スローエデュケーションは人の可能性を信じる教育
18年間、子どもたちと向き合って私が心の底から理解したこと。
それは、「人間は、誰もが、成長したい気持ちを持っている」ということ。でも、自分の成長という視点が抜け落ちてしまうことがある。言い換えると、試験で良い点を取ることが目的になってしまう。それはなぜだろう。その問いをずっと抱えながら生徒の前に立ち、親御さんと接してきました。
2006年から2024年までの18年間はその答えを探し続けた日々、と言っても大袈裟ではない、と思っています。
出版社で一般書籍編集者としてのキャリアをスタートした私は、教育と深く向き合うことになるとは想像すらしていませんでした。大学時代、「教職を取っておきなさい」と何度も言う母に、「先生になるなんて絶対にあり得ない」と断言していたほど。そのぐらい、私にとって教育は遠い存在でした。今となれば、母の言うとおり、教員免許を取得しておけばよかった、と思うことしばしばですが。
小中高、大学と、学校の勉強にはたいそう不真面目だった私ですが、編集の仕事はものすごく面白くて、徹夜も厭わず仕事にのめり込みます。自分では絶対に形にできないものを、プロの書き手やカメラマン、デザイナー、イラストレーター、印刷所の人たちと作り上げていく喜びは、それまで体験したことのないこと。毎日クタクタでもワクワクした日々。
転機は教育出版社での仕事でした。そこで初めて、教育が身近なものに。その時から、教育で世界をよくするためには何ができるだろう、と考え始めました。たどり着いたのは「スローデュケーション」。人の伸びる力、可能性を信じられるようになる「有機的な教育」です。
今の教育に疑問を持つ方。自分の将来に不安を感じている人。ぼんやりと、このままでいいのだろうか、と思っている人。世界がより良い場所になればいいな、と思っている人。そんな人たちにとって、何かのヒントになれば、という思いを込めて、スローエデュケーションについての文章を綴っていきます。みなさんの心が少しでも明るくなれば、とても嬉しいです。