あの子

あの子は、なんと不器用な生き様か。

とても優しく美しい心を持ちながら
ものすごく冷たく無関心なものを持ち合わせ
その間はスコンと抜け落ちている。

あまりにも憎しみすぎてその憎しみが自分を殺しにかかる。
だから、それをどうにか食い止め生命活動を継続できるように
その憎しみの部分をスコンと消し去ったような。

でも、憎しみを消し去ったら
愛情、優しさ、思いやりまで抜けてしまうことは。
そんなことを考えられるような余裕に生きていなかったのだろう。

愛情でそこをなおすことを
えらばなかった。

こわかった。

今回は、そういう生命なんだね。

それはものすごく難解で、残酷で、
でも人に好かれない生き方にどうしてもなってしまう運命を背負いながら

それでも生きている。

当人の意識下ではないが、人に好かれなくとも貫き通す己というものを見た。

その頑なさは、人間としての違和感があった。

その違和感は周囲を遠ざけた。

あの子の流す涙は、
それらの不協和音の潤滑剤にはなりきれなかった。

身を持って、体現してくださっている
ヘビの神様のような人間なのだ。

それは忌み嫌われる姿をしながら
私たちに教訓という名の恵みを与えてくださる存在なのだ。

えらい人を、えらいからといって敬うまい。
えらくもない人を、えらくないからといって蔑むまい。

人間。されど、人間。
大きな枠で見たら、そんなに変りゃしない。

判断なんて、その時その時代の人間が後から作った価値基準に過ぎない。

あの子を、敬いも蔑みもしない。
敬うし、蔑みもする。

それは、他の人へも同じことだ。

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