『マッチ売りの少女』座談会(6)–まとめ–
1月に『マッチ売りの少女』を上演しようということで動いてきた本プロジェクトですが、covid-19の感染拡大に伴い上演を中止せざるを得なくなりました。しかし、そのような状況の中で11月22日まで「稽古」を続けました。これはその記録の総括の座談会です。稽古を通して、いまの状況のこと、戯曲のこと、役のことなど多岐に渡って思考/試行してきたことを参加者に語ってもらいました。最終回は、このプロジェクト全体を通して、まとめとして自由に話し合いました。いろいろな話題が飛び交っています。
田村 最後に、このプロジェクト全体についてのまとめを話してもらいたいですね。
森田 これは私自身の問題なんですけど、演劇を好きってちゃんと言える証拠を集めないといけないなって思いました。
田村 と言うと?
森田 私の「演劇好き」はふわっとしていて、裏づけがないんですよ。今まで私の演劇についての悩みって、「自分は演技が下手くそだな」だけだったんですよ。でも、みなさん、私以上に長い時間演劇に接しているからそれ以上の悩みがある。それが私にはない。それを生み出すだけの演劇経験がない。もっと自分自ら動いて、演劇の経験を積み重ねないと、何だろ、ただのお遊戯会の延長になりそうな予感がしてます。それが稽古をやってて感じた危機感です。それと同時に、果たして私は演劇に対してそれほど熱意があるのだろうかというコロナになって向き合わされた悩みもある。それに気づかせてくれてありがとうって気持ちと、消化していかなきゃいけないなっていう気持ちがあります。あ、マイナス方向のことばっかり言っちゃってますけど、全然楽しかったですよ。でも、色々問い直されちゃって、うわああってなってるところです。
田村 「問い直されてうわああ」って感覚的にすごくわかりやすい。お芝居を生業にしている人は違うかもしれないけど、お芝居を生業にしてない、趣味でやってる僕たちみたいな人って、多かれ少なかれそういう感覚に陥ってるんじゃないかなと思うんですよね。僕もそうだしね…。
しば 私は、こういうことはまたやりたいかなとは思いますね。気楽でいいというか、でも、演劇について見つめなおせる。ノルマを払ったりととかしてる関係でもないし。
田村 くるめるシアター(田村、しばいぬこ、石田、森田、U-5の所属演劇サークル)では一応「めくる会」っていう名前の月一wsをやってるんだけど、それの拡張版みたいな感じだよね。
片山 上演しなくても稽古だけでも楽しいだろうっていう構想はあったんですけど、実際やってみて楽しいってことがわかったのが良かったかな。よく、早稲田小劇場どらま館でwsとかあるじゃないですか。でもそれの参加者って結構少ないんですよね。
田村 早稲田の演劇サークルの人はほとんどいませんよね。
片山 てことは、演劇への興味が…みたいな問題があるんでしょうね。この問題って根深いなあって思ってて。こういうのが実際楽しかったし、もっとあってもいいなと思ったけど、なかなか興味を引き出すのが難しいなあって思いますね〜。先に繋がったらいいな(希望)みたいな。
田村 また、戯曲変えてやるとかでもいいかもなあ。
増田 学生演劇って脚本の人が、基本的主宰と演出を兼ねてて、その人が基本的にお金も多く出すんですよね。そうなると時間も金も、私以上に引き受けている人間が一人いるわけですよ、それにきっと思い入れも。そうなるとその人がやりたいことをみんなで作って行こうねっていうマインドになりやすいんです。今回それがふんわりしていて、この人のためにみたいなのがなかったから、私はもっと自分本位にするべきだったかなって思いますね。もっといろんなことを試していけたなあっていう思いはありますね。
片山 お金が絡むとめんどくさいですよね。上演が絡むと、「主宰のために」って感じになりやすい。それに、「主宰のため」っていうのを言い訳にして責任を負わないような役者とかいて、それってよくないなと思うんですよ。今回はそういう「〜のため」っていうのがなかったから、その分自由にできて良かった。
田村 コロスを入れた形に、台本を書き換えたのは今回のプロジェクトに対してはちょっと良くなかったかなとも思うんですよね。戯曲の前にフラットな関係を築くっていうことを、阻害していたかもしれない。それに、元々上演をしようってことで始めたことではあるから、この戯曲の選定であっていたかもわからないよね。
片山 途中から上演が無しになって、さらに上演を目標にしない稽古にしましょうってなってたよね。
田村 そうそう、ちょっと方向転換しすぎたかなあと…。
石田 僕は、そういう方向転換の連続もそれはそれでいいのかなとは思うんですけどね。一個だけ悔やまれるのが、一回も最初から最後まで全員で通せてないんですよね。
田村 そうね、それがすごく心残りだね。
U-5 演出部としての感想なんですけど、私はお話を読んで考えることがしたいって意味では、やっぱり役者をやりたくて演劇始めたんだなって思った。稽古を見守るのって辛かった。台本読みて〜ってなる。
しば わかる〜〜。
森田 うん、台本は読みたい。
U-5 でも、観客ほど遠くないけど、役者ほど近くない距離で劇を見ることができるっていうのは演出部の特権かなって。あと役職がはっきりしていたので、安心感もありましたね。まあ、やってよかったなとは思いますね。そういうところに着地はしたかな。
田村 今回は、全部がお試しみたいで、本当にずっと暗中模索してとりあえず11月までやってみようって感じでやったから、まだ道半ばみたいなところもある。でも、今回色々やってみて掴めてきたことも多いなあと思ってます。そいう意味で、最初の模索に付き合ってくれてありがとうっ感じですね。今後、またこういうことをやるかどうか確約はないけど、またやってみたいなという気持ちにはなりましたね。なんか、現場と現場の間の、研鑽とリハビリの場みたいな感じで。まあ、すっごく地味で注目されないってのはちょいと寂しいですけど(笑)今日はみんな、長い時間ありがとうございました。