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ディープシーク・ショックで今の段階で分かっていることと、行った対応

今週のディープシーク・ショックの今の段階で分かっていることのまとめと、自分が行った対応。


ディープシーク・ショックの概要

1月20日にディープシークから新しいモデルが発表された。
トランプ就任に合わせるなど、政治的な思惑も噂されるけど、実際、ショックが株式相場に来たのは、1月27日だった。

「アップルのAppstoreでディープシークが一位に」という記事が出た

ディープシークという中国の新興企業が発表した新モデルが、

  • Appstoreで1位になっている

    • しかもアメリカで(中国でではなく)

  • ChatGPTよりも性能がいいらしい

    • 様々なテストで上回っている

  • ChatGPTよりオープンソースで透明性もあるらしい。

    • オープンソースらしい

    • なぜ、その結論が出たか?の回答へのバックグラウンドも追えるなど、結論への透明性も高いらしい

  • かなり安価で開発されたらしい

    • 8億円〜10億円くらいで作ったらしい

    • 対するビッグテック(GAFAとか)は1兆円を超えているらしい

  • 学習よりも推論で学んでいくらしい

    • 論文なども出ていて、どうも全否定は難しそうだぞ。

と、当初は上のような内容が言われていた。

真偽は定かではないが、上記のようなことが言われ、僕も色々試してみたいと、自分のIphoneを見てみたが、全然出てこない。
この時点では、もう中国の電話番号がないとダメになっていた。

ショック直前の株式市場の状況:「生成AI相場」

今の世界の、というか、アメリカと日本の株式相場はほぼ「生成AI相場」と言ってもいい状況。

アメリカのFRBが金利をあれだけ上げても、さほど株式市場が崩れなかったのは、そこに生成AI相場が重なったから。
これがなければ、様々な不穏なサイン(逆イールド、雇用関係、銀行の倒産など)があっただけにどうなっていたか分からない。

その生成AI相場を引っ張る旗振り役が「エヌビディア」。
何しろ、この生成AIを開発するのに、高性能なGPUが必要になるのだけど、それを独占しているのが、このエヌビディアなのだから、

ゴールドラッシュ時のつるはしを売っている会社

ということで、生成AIのつるはしを独占して売る、エヌビディアの株にみんなが殺到した。

そして、エヌビディアも、何しろ、高額のGPUが言い値で売れるだけでなく、競争するためにはどうしてもそのGPUが必要なのだから、各IT大手は、そのGPUの争奪戦を行っているような状態。

だから、もう信じられないくらいの利益を叩き出し、しかも、その成長が今後も続くだろうということで、株価がつけられてきた。

日本の日経平均株価も「半導体指数」と言われるくらい、半導体企業の割合(寄与度)が高い。
だから、円安も伴い、一緒になって上がってきた。

最近ではエヌビディアの株価が上がりすぎたこともあり、エヌビディアではなく、「生成AIの開発にはデータセンターが必要だ!」ということから、

  • 電線・光ファイバー、銅線など

  • 電力会社

などが急騰していた。

そして、スターゲート計画が発表された。
ソフトバンクなどがAIに巨額の投資を行うことを、トランプ大統領と共に発表した。

この発表を受けて、半導体企業の株価は一気に上がり、1月24日の金曜日の時点では、日経平均株価もいよいよ4万円定着か!というところだった。

ディープシーク・ショック当日

そして、月曜日。
寄り後、4万円を大きく突破しようかというあたりでいきなり落とされる。

この時点では何が起きたかはまったく分からなかった。
でも、大きく下げ始めたので、なにかあったのかもと思い、ショートに入った。ロングはつかまったまま。

後場も一旦戻しかけるが、そのまま急落。
何が起きたのか?探し続けるも、「ナスダックの先物が急落している」ということだけしか分からなかった。

日経新聞から「ソニーの社長が変わった」というような速報は飛んできたが、この件については何も飛んでこない(その後もこの件については音沙汰がなかった)。
何が起きたのかはブルームバーグの記事で知ったけど、「これ?」という感じだった。
だんだん記事が更新されていき、内容を見ると、「これ、やばいかも」となった。

記事自体は午前中に出ていたし、前場の下げで終わりかなと思ったら、後場も同じように下げた。
みな、ダメージの具合を測りかねていたのだと思う。

その日の五分足
日足:一番右端の大陰線2本

その日のNY相場

その日の夜、NY市場が開くまで、様々な記事や解説、憶測が流れた。

焦点は、

  • そんなわけないじゃん。絶対、半導体規制前に買ったかなんかして、最先端の半導体を使っているに決まっている。

  • そもそも中国企業の発表だよ?いかさまなんじゃない?

というようなところだった。

決算シーズンということもあり、決算を迎えるIT企業の声明や、エヌビディアからの声明なども期待された。

エヌビディア
「半導体規制はちゃんと守っているよ。最新のものは売っていないよ。でも、それで開発したなんて、すごいね」
というような声明が出た。
もちろん、「隠れて売っていました」なんて言えないから、それは想定内な受け止めがされた。

さらに「ジェボンズのパラドックス」を引用し、「ある資源の利用効率が向上すると、その使用コストが下がるため、「需要は減少するのではなく、むしろ、増加する」ということから、「ディープシークが出てきて、AI開発のコストが下がっても、むしろ、エヌビディアの半導体は売れる数が増えるんだ」なんてコメントもあった。

けれど、それは逆を返せば、ディープシークが本物っぽいということでもあり、さらに「今まで飛ぶように売れていた、エヌビディアの高価格帯は売れなくなるかも」という心配を払拭するものではなかった。

また、マイクロソフトなどからは、「なかなかやるね」というような感じ。
トランプ大統領からも「もっとアメリカ企業もがんばれ」というような声明が出た。

このあたりで、「どうやら、本物っぽいぞ」となった。
疑う声もあるにはあるが、本物だったときのために、対応だけはしておかないとまずい、という空気感。

そして、NY市場がオープン。
エヌビディアは、プレでも12%の下げだったけれど、実際は17%くらい下げてしまい、1日に失った時価総額の記録を作ってしまった。

AIに多額の投資を行ったGoogleやマイクロソフトは株価を下げ、遅れていたアップルは株価を上げた。
もう何が幸いするか分からない。

エヌビディア

次の日

次の日は、以下のようなニュースが出た。

  • 「どうもディープシークは不正にOpenAIからデータを持ち出した可能性がある」

    • これが「蒸留(OpenAIを学習に利用すること)」を指すのかどうかは分からない。

    • 記事によっては、「不正に従業員が持ち出した」というように書いているところもあったので、情報は錯綜。

そして、投資家の意見も以下のように変わっていった。

  • どっちにしろ、エヌビディアの半導体は必要じゃん。

    • でも、安いものでOKなんだよ?利益率かなり下がっちゃうじゃん?という反論も。

  • エヌビディアは知らないけど、他のAIを開発している企業には朗報だよ

    • だって、開発コストが安くなるんだよ?

  • 開発コストが安くなるのであれば、ビックテックだけじゃなく、いろいろな会社が自社のAIを開発できるようになるじゃん。なら、朗報だよね?

日本市場は、前日のエヌビディアが大きく下げたことで、また大陰線をつけてしまった。

だけど、アメリカ市場はナスダックが反発した。
エヌビディアも弱々しくもあったが、反発。

そして、あくる日本市場も持ち直し、今に至る。
以上が、株式市場の流れだった。

ただ、これはあくまで「初動」であり、これは長期的な影響をもつ可能性が示唆されている。
もしかしたら、ITバブル崩壊の時と同じように、生成AI相場バブルの崩壊の入口に立っているかもしれない。
もちろん、単なる「押し目」である可能性もある。

ということで、今の段階で分かっているディープシークの影響を以下にまとめておきたい。

ディープシークが与えるだろう影響のまとめ

ここでは現時点で想定される、ディープシークが与えるだろう影響をまとめておく。

ディープシーク・ショックの2つの視点

ディープシーク・ショックのときに、主に2つの視点があった。

  1. ディープシーク、それ自体の影響

  2. AIの開発に与える影響


1,ディープシーク自体の影響:「ディープシークを使うか使わないか」

これはつまり「ディープシークを使うか使わないか?」という視点。

この視点しか持たない人は、以下の観点から、早めに楽観視をしていた。

  1. 中国製なんて怖くて使えないよ

    1. どうもサーバーは中国に置かれるらしい

    2. 天安門事件とかはやっぱり答えてくれないらしい。

    3. 個人はともかく政府関連や企業は使えないよね。

  2. アメリカが中国製AIに規制をかけるはず。

    1. ティックトックのように何らかのアクションを起こすだろう。

    2. だけど、オープンソースにして、この点は逃れているような気もするね。

異論はあるものの、みな、この点に関しては、「ディープシークは使わない」「覇権はとらない」というように一致していそうだ。

2,今後のAI開発に与える影響

こちらの視点を持っている人は、「これはやばいぞ。影響が大きいぞ」というようになった。

一言でいえば、「こんなに安く開発できるんだ!」ということに尽きる。
ならば、

  • エヌビディアから高い半導体を買わなくてもいいじゃん

    • → エヌビディアの業績への疑念

  • 巨額投資をしているビックテックじゃなくても、中小企業でも開発できるんじゃない?

    • 投資されている側(データセンター建設、銅線、電力など)には、もうお金は入らないよね?

    • 投資している側(ビックテック各社)の圧倒的優位性は崩れるよね?

  • 今後も安価で高性能なものが続々と出てくる可能性がある

    • OpenAIはシステム利用料が収入源だけど、それが安いものに取って代わられる可能性がある。

    • つまり、生成AIそれ自体がコモディティ化する可能性が出てきた。

  • ならば、生成AIを開発する側じゃなく、利用する側が有利になる

    • ユーザに近い方の企業が有利になる。

ということになる。

この点から考えると、

  1. 大前提として、今の株価は以下の点が前提にしてつけられている

    1. AIが未来=AIの開発競争に勝ったところが未来の勝者

    2. そのAIの開発には、巨額の資金が必要

      1. その資金を出せるのは、ビックテックしかいない。

      2. その開発に必要な部品は、エヌビディアしか作れない

  2. ディープシークが出てきたことで、

    1. ビックテック以外でも開発ができるかも

      1. ビックテックの優位性が崩れる可能性がある

      2. 勝者になることに賭けて、株を買っているのに・・・。

      3. しかも、安価なモデルが出てくれば、OpenAI(ChatGPTなど)の使用料も減るかもしれない。

      4. このダブルパンチで、株価は下がる。

      5. でも、ディープシークのやり方を取り入れれば、今までの投資も活きるのでは?という希望もある。

    2. エヌビディアの最先端のものでなくても作れるかも?

      1. エヌビディアの半導体は必要だけど、やすいものしか売れなくなるのでは?

      2. 「みんながAIを作るようになれば、半導体だって、今よりも売れるんだよ」という意見(希望)もある。

      3. けど、単価は低くなるし、独占力も弱くなるんじゃ?

というところになる。

生成AI相場が崩れるなら、何が原因とそれまで考えられてきたか?

今まで「生成AI相場はバブルである」というのは、何度も言われていた。

だから、みんな「どこかでバブル崩壊が来るかも?」と常に身構えていたところがある。

この場合、バブル崩壊の懸念点は、

本当にAIを開発して、儲かるの?

という点だった。

巨額の投資をしても、ユーザからお金を取れない・・・なんてことになれば、巨額の投資が無駄になってしまう。

本当にAIは儲かるのだろうか?というところがみんなの懸念だった。

しかし、今回のディープシーク・ショックは、「そっちから来たか!」というようなもので、

「AIの開発に巨額投資が必要だ」

ということについては、誰も懸念していなかったのだった。

エヌビディアの牙城を揺るがすと考えられてきたこと

同じように「エヌビディアの高すぎる株価」への懸念については、誰もが持っていた。

だから、「いつエヌビディアの優位性が崩れるか?」について、みんな色々、考えていた。

それらは、

  1. 他社が追いついてくるのではないか?(利益率の維持とアップ)

    1. 他の半導体企業がエヌビディアの商品に匹敵する商品を出してくるかも?(利益率の維持)

      1. あんなにエヌビディアが儲けているなら、誰もがそこに参入して、牙城を崩してやろうと企むのが、資本主義のダイナミズム。

      2. 果たして、エヌビディアがいつまで独占的地位を守れるか?

    2. 新しい、さらに上を行くチップを作り続けられるか?(利益率のアップ)

      1. 価格をさらに上げるためには、さらに高機能や高付加価値の商品を開発していくことが求められる。

      2. それがエヌビディアにどこまで続けられるか?

  2. いつまでビックテックが投資を続けるか?(販売数量の増加)

    1. この開発競争がいつまで続くのか?

      1. 勝者が絞られ、参加者が脱落していけば、半導体への需要の総量はやや減ることになる。

の2点くらいだった。

そのいずれもが、「しばらくは大丈夫だろう」ということで、株価は上値は重いものの、上がっていた。

自分が行った対応

エヌビディアは今までの独占状態+入れ食い状態が続くと考えられて、この株価だった。

僕もエヌビディアの株を持っていて、プレの段階で12%ぐらいの下落だったので、静観を決めた。
蓋を開けてみれば、17%くらいの下落。それでもまだ利益のままだった。

上のような影響を考えた結果、

  1. エヌビディアは、今のままの成長は難しいと判断

    1. 最悪の場合、ITバブルのシスコのようになりかねない。

    2. もし、今が押し目で回復する可能性もあるけど、リスクの方が高いと判断。

  2. 一旦は自律反発すると考え、次の日に指値で売却。→ 微益

  3. 今後、「AIを利用する側」は強くなると考える。

    1. ビックテックの巨額の投資は無駄にはならず、有利になるとは思う。

    2. けど、足元で、小さいなAIが続々と開発されれば、それは脅威となる。

    3. だが、テック全体は、むしろ、より盛り上がるだろう。

    4. だから、個別企業よりも全体を買おう

  4. ということで、QQQを購入

ということをした。

これについては、今後も書き足していく。

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