2024年8月初、為替や株価が大きく動いた今、思い出すべきこと②
続き記事です。前回の記事はこちら。
<大切なこと>
前回は為替について書きましたので、今回は株価について書きます(8/4時点)。今年の株価についての動きはこちら。
・米国株価(SP500)
2024年初から200日で20%上がり、20日で6%下がった。こちらは直近の動きは為替ほど急激ではありませんが、足元は下落。年初からトータルで見ると足元まで+13%です。なお、円ベースでは+18%程度のプラスになります。
・日本株価(日経平均)
2024年初から200日で27%上がり、20日で15%下がった。最もダイナミックに動いていますね。ニュースで大きく取り上げられるのもよくわかります。年初からでは+8%とまだプラス圏です。ドルベースでは+4%程度のプラスとなります。
②株という資産を持つにあたっての大切なこと その1
まず、日本資産も外国資産も、最低二つ以上の通貨で推移を理解することが大事です。上記に円ベースとドルベースでのパフォーマンスを記しましたが、この半年程度の期間でも差があり、これが長期になると劇的に変わります。これにより見えてくる現状がかなり変わってきます。
私がこの複数通貨で見る大切さに気付いたのは、ノルウェー、デンマーク、スイスといったユーロの周縁国の株式に、何十億円を投資をした経験からでした(仕事でです)。ネットを叩いて表示されるの、クローナやスイスフランなどの通貨建てのチャートの形やそのパフォーマンスなのですが、その姿は取引の多くを占める外国人投資家(私を含む)の損益情報を何も表していないのです(つまり周縁国の通貨建てのチャートは本質的に見るだけ無駄とも言えるのです。ドルやユーロを除く通貨、英ポンドや円などであっても、これは同様と考えています)。
日本の株式市場の取引においては、約7割は日本人以外の投資家がそれを占めています。その7割の日本人以外の投資家は、自国の通貨(多くはドルやユーロでしょう)で損益を管理しており、証券口座ではその自国通貨でパフォーマンスが突きつけられています。日本人が海外株を投資しているときは、一義的には円で外国資産のパフォーマンスを見るでしょうが、それと同じことです。
また、先進国の株の殆どは、自国通貨建てで見ると、「通貨安になると上昇する」「通貨高になると下落する」という動きをします。これは上場している主要企業がグローバル企業が多いからなのですが、例を挙げれば、円安になると日経平均が上がる、円高になれば日経平均が下がるということで、それは先進国共通です。
結果、国内資産の世界の人々から見たパフォーマンスは、現地通貨建てほどには動いていないのが一般です。この時、現地通貨だけでパフォーマンスを見ていると(円で日経平均株価を追うなど)、必要以上にバタバタしてしまうのです。(なお、ここでは触れませんが、新興国の株は、一般的には「通貨安になると下落する」「通貨高になると上昇する」という先進国とは逆の関係になるのがセオリーです)。
ちょっと複雑に思えるかもしれませんが、現代で投資をしている人は少なくとも2カ国の通貨でパフォーマンスを測るということがとても大切なのです。投資している株や投資信託の資産の真の価値を見る大切さなのですが、特に市場が大きく動いている今のような局面では、その教訓がとても大切になってきます。先週金曜日に日経平均が円ベースで過去2番目の下落したのは事実ですが、それは少し前からの大きな円高を伴って考えられるべきで、ドルベースでは大して動いていない、つまり世界的な資産の価値はそれほど変わっていないのです。結論、日本円で見る日本資産の大きな動きを見て慌ててしまうのは大変愚かなのです。
③株価についての大切なこと その2
足下の株価の下落だけを見ていると忘れてしまいがちなのは、
「この数年来、景気が強過ぎた、インフレが高止まりし過ぎていたので、欧米の当局は意図して景気を冷やそうとしていた(具体的には金利を高くしてそれを継続していた)」
という事実です。先週の金曜日には、世界最大の経済圏である米国の雇用・失業率に関する統計が事前の市場予想よりネガティブに振れて、株式市場は下落しました。これにより、米国は少なからぬ景気後退になる!!という恐怖が市場を席巻して株価が急落しました。株価が上がり続けてほしいと願う投資家にとっては嫌な動きかもしれませんが、経済全体、世界全体、にとってはむしろ待望の望まれたニュースなのです。
米国の当局が前々から望んでいた「景気を冷やす」という効果がやっとこさ現れたのです。景気を過度に強いままの状態にする、株価が上がり続ける状態にある、ことは社会全体にとって全く好ましくありません。過度なインフレは特に低所得者に大きなマイナスの影響を与えます。また作り出されたバブルは必ず崩壊しますので、その過程では多くの人に混乱を与えます。
ということで教訓は、金融市場の動きを始点として物事を捉えると、大きな間違いをしてしまうということです。SNS含めたメディアは派手な動きをするモノが好きで、実体経済の長期の大きな流れよりも金融市場の短期の動きを取り上げます。
今回は利上げが効いて失業者が増えるという至ってフツーの、意図された事が起きているし、米国当局は景気を引き締め過ぎたと思えば、現在からはいくらでも政策金利を引き下げられる余地もあります。長期の投資家にとって焦ることは何もないです。
という事で、今回のブログでは相場が大きく下落しているタイミングでの大切な心構えをまとめました。
~~3つの心構え~~
・為替は有識者であれば予想できると勘違いしないこと
・日本株も外国株も、必ず複数の通貨で見ていくこと
・金融市場を始点として、モノを考えないこと
結局は一喜一憂せず、市場やメディアやSNSから距離を取る意識を強く持つことが大事です。その意識をもって、金融資産の資産運用に望んでいきましょう!