3続き
 HOW、私は自分の会社を、皆さんが人生のうちの多くの時間を費やすに値する、素晴らしい職場にしていくことで、皆さんの幸せを守り増やしていきたいと考えています。
居心地の良い職場で、やりがいのある仕事をすることは、人生を幸福にするわかりやすい方法のひとつだと思います。
 素晴らしい職場に必要なものは、「思いやり」と「利益」です。
 まず、思いやり溢れる寛容であたたかな組織作りのために、時間的、肉体的、精神的に余裕のある業務状況を維持し、個々人の不安やストレスを減らします。

 また、互いを知りあう時間や、前向きで親密な相談や意見交換ができる時間を沢山作ります。利益と利益率確保のためには、まずは効率化、次に付加価値をつけ競争力をあげ、かつ誠実にきめ細やかにお客様との信頼関係を築き続けます。私は、これを行うことで、この会社を更にお客様に喜ばれる会社とし、働く皆さんに、より大きなやりがいと、満足のいく報酬を提供できると信じています。

■講評
 因果関係を整理していますね。まずお客様と信頼関係を築く。信頼関係を築くとお客様に喜ばれる。そのあとリピーターとしてお客様が会社の商品なりサービスなりを買い続けてくれる。そうなると会社で働く人たちもやりがいが出るし、なにより重要な利益が提供できる、と信じている、と。
 流れがよく整えられています。

■3続き
 WHAT、そして、「この会社で働こうと決めてよかった、毎日ここに来て仕事をすることが楽しい」と皆さんに思っていただける職場を作ることができたとき、皆さんだけでなく、私自身がとても幸福になります。この職場作りは、私にとって最高の「仕事」なのです。

■講評
 人を幸せにすることで自分も幸せになる。情けは人のためならずである。このWHYの結果生まれるものは私自身の幸福である、と。
 これ自体は間違っていないわけです。書き方、あるいは考え方、あるいは論理的な積み重ねとしては。ただ一番重要なのは、WHY。
 そのひとのゴールデンサークルなわけですから、経営者として幸せになる、が命題ですね。
 HOW。どうしたら私は経営者として幸福になるか。それは社員を幸福にすることである。これが、自他をつなげるHOW、WHATの文脈です。
 で、WHATが来る。社員が楽しい、私も楽しい、私も幸せになる。幸せという価値観が形になる、それこそが職場である。さらに職場作りや仕事作りをもっと厳密に考えていくと、より明確な文章になります。
 この方から質問があったので、ちょっとご紹介しますね。

■閑話休題 文章の削り方
【質問】すぐに文章が長くくどくなります。削れば削るほどよい文章になるとよく言われますが、削ると自分の伝えたいことも削られてしまう気がしてしまいます。適切に削り、より相手に伝わる文章にするには、どうしたらよいですか?

解答】
 適切に削り、より相手に伝わる文章にするにはどうしたらよいですか、の答えは簡単で、「同じものを一つだけ残して他は消す」。

 つまりですね、同じことを何度も書かなければ文章は自然と短くなるんです。重要なのは同じことを書いていると認識できるかどうか。
 先ほどの文章を失礼ながらテキストにさせていただいて削ってみていくと、たとえばですね

例文)
経営者として、誰もが働きやすく、誰もが働きたいと思える職場を作りたい

 ~たい~たいと重なっていますね。「誰もが」も二回出てくる。これは、こう言い換えられます。

修正例)
経営者として、誰もが働きやすく、働きたくなる職場を作りたい。

この調子で、毎行5~6文字ずつ削っていくと、10行で5~60文字になるわけですから、原稿用紙の4分の1ほどが消えますね。で、次の文章。

例文)
皆さんが人生のうちの多くの時間を費やすに値する、素晴らしい職場にしていくことで、皆さんの幸せを守り増やしていきたいと考えています。

(修正例)
皆さんが人生の多くを費やすに値する職場にすることで、幸せを守り増やしたい。

 まず「皆さん」の繰り返しをなくす。「人生のうちの多くの時間」は、人生は時間のことを言うわけですから、「時間」はいらない。同じ理由で「うちの」もいらない。
 人生の多くを費やすに値するものというのは、つまり素晴らしいことなので、「素晴らしい」もいらない。「いきたいと考えています」もいらない。結論として「増やしたい」で充分です。
 もっと感情豊かに書きたいときはこれにくっつければいいんですけれど、この文章のエッセンスはこれです。半分ぐらいの長さになりました。
 この調子で重なっている部分をどんどん削っていくと、要約されます。削っていいのかな、削っちゃいけないのかな、と迷うということは、同じことを言っているかどうかがわかっていないということです。

■4
[WHY]私は太りたい
[HOW]必要なものはダイエットだ
[WHAT]それによって私は私の人生をひとつひとつ豊かにする

■講評
 一般的ではないので、何を言ってるかわからないでしょう、ということで、詳細が付記されています。

■4続き
[WHY]私は太りたい
私は現在31歳、167cm、47㎏、BMI指数は16.85の痩せ型の男性だ。十年以上前の学生のころから太りたいと思っているが、ずっと痩せている。太ったことは一度もない。確かに満腹感で気持ち悪くなるほど毎日食事をすれば太りはするのだろう。しかし実際には三食きっちりと摂るどころか朝食を抜くことすらある。年を取れば太るだろうと漠然と思っていた。しかしそんなことはなかったし、その兆しすらない。痩せたい人が楽して痩せたいように私も楽して太りたいのだ。そして何よりもBMI指数16というのは死亡リスクが高い。
体型による死亡リスクは太っていることより痩せている方が高い。統計の数字をグラフにすれば"し"といっていいほどの差が出ている。死亡リスクは痩せ型が最も高く標準体重になるつれ減り、肥満度2にあたるBMI指数30あたりから上昇し、BMI指数40でもまだ痩せ型の方が死亡リスクは高い。
ちなみに167cmで換算するとBMI指数30はおよそ85㎏で40は112㎏ほどだ。
私は47㎏であるより112㎏であった方が長生きするのかもしれない。

■講評
 現在31歳でこういう体型だと、太ったことがない。
 とりあえずこんな理由WHYで太りたい、と。

■4続き
[HOW]必要なものはダイエットだ
そんな自堕落な私がやるべき行動というのは、健康的に朝、昼、晩の三食を摂取することと筋力トレーニングなどの無酸素運動と十分な睡眠という痩せるために必要な行動と何も変わらない。普通のダイエットと同じ内容だ。
そしてダイエットが目指すものというのは、痩せることでも太ることでもない。
改めるべきは行動であって、行動を改めるためには思考を改める必要がある。
 現在、私の定義する食事とは活動するために最低限必要な栄養補給の手段となっている。
これがよくない。
 食事が義務感の伴う労働になっているとすら言える。欲望とはもっと喜びの伴う行動であるべきだ。ダイエットによってこの思考を改め、それによって行動を是正する。
具体例を言えば、私はヨーグルトが嫌いだ。 酸っぱ過ぎるから食べなかった。だが健康になるためには食べた方がいいようだ。そこで大量のハチミツをかけて食べた。ちなみにハチミツも嫌いだ。甘過ぎるからだ。
しかし食べてみると不思議とヨーグルトもなかなかうまいじゃないかということを発見する。運動も同じことだ。嫌いな、やりたくない運動をどうすれば楽しく感じられるかという思考。それを発見し義務感をなくすことがダイエットの目指すべきことだからだ。

■講評
 肥満の人たちは本来の体型に戻る、つまり痩せている人にとっては太ることになるんじゃないかと。
 途中から違うこと言ってますね、これ(笑)。まぁダイエットによって思考を改めて、行動を是正する。これはWHATになっていますね。
 痩せすぎを解消するためには、そうだ逆説的にダイエットをすればいいんだ、そうすることによって健康になる。その結果、嫌いなヨーグルトも蜂蜜も食べられるようになり、健康的な生活をするだけでなく、やりたくないことすら楽しく感じられるようになった。その結果として、

■4続き
[WHAT]私は私の人生をひとつひとつ豊かにする。私がこの体型である一番の原因は、行動力の欠如だった。
 いつか太るだろうという可能性を信じているだけで、何もやってこなかった。私は太ることによって、やればできるだろうという可能性ではなく、やってできたという行動の実績と自信を手にし、嫌いだったヨーグルトをうまく感じるようになったように、私は私の人生をひとつひとつ豊かにする。

■講評
 WHATかHOWかわからないものが混ざっていますね。
 私の人生の一つ一つが豊かになった証拠、WHATをここにならべなきゃいけないわけです。ここでヨーグルトが好きになった、蜂蜜が好きになった、嫌いだった運動が好きになった、人生が楽しくなった、痩せていると死ぬんじゃないかという不安がなくなった、これがWHATです。
 私は私の人生を一つ一つ豊かにする。この「一つ一つ」をここでならべなきゃいけないんです。
 段落が作られているんですが、中身がごちゃっとなってしまったかなと思います。内容を整理し、太る手段とその成果をはっきりさせましょう。
 では次です。

■5
やりたいこと、パリで美味しいものを食べたい。美味しい店を見つけたい。

何故
私は美味しいものを食べること、美味しいお店を見つけることが好きだ。パリには美味しいものを売っている店が沢山ある。だから、街を歩きながらマルシェや行ってみたいパン屋、菓子屋、気になった店舗に入り、それぞれの店で少しずつ気になったものを買ってホテルや公園で食べたい。また、ビストロでの食事も楽しみたい。

如何に
・航空券と宿泊場所を確保する。
・職場に休みの申請をする。
・行ってみたい店舗の営業日と営業時間を調べ、行程を決める。

■講評
とてもわかりやすいですね。できるんだという前提で書いています。お金もあるし、時間もある。

■5続き
何を
・パリで食べたいと思うものを食べて、食欲と好奇心を満たすことができる。

■講評
 ここに店舗の営業時間がもっと具体的に出てくるとよかったですね。マルシェの○○、コックの○○の料理が食べられるとか。
 はっきりと段落を作って、ゴールデンサークルが成り立っていますが、もっと具体的に目標を厳密にしていくことも可能です。では次です。

■6
 私の課題はスタッフをやる気にさせて、楽しく仕事をしてもらうことである。最近、スタッフのやるべき仕事が多く、不満が高まっている。また、スキル以上の難しい仕事を任せられストレスを感じている者もいる。

■講評
WHY、WHAT、HOWが上手く分かれていないんですが……まずここですね、いきなりHOWになっている。WHYがない。なんで? そもそも私はこの仕事にやりがいがあるとか、私はこれ以外の仕事は考えられないとかですね。これだと、人に言われたり、目の前にある課題があるだけですので、もっとWHYが深められるとよかったですね。

■6続き
 どうやったらいいのか。
 まずはスタッフの良い点を見つけて、具体的に私が褒めてみようと思う。これで、認められていると言う思いから仕事が楽しくなる。
やる気にさせるには、到達しやすい目標を設定させ、成功経験を増やし自信をつけさせる。
そのためには、スタッフの仕事を細分化させ、多くの目標達成体験を積み重ねていく必要がある。
これを行うことによって人の本能である承認欲求が満たされ、スタッフをやる気にさせる。
そして、楽しく働いてもらうことができるのである。

■講評
 一応これがHOWやWHATになっています。ストレスを感じている状況も改善されるはずだというのが、WHATなんでしょう。
 先ほどの経営者の方の文章に比べて欠けているのは、楽しく働いてもらうことができるからなんであるか、という観点。
 みんな楽しく働けるようになり、私は安心して定年を迎えて会社をやめられる、といった理由が明らかになるといいですね。
 本当に私が褒めればこの人たちはやる気になるのか、どう褒めればいいのか、なんでそこまでやらなきゃいけないのか、やってどんないいことがあるのか、など、もっと探ると、よりゴールデン・サークルが明確になります。
 では次です。

■7
命題、通勤ラッシュを解消するための方策を考える

■講評
これはお題ですね。通勤ラッシュは解決すべきであると主張している。

■7続き
なぜ
通勤ラッシュになっている原因を考える。ある地点からある地点へ移動したい人が電車の運べる人数を越えているから通勤ラッシュが生じている。

■講評
これは原因を追及していますね。WHYとはちょっと違う。HOWですね。なんでそうなっているのかを書いている。

■7続き
 如何、方策を考える。
 運行する電車の本数を増やす。1列車当たりに連結する両数を増やす。どちらの策も限界まで遂行されている。この策を遂行してもなお通勤ラッシュか解消されない現状をどのように解決したらよいか。
 何を、通勤ラッシュ時に電車に乗る人を減らせばよい。時差通勤や在宅勤務が推奨されているのはこのためである。これが現在行われつつある通勤ラッシュ解消の方法である。
 しかしこの方法にはデメリットがあり、鉄道を利用する人が減れば、その分鉄道会社の経営が厳しいものになり、場合によっては鉄道会社か破産する場合もあることに注意を払わなければいけない。

■講評
 「あなたのゴールデンサークルを考えてほしい」というお題だったんですが、交通事情についての文章になってしまっている。
 そもそも通勤ラッシュを解消しなければいけない理由がないんですね。別に混雑していたっていいじゃないか、という考え方も成り立つ。
 最後に鉄道会社が破産してしまう、人が乗らなくなるとそれはそれで困るみたいなことを本人も言っているわけです。通勤ラッシュがじゃんじゃん儲かるならぎゅうぎゅうづめの貨物列車みたいなものにすればいいじゃないか、と。
 WHYがなくて、HOWだけなんですね。
 私は通勤ラッシュでへとへとにつかれていて、どうにかして解消してほしいからだとか、私の父は通勤ラッシュのせいで心臓麻痺で死んでしまったので、通勤ラッシュを心から憎んでいるとか。
 そうした「私」がいないんですね。だからゴールデンサークルを作りようがない。
 これは社会的な課題です。なぜこの課題に取り組まなければいけないのかを見抜く。それがゴールデンサークルです。
 通勤ラッシュが解決されたとき、この文章を書いた方にどんなことが起こるのかもない。WHATもないんです。ここもやはりずっとHOW。
 残念ながら、これはゴールデンサークルとして成り立っていません。
 
 以上、講評でした。
 課題の目的は、命題、反論、そして解決を意識することです。
 ではいよいよ「解決してみよう」の段落に入りたいと思います。反論ののち、「ではどうしたらいいのか?」ということを考えたいと思います。

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