内発的動機づけ・外発的動機づけ 受験に強いのはどっち?
前回のnoteで「試験は手段?目的?」というタイトルで中高生が学校での定期考査について思っていることについてお伝えしました。
「手段か目的か」は「内発的動機づけ OR 外発的動機づけ」ともつながる部分があるなぁと思っているので綴らせてください。
◉内発的動機(intrinsic motivation)は、すごく簡単に言えば「やっていて楽しいからもっとやろうと思う気持ち」のことです。ここでいう「楽しい」の中身は、「自主性」「有能感」「関係性」の3つ。ごく簡単に説明すると次のようになります。
⭕️自律性(autonomy):自分の意思で決めている、自分で選んでいること。=> 「したいからする」(例:英語を学びたいから学んでいる)
⭕️有能感(competence):自分ならできる、と思ってチャレンジしたことができるようになること(例:英語のスピーチを覚えて発表できた)
⭕️関係性(relatedness):信頼できるサポーターがいること(例:あたたかく見守って、応援してくれる家族や先生、友達がいる)
◉外発的動機(extrinsic motivation)をわかりやすく言うと、「ご褒美があるからやろうと思う気持ち」というところでしょうか。次の4つから成るといわれています。
⭕️報酬(rewards): お金や成績などのこと
⭕️評価や承認(recognition and approval): 人からの評価、社会的に認められること
⭕️罰や回避(punishment and avoidance): 決まっていることだから、やらないと悪いことが起こるからやること(締め切りを守らないと怒られるなど)
⭕️義務感や期待(obligations and expectations): 周りの期待に応えようとすること
私は小中高生に英語を教えているのですが、生徒の発言を聞いてハッとさせられることが、ものすごくよくあります。(毎日毎日刺激的です。本当に)
「どんなに将来役に立つからと言われても、楽しくなかったらやりたくない。」これはある中学生の発言。以前、この発言を生徒から聞いたとき、「あー、そうかー。」と。こんなこと言えるなんてすごいな、と思ったのです。
私自身は、仕事でのキャリアをスタートさせるまで、全く自分に自信もなく、外発的動機の罰や回避、報酬(テストの点数)目当てで勉強していました。この生徒の発言は、私の運営するスクールでの英語のレッスンでのことで、心底驚いたし感動したのです。学校や塾での勉強に対して「楽しくなかったらやりたくない」という発想があることに。
私が子どもの頃、楽しくて時間も忘れてやっていたことは読書。そして図鑑や百科事典を調べまくること、人や周りを観察して考えること、というおよそ学校の勉強とは関係ないことばかり。誰からも評価されませんでしたし、評価を期待する発想もありませんでした。ただ好きだからやっていたのです。でも、仕事をするようになって、この好きだからやっていたことが私の軸になっています。
今の子どもたちは、内発的動機を高めましょう!の掛け声のもとに、もっともらしい「好きなこと、やりたいこと探し」に駆り立てられているように思えることもしばしばです。それって結局のところ、外発的動機づけになるのでは?と考えこんでしまいます。
人との約束を守る、報酬を得られるから努力する。そうした部分も成長していく上ではとても大切な要素だと思います。大事なのは、子どもの成長に合わせて、バランスをとっていくことなのではないでしょうか。
バランス。これがまあ、すごく難しいのですが。。。
今回のタイトル「内発的動機づけ・外発的動機づけ 受験に強いのはどっち?」の私の今のところの答えとしては、外発的動機づけに拠らない(内発的動機がはっきりわからない場合は)目標設定(楽しそう、興味あるなど)をした上で、外発的動機づけをうまく利用していくこと、かなと思っています。そして、本当にやりたくないことは止める。これが大事ではないでしょうか。受験は目的ではないのですから。
<補足>
内発的動機と外発的動機はいずれも心理学の用語で、心理学者のエドワード・L・デシ(Edward L. Deci)とリチャード・M・ライアン(Richard M. Ryan)の「自己決定理論(Self-Determination Theory, SDT)」が元となっています。