第5回 パワハラのグレーゾーンと予防対策
パワハラに当たるかどうかの判断は、図1のように白黒はっきり分かれているものではなく、図2のようにグラデーションになっていて、パワハラに当たるかどうかの「可能性」が、「言動の程度・頻度」や「人間関係の良好さ」によって変化するものと考えられます。
「人間関係の良好さ」は、特に、パワハラの「グレーゾーン」と呼ばれるケースでは、とても重要になります。
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『飲み会に誘ったら「パワハラ」』、『遅刻を厳しく注意したら「パワハラ」』などと言われて困ってしまった、というような話もよく聴きます。
前回のコラムでは、
・業務上に必要かどうか
・相手を貶めたり傷つけたりする意図をもっていないか
という点に注目することをお話ししました。
飲み会などは、業務に関係ないように見えます。
しかし、単に「誘った」というだけで、「就業環境を害する」と判断される程度の状況になることは、考えにくいでしょう。(ただ、あまりにもしつこく誘ったり、「来ないとクビだ!」なんて発言があればパワハラに当たると思われます。)
遅刻を注意することは、上司や先輩の仕事上の役目でもあります。
会社(上司)には指揮命令権があり、社員は労働契約に基づき、その命令に従う義務があります。
(これも程度の問題で、指導するときに物を投げたり、著しい暴言を吐くなどすれば、パワハラとなると思われます)
このように、常識的に考えればパワハラだとは考えられない状況であっても、誤解や行き違いで「パワハラ」として取り上げられ、大きな問題に発展してしまうことがないとは言えません。
こういった、パワハラの要件を満たしているとは考えにくいものの、一方からパワハラだと主張されたり、明確に否定できないような状況を、パワハラの「グレーゾーン」とます。
このパワハラの「グレーゾーン」の影響で、
・管理者が指導しづらくなる
・一部の社員が優遇されることで他の社員が不満を抱きやすくなる
など、職場での組織として動きが取りづらくなるおそれが出てきます。
本来であれば、就業規則に則って是々非々で対応したいところですが、人間は感情の生き物です。感情が絡むと事態が急に複雑化してしまう、ということをご経験された方も多いのではないでしょうか。
パワハラになる・ならないの線引きは、個々別々、ケースバイケースで事案ごとに判断され、残念ながら、それ故に特効薬もなかなか見つからないのが現状です。
以上のように、特に「グレーゾーン」のパワハラへの対応が非常に重要と考えられます。
それでは、「特効薬」とはいかないまでも、この「グレーゾーン」を減らすため、有効な手段を考えていきましょう。
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図2では、人間関係が良好な場合にはパワハラの可能性が少なくなることを表現しています。
実際、厚生労働省HPに掲載されているデータでは、パワハラの相談があった職場の特徴として「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」が45.8%ともっとも多くなっています。
このことから、コミュニケーションを促進し、人間関係を良好に保つことも、パワハラの防止に有効だと考えられます。
こういった、コミュニケーションの問題は、当事者同士の人間関係だけでなく、職場全体の人間関係にも言えることです。
パワハラ相談などで、話を聴いていくと、元々当事者同士の仲が悪かったということは、往々にしてあると思われます。
そういった場合でも、他の社員がフォローしたり間を取り持つことで、お互いの誤解を解いたり、孤立することを防いだりすることも可能なのではないでしょうか。
以上のことから、「パワハラ」根絶の特効薬、とまでは行かないかもしれませんが、特にパワハラのグレーゾーンを無くしていくためには、コミュニケーションの促進が有効と考えられます。
次回は、パワハラを減らすための、コミュニケーションの「技術」についてお話していきたいと思います。
<参考>
(厚生労働省HPより)
あかるい職場応援団 https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/
平成30年3月「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」
平成24年1月「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」
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