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第4回 「パワハラ」の定義

 仕事などで人と話していて「パワハラ」という単語が、本来の定義よりも広い意味で(パワハラに当たらないものまで)使われていると感じることがあります 。

 上司に厳しく注意を受けたり、やりたくない仕事を押しつけられたりしたときに、とりあえず「パワハラ」という単語を使ってしまう、なんてこともあるのではないでしょうか。

 そんなこともあってか、

「パワハラって、わかりにくい」

「パワハラと言われるかもしれないから、指導するのが怖い」

 という話もよく聴かれます。

 今回のコラムでは、パワハラとはどういう状態を指すのか(パワハラの定義)、パワハラになる・ならないの境界線はあるのか、パワハラと言われない(言われにくい)コミュニケーションの技術などについて、3回に分けてお話ししていきたいと思います。

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 令和元年5月29日、改正労働施策総合推進法が参議院本会議で可決され、来年(令和2年)6月にもパワーハラスメント防止対策が企業に義務づけられる運びとなりました(中小企業は当面努力義務とし、施行後2年以内を目途に義務化されます)。

 今回の改正では、「パワーハラスメント」という行為自体を禁止するものではなく、その「防止対策」を企業が実施するという予防対策に重きが置かれています。

 具体的な内容については今後の指針の発表を待つ形となりますが、今回の改正で、初めて、法律に「パワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)」の定義が明記されたことは大きな前進とも言えます。

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 パワハラの防止対策に関する条文は、次のとおりとなっています。

<労働施策総合推進法 第30条の2>

 「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用上必要な措置を講じなければならない。」

 つまり、

①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

③雇用する労働者の就業環境が害されること

という3点を満たした行為が、法律において定義される「パワハラ」ということになります。

(具体的な事例等については、今後指針で示すとされています)

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 余談ですが、「パワーハラスメント」という言葉は造語で、2003年頃に民間のコンサルティング会社、株式会社クオレ・シー・キューブで生み出されたものです。

 法律の条文も、これをベースにして、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」などを経て、整理されていったものと思われます。

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 それでは、定義について、少し詳しく見ていきたいと思います。

①「優越的な関係」について

 「上司と部下」のような職制上の上下関係だけでなく、非正規社員が関係する場合、「同僚同士」、「部下から上司」など、職場での立場が同じ者同士や、職制上の上下関係とは逆のパターンもあるとされています。

②「業務上必要かつ相当な範囲」について

 「個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当たらない」とされています。

(厚生労働省・平成30年3月「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」より)

③「就業環境を害されること」について

 受けた側が「嫌な気分になった」「精神的に傷ついた」ということのみをもって、パワハラと認定されることはありません。厚生労働省の報告書では「平均的な労働者の感じ方」を基準とすることが記載されています。これについては、業種・業態等によって異なることが考えられるため、指針等により、今後整理されることが期待されます。

 つまり、受け取る側が「働きにくくなった(就業環境が害された)」と感じたと主張しても、「業務上必要かつ相当」な指導であれば、パワハラには当たらない、ということなのです

(業種・業態や個別の事情によって、同じような状況でも、判断が変わってくる場合があります。)。

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 なお、厚生労働省の報告書では、「平均的な労働者の感じ方」を基準とした場合の「身体的若しくは精神的苦痛をあたえることまたは就業環境を害すること(パワハラに当たると考えられる行為)」として、次の例を挙げています。

・暴力により傷害を負わせる行為

・著しい暴言を吐く等により、人格を否定する行為

・何度も大声で怒鳴る、厳しい叱責を執拗に繰り返す等により、恐怖を感じさせる行為

・長期にわたる無視や能力に見合わない仕事の付与等により、就業意欲を低下させる行為

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 以上のことを踏まえると、「パワハラ」という言葉に惑わされず、

・業務上に必要かどうか、

・相手を貶めたり傷つけたりする意図をもっていないか、

というところに注目すると、わかりやすくなるのと思います。

 といっても、職場では、「パワハラ」という言葉がひとり歩きして、そういうつもりがなくても「パワハラ」と言われてしまう、なんてこともあります。

 こういった、パワハラかどうかの線引きが難しいケースのことをパワハラの「グレーゾーン」と言います。

 次回は、そういったパワハラのグレーゾーンとその予防策についてお話していきます。

<参考>

(厚生労働省HPより)

あかるい職場応援団 https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/

平成30年3月「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」

平成24年1月「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」

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