裁定取引の買い残や売り残が指標になる仕組み
「あくまで参考まで」とかの前置きがありつつ、「裁定取引の買い残が溜まってきたから日経平均は下がりそう」とか「売り残が溜まってきたから上がりそう」という解説がされる「裁定取引」のポジション。
どうもいつも腹落ちしなかったので、腹落ちするまで調べてみる。
前の「日経平均先物」の記事で触れた通り、日経平均の先物(以下、先物)と、実際の日経平均株価(以下、現物)は、
3ヶ月ごとに一度、メジャーSQ値で一致する。
3ヶ月に一度一致するのだから、あと3ヶ月MSQまで期間があるなら、3ヶ月後の先物の価格と、今の現物の価格が、一致しなくてもおかしくない。
さらに、先物はそもそも動きが速いし、夜間も開いているので、現物よりも先物の方が動く。
そうすると、先物と現物の価格が一致しないケース(つまり、先物の価格に現物の価格が追いつかないケース)が出てくる。
※ そもそも夜間は現物市場が開いていないのだから、常に両者の価格は離れているわけだ。
その時に、大手証券会社は、裁定取引を行う。
つまり、
先物の価格が上がり、現物の価格がそれに追いついていない場合(先物の方が高い場合)
先物を売って、
現物を買う。
先物の価格が下がり、現物がそれに追いついていない場合(先物の方が低い場合)
先物を買って
現物を売る
どうせ3ヶ月に一度、両者の価格は一致するのだから、ずっとこの取引(つまり、両者の価格を一致させるような取引)をやっていれば、リスクが少なく、儲けることができる。
というわけ。
この「裁定取引のポジションが膨れ上がる」という場合は、
買い残が膨らむケース
先物を買う人達(短期勢)が相場に強気で先物を買いまくっていた。
けれど、現物を買っている人たちはそうでもなかった。=現物価格は上がらない。
そこで、両者の価格を近づけるような裁定取引を行う。=先物を売り、現物を買う
この現物の買いの残高が膨らんでいく。
残高が膨らんでいるということは、つまり、大きく、先物と現物の価格差が開いたということ
しばらくして、短期勢が「ダメかも」と思うと、
短期勢があきらめて先物を売って手仕舞い。
裁定取引も決済して終了。
売り残が膨らむケース
短期勢が相場に弱気で、先物を売りまくる。
けれど、現物を持っている人はさほどに売らなかった。=現物の価格はさほど下がらなかった。
そこで裁定取引を行う=先物を買い、現物を売る。
この現物の売りの残高が膨らんでいく。
短期勢があきらめる
先物を買って、決済。
裁定取引も決済して、終了。
となる。
僕が相場を見るようになった頃はもうすでに、「先物と現物が離れる」ということがなく、常に近かったので、そういうものだと思っていた。
けれど、実際はずっと自動で一瞬で、この裁定取引が行われているので、そうなっているだけで、その先物と現物の乖離は、
「残りポジションの大きさ」
で判断するのだと分かった。
ここが僕がいまいち分かっていないところだった。
同じ原因で、「一瞬で」と説明にあるので、「その日のうち、もしくは、一瞬でも価格差が縮まれば反対売買を行う」と思っていて、「それなら、買い残も売り残も残らないんじゃないの?」と思っていたところもこんがらがっていたけど、実際はポジションを持ち越すことがあって、こうなっているということが分かった。
だから、
裁定買い残や売り残が残っているということは、「まだ、ポジションを解消すべきタイミングではない」と裁定取引をする人々が考えていることを示している。
つまり、価格差が「まだまだ収束していないな」と考えている。
だから、買い残を解消していない場合は「先物が高過ぎ、現物が低すぎる」状態が続いている。売り残の場合は「先物が低すぎ、現物が高すぎる」状態が続いていると判断していると思われる。
どうせSQで一致するのだから、SQ寸前までポジションを持っていてもいい
裁定取引のポジションは因果関係ではなく、相関関係や状況の解釈に過ぎないことが多い。
らしい。