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カラーとモノクロ 16


「カラーとモノクロ15」で似顔絵描きの話を書きました。今日は別の人の話です。

似顔絵描きの友達は、以前からイベントや注文による似顔絵制作をしていました。
地域の人々から認められ、文化事業などで似顔絵講座を頼まれるようになりました。

似顔絵を仕事として続けるために、インストラクターの資格を取得し、文化教室の講師になりました。第一回目の講座を開く直前に新型コロナの流行が始まり、緊急事態宣言で延期せざるを得なくなりました。当時はなんでも中止や延期の繰り返しでしたね。

せっかく新たな道へ踏み出そうとしたのに、新型コロナは人々から「外に出て行って新しいことを始めよう」という気持ちを奪い去りました。緊急事態宣言が明けたところで、なかなか元には戻りません。

生徒が増えない中で、彼女は頑張り続けました。スクラッチアートをやってみたらどうだろう・・・・・・それも長くは続きません。だってみんなコロナが怖くて外に出たくない。出たいと思っても政府から不要不急の外出は自粛するよう言われていたのです。

彼女にはラインスタンプを作る技がありました。販売もしていたのですが、その後、ラインスタンプを簡単に作れる無料アプリができてしまったようです。しかも、似顔絵も簡単に自分で描ける無料アプリまでも。

イベントがないからイベントで似顔絵を描くこともできず、結婚式が控えられたために、結婚式のウェルカムボードやお祝いなどの仕事もなくなって、厳しい状況になりました。

それでも彼女は負けませんでした。新たにアクリル絵の具を使用したフルイドアートの勉強を始めました。
インストラクターの資格を取得して講師になりました。

同じアートの分野であると言っても、新しいことを始めるにはそれなりの覚悟が必要だったはずです。時間も出費もかかるでしょう。それでも前を向く努力。折れずにしなる柔らかな歩み。素晴らしいと思います。

この間、新型コロナの最初の流行から2年が過ぎ、人々の意識も、政府の対応も変化してきました。少しずつ外に出たい欲求が高まり、新しいことを始めたい人も現れました。

似顔絵を描いていたときの彼女のファンも、講座を開いていたときの生徒さんも、今では彼女のアクリルアートワークショップに夢中です。
私もファンです。彼女から諦めない心を学び、努力する姿勢に感動しました。

フルイドアートは普段から絵を描いていない人にもとても向いています。むしろ絵を描くことは苦手という人に体験して欲しい、自由な絵の具遊びとも言えます。学校で横並びに比べられてしまって、絵を描くことに自信をなくした人にも体験して欲しい。

フルイドアートは「絵を描く」という言葉だけでは言い表せない、自然に絵の具が流れる感覚を楽しみ、自然に絵ができていく様子を受け入れるアート。

生きていると思うようにならないこと、嫌でも受け入れなければならないことがある。どうしても思うとおりにしようと頑張ると、余計にうまくいかない時もある。あるがままに受け入れることは簡単ではないときもある。
フルイドアートを体験している人たちを見ていると、絵の中にも人生と同じように「こうでなければならない」とか「こういう風に作り上げたい」という希望が見える。
それはもちろん、そうなのであるが、いったん身を引いて絵の具の流れに任せるという体験をすることを通じて、あるがままに生きることもそう難しいことではない(悪いことではない)と、私は感じた。
 
小さなお子様には絵の具の色や流れだけで楽しい体験だろう。手の不自由な方や、細かい作業が苦手な高齢者にも、明るいカラーで心浮き立つ面白い体験ができるのではないだろうか。
そういう夢を与えうる道に進もうと決めた彼女に私はエールを送りたい。

これからきっとたくさんの人に喜びを与えてくれるでしょう。みんなが喜んでくれたら嬉しい、と彼女は言っています。アートを通じて互いに喜びを分かち合って、コロナ渦で傷ついた心を癒やし合えるのではないでしょうか。

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