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『ドライブ・マイ・カー』(日本/2021)

ハルキが苦手で観るの先延ばしにしてたけど、さすがにもう観た方が良い気がして先週末に映画館へ。ひとことで言えば、本当に素晴らしかった。濱口作品の「ハッピー・アワー」と似た感動を覚えて、観終えて一週間たつ今も心はブルブルブル震えている。

前半はハルキ味が強くて、正直ついていけるか心配だったんだけど杞憂だった。タイトルバックの後、2年後に世界が移動してからはのめり込むように見入ってしまった。

チェーホフの言葉がズバズバとシーンにハマっていく展開はさすが。最後のソーニャの手話は圧巻で言葉もない。発話よりも胸に迫ってくるのは一体なぜなのか。

この物語は癒しとは違う、別軸の物語だと思った。
生きることは苦しい。でも生きていくしかないね。誰かの痕跡をたくさん自分の中に刻み付けながら。
そんな話なのだと自分は思った。実際、ワーニャを演じる家福は舞台袖で苦しんでいる。

家福からにじみ出るマチズモに蹴りを入れたくなる瞬間もあったし、「結局女に救われるのか」というレビューも読んだけど、そういう観点は必要で批評されるべきだと思うけど、個人的にはコン・ユンスや高槻の存在、そしてチェーホフの戯曲も彼に影響を与えたと思う。
わかりやすい救いなんてない。私は神を持たないから、この世で得た苦しみや悲しみを死後に慈しんでくれる誰かはいないけど、死んだ後の世界を想像するのは悪くない気がしている。


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