その③海外富裕層の調査レポートから学ぶ「お金のリテラシー」
アジアの富裕層やファミリーオフィス※にサービスを提供するロンバー・オディエ社の調査レポート、の解説の第三弾です。
"The long game: Understanding APAC HNWI's real goals"
訳:「長期ゲーム:アジアの超富裕層の真のゴールを理解する」
第一弾はこちら。第二弾はこちら。今回も読者にとって有益な情報と思えるものを、紹介していきます。460名の日本を含む、アジアの富裕層へのアンケートに基づいています。
さて、次の調査では、サステイナブル関連の投資についてのトピックが取り上げられていました。
まずはアンケート結果。調査対象となった富裕層の85%以上が気候変動や環境の将来など、地球のサステイナビリティを心配しているとのこと。ただし、投資リターンとなると、54%のみがサステイナビリティに関連する投資を行うことで自身の投資リターンが向上する、そして23%のみが大きく向上すると考えているとしています。
個人的には、半数以上が自身の投資リターンが向上すると答えているのは、割と高い数字なのかなと思いました。ただ、ロンバー・オディエ社はサステイナビリティーへの投資にはもっと大きな魅力があると説いており、資産運用サービスのプロとして相当の資源を割いているようです。
ロンバー・オディエ社では、既に始まっているサステイナビリティへの対応は「産業革命の規模に匹敵する経済的変革の原動力となり、それはデジタル革命のスピードで展開している」との考えとしていました。そして、この10年では、投資リターンの主要なドライバーになる、外せないものとしています。
例えば、リチウムイオン電池、ヒートポンプ、水素技術、代替タンパク質、グリーン・スチール、バイオプラスチック、などのイノベーションは実証段階を超えてマス市場に受け入れられていく過程にある。政府セクターからは、欧州と米国と中国合計で$1tnの投資がこの10年で行われることが見込まれ、民間セクターの投資を大きく後押しするだろうとしています。
$37tnの民間の投資がこの10年でもたらされ、それは過去のIT投資よりも大きな投資になるとのこと(1990年代は企業利益の5%がIT投資に向かったのが2000年代は20%まで上昇したが、$37tnはそれ以上の規模であると)。
そして、莫大な民間セクターの投資で、それぞれの技術が規模の経済を得て、社会に大きなコスト削減をもたらす生産革命になるだろうと。いわゆるSカーブ型にその商品サービスが急速に広がれば、今日、IT企業が世界の多くの付加価値を勝ち得た事と同じ状況が訪れると考えています。
過去10年を見ても風力や太陽光の発電コストは70-90%も削減されており、このようなイノベーションが世界中の産業のサプライチェーンやキャッシュフロー総出力を大きく変えるという見通しです。
そして、、、このような大きな変革をとらえるため、ロンバー・オディエ社では50名のフルタイムの調査員を置いているとのこと。どういう数え方かは分かりせんが、本当ならすごいですね。
具体的には、①何のCAPEX(設備投資)が必要になるのかのロードマップ、②最終的な市場規模(TAM)、③(リチウムイオン、アンモニア、バイオプラスティックなど)新しいイノベーションの産業の収益性の調査、の3つに注力しています。そして、この調査により投資リターンが最大化されるような投資機会の案件を、投資の割高・割安までを踏まえて提唱している、していくとのことです。
いずれにしても、富裕層と金融サービスを提供するプロフェッショナルとしては、「サステイナビリティ」に関連した投資案件の提案が極めて重要と捉えているということになります。一介のプライベートバンクがここまで資源を策というのはなかなかの力の入れようだと、文面からもそのエネルギーが伝わってきました。日本初のプライベートバンクで、ここまでの見通しをもって、そして力説している会社があるのか?恐らくないと思います。
さて、調査レポートはまだ続きます。。。次回は、彼らのプライベートアセットへの見通しについて紹介していきます。結論をいうと、サステイナビリティと同じく、プライベートアセット推しです。その理由は、世界全体の付加価値創造も雇用の大半も非上場の会社から生まれており、上場企業への投資ではその恩恵が受けられないというシンプルなものです。
では、また時間がある時に解説していきます!
<英単語メモ>
dovetail 適合する、きっちりはまる