収穫逓増産業・収穫逓減産業そして政府(社会セクター)
収穫逓増産業では、規模の拡大は企業にとっても社会にとっても正義であり、その自然独占の利潤を企業内外でどう配分するかが課題となる。一方、収穫逓減産業は、一般的には(市場)規模が小さな産業であり、自由競争の状態であり、利潤が小さくなりやすく、収穫逓増産業との待遇の格差が、必然とは言え、問題となる。
ゆえに、政府や社会セクターが、このように必然的に発生する格差の影響を、解消するのではなく、緩和するような施策を打ち出すことが期待される。具体的には、JGPやBIといった所得面のサポートや低廉な生活必需サービスの提供によるボトムラインの下支えが考えられる。
収穫逓増産業
該当する業界
いわゆる規模の経済が効く業界。端的に言えば、(初期投資を含めた)固定費が大きく、変動費が小さなもの。たとえば、ソフトウェア、あるいは重厚長大な産業(鉄鋼、自動車etc)が該当する。
その特色
これらの産業において、規模が大きくなって、価格を下げることが出来ること自体は、社会の厚生を大きくするので、基本的には正義。(私としては、組織に属することの具体的メリットとして、納得感がある。)
課題と対策
ただし、自然独占状態になりやすいので、企業内外において、利潤の分配が問題となる。企業外部に対しては、販売価格の設定や利潤そのものの配分、企業内部においては労使の利益配分が問題となりうる。余計なリソースを抱えることが出来るので、ブルシット・ジョブ(私は今のところ、当該図書未読)の原因になっているかもしれない。
前者については、年金基金により株式を取得し、ROEの増加を要求することで、企業外部への利潤の提供を促し、企業内外の利潤配分のバランスをとる側面は考えられる。また、この観点では、SDGsの設定も、国際的な投資側の合意事項として、企業への定性的な圧力になるものと考えられる。後者においては、労働価格の規定をし、やりがいを提供しうるJGPの存在が、ブルシットジョブに従事する労働者の逃げ道になるかもしれない。
収穫逓減産業
該当する業界
経済学の入門編で出てくる世界。供給量が上がると、価格が上がるという「右上がりの供給曲線」で表される。その成立ロジックから、社会の供給能力が不足している状態(モノ不足)が前提ではないか?という気がしている。ゆえに、供給能力過多で、デフレになるような今の社会ではあまり成り立たないのかもしれない。
たとえば、農業において、連作すると土地がやせ、収穫量が落ちる、ということはこちらに含まれそう。また、飲食業のように、規模が大きくなるとクオリティが下がってしまうような産業が該当すると考えられる。(同一クオリティを保つためには、価格を上げる必要がある、と言い換えられる。)
なお、ニッチに特化するなど、経営の工夫次第では、それなりの待遇を確保することもできる。(これは一般に、右肩下がりの需要曲線から導かれる結論でもある。)
その特色
このような業界は、経営学で言うところの多数乱戦状態になるため、自由競争の状態になりやすく、経済学的観点から見た問題は発生しにくそう。
課題と対策
B.I.があると起業のハードルが下がり、起業を促進しそう。起業の結果、失業者プールを小さくする効果があるため、間接的に、結果として収穫逓増業界の労働価格を下支えする効果がるかもしれない。
政府(社会セクター)の役割・できること
以上のような二重経済のもと、格差の影響を緩和するため、ボトムラインを定めるのが政府や社会セクターの役割だと考えています。この記事の早期のリリースを優先するため、ここの考察は簡略に済ませています。実行のあり方としては、金ぴか本にあるように、中央で予算を確保(MMT的には、貨幣を発行)し、地方で実情にあわせて執行、という分担が考えられます。
『たとえば』JGPは労働による所得の最低ラインを実質的に定めることとなり、労働者の権利を保護することになります。また、収穫逓増産業において、いわゆるブルシット・ジョブに従事する人たちの逃げ道にもなります。B.I.は起業を促す効果があると考えられ、とくに収穫逓減産業における起業を増やし、当該産業の生産者と消費者双方の満足度を上げる効果があるのではないか、と考えます。生活に必要な低廉なサービスの提供は、JGPやB.I.との組合せにより、生活そのものの最低水準を保証できる可能性があります。
若干の考察
B.I.について
将来モノとサービスが満ち溢れる社会になると、おそらく無償で貨幣が配布される必要ができ、その予行演習となる効果がB.I.にはあると思われます。この考察を進めると、GDPに対して、B.I.で配布される所得がどれくらいを占めるのか?が、一つの経済指標になるような気もしてきました。(ある一定の生活水準を想定して、この比率が高いほど、社会経済に余裕があると考えられる。)
収穫逓増産業について
イノベーションによる創造的破壊が本質的な対処策か。B.I.にはイノベーションを促進する効果があるため、対処策となりうるかもしれない。そういえば、シュンペーターさんの著書(未読)に、「資本主義・社会主義・民主主義」というのがあったな。。
今後の課題
たとえば、今後、公共性が高くかつ効率的な、運輸のブロックチェーンなどの整備が必要になってくるが、このモデルで考えると、どのように進めるのが良いのだろう?という問いがある。まあ、ほっといたら、いいのかもしれないが。。
とは言え
以上の考察は、貨幣経済において、収益を最大化する、という前提を置いたうえでの解釈。そもそも貨幣経済でなくなれば、話は変わってくる。
参考図書
参考となる私のnote記事
団塊Jr。エンジニアを生業としつつ、経済学→経営学→心理学へと関心が移ってきた変な人。ついに退職し、「知識志本主義社会」へ旅立つ。夢(妄想?)は、アダムスミスやドラッガーのように結果として新たな学問領域を打ち立てること。SF:戦略性/学習欲/内省/慎重さ/着想