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Fund of the year 2024にコメンテーターとして出演しました(話しきれなかったことも追記)

先週の金曜日、2024年1月24日(金)に「個人投資家が選ぶ! Fund of the Year 2024」の結果発表と表彰式が渋谷で行われました。

今年で18回目。非常に影響力のある大会ですね!今年から初めてパッシブとアクティブが分けられての投票で、大変に盛り上がりました。そして今回からブロガーではなく「個人投資家が選ぶ! Fund of the Year」に変更され、個人投資家さんは誰でも投票できるようにさらに民主的になりました。こちらも時代とともに進化です。

結果や概要については、以下のお二人のブログに非常によく纏まっていますので、見ていただければと思います!

日経さんにも良記事が出ておりました。私のコメントも最後に取り上げてもらっております。世界広しといえども、「複数の運用会社と個人投資家が、商材を抜きに触れ合える、開かれた場所」はここしか存在しないのではと思います。素晴らしいですね。

私は、パッシブ、アクティブでそれぞれ1位になられた三菱UFJアセットマネジメントの代田さんと、鎌倉投信の鎌田さんと登壇し、投票をしてくれた投票者の資産運用業界への生の声について、コメントや解説をしていきました。

自己紹介中
順位についてコメント中

私のブログでは、投票者の声として取り上げられた5つほどのトピックについて、語りかたかったこと、語りきれなかったことをざっと記しておきます。

*なお、写真などのブログなどへの使用が禁止のイベントですが、私は運営側としての参加いうことで特別に許可をいただいております。

伝えたかったこと、、まとめるとこんな感じです。

  1. 株式型ファンドが圧倒的な支持を得た。長期的に株への投資は資産形成の基本である。

  2. 世界への分散投資を低コストで提供する大手運用会社のファンドと、日本の経営者と対話する独立系のファンドが上位。バランスの取れた良い結果だと思う。アクティブ投資のランキングができたことは大きな意義あり。

  3. 株以外の債券の国際分散投資のファンドの役割も、これから広まっていくと思う。

  4. 日本独自の情報開示文化は注目に値する。世界をリードしている事実を皆に知ってほしい。ただ販売会社主導の下での、過剰な量の情報開示には注意。

  5. 資産運用会社にもファンドにも求められる新陳代謝。ファンドの償還や移管、運用会社の撤退・M&Aが当たり前の時代がこれからは訪れる。

  6. 個人投資家の影響力増大、パッシブ投資の社会的な役割を皆で考えていくべきだ。

  7. 金融庁などへ投資家目線の生の声が届くと良い。

といったところです。


- 結果について

パッシブでもアクティブでも株式型ファンドが支持を集めた

まず、ランキングについて意見が求められました。2024年のファンド投票では、株式型ファンドが圧倒的な支持を集めました。発表された20ファンドの中でなんと18が株式型で、残りの2つもバランス型の中に株式資産を半分ほど含んでいます。パッシブではオルカンが6連覇!他も世界の株式に分散投資をするファンドが上位で、フィーを率先して下げてきた会社のファンドが評価を受けてます。アクティブファンドでは日本株に焦点を当て、対話重視・集中投資・長期投資といったファンドへ評価が集中しました。社会課題を解決するための「インパクト投資」の視点も注目されています。単なるパフォーマンスだけでなく、投資を通じて社会に貢献する考え方に人気が及んでいる姿は、パッシブORアクティブという20世紀後半の分類が既に時代遅れなのだろとも感じます。

世の中は株式会社でできています。労働市場や財市場に加えて、資本市場への参加するという行動が、どんどん広まっています。今や経済への社会参加には国境はありませんし、パッシブファンドを活用した国際分散投資は、日本人投資家にとって基本的な投資行動になるでしょう。また、構造改革が進む日本市場やガバナンス改革が進む企業への投資は、これから10年は社会的な意義も高いと思います。


ランキングへのコメントの後は、投票者の実際の声を取り上げられていきました。

- 世界の債券への投資について

投票者からは、世界の債券市場への投資において良い商品を望む声が多くありました。覇権国の米国人は基本米ドルのみの資産でよいと考えられるし、欧州人は普通預金しているだけで20カ国へ分散投資ができています。一方でそうでないアジアや日本の人において、世界の債券インデックスを活用した分散投資は有用だと私も思います。

現状では日本の同分類のコストが依然として高いので残念という声がありました。確かに、米国では最も安いファンドは0.03~0.07%程度(現状、GOVYが5bp、AGGが3bp、IAGGが7bp)のフィーに対して、日本は0.1〜0.2%程度でしょうか。

ファンドの世界は、基本的に株が先行して債券がそれをおいかけています。例えば、債券の指数の歴史は株に比べるとかなり短く、それは1980年代から。メディア指数の時代、取引所指数の時代の後の、指数会社指数の時代でやっと登場しました。世界の通貨を広く持つ意識が日本でも高まれば、業者間の競争でフィーは落ちていくでしょうね(ただ、債券って全く同じものが溢れている株と違うので、パッシブ運用はけっこう難しいのです)。


- 日本独自の情報開示、個人に投資の楽しさを届ける取り組み

アクティブファンドについては、多種多様な、本当に多くのコメントが寄せられました。その中で私がお伝えしたのは、上位に入っているアクティブファンドの月報なり報告書は、本当にレベルが高いということ。。。日本の資産運用業界は、他国に類を見ない情報開示の文化に育ってきています。外国人が見たら、間違いなくびっくりしますよ!

もう、それは雑誌であったり、会報誌であったりします。投資判断や保有銘柄についての詳細なレポートが公開されているのは、世界から見れば驚くべきことです。金融において日本は遅れていて欧米は進んでいると考えられがちですが、そんなことはないんです。海外の月報である「Factsheet」を、みなさん見られたことありますか?そこにはお決まりの情報が詰め込まれているだけで、大した工夫もされていません。

また、特に5位以内に入られた鎌倉投信やコモンズ投信の取り組みは、極めてユニークと考えています。投資の本来の楽しさである、投資家が企業の経営者と対話する機会、会社毎の最先端の技術を体験できる機会、を個人投資家に解放するといった、日本独自の取り組みを定着させています。このような独自の取り組みが、欧米のモノマネではない、日本独自の投資文化をこれから作っていくと思います。6位のなかのアセットさんも、日本中で草の根のセミナーをやっており、顔が見える会社として多くの啓発に力をいれられています。

ただ情報開示については、多ければ良いということではないと思っています。企業の決算情報などでは、基本的に公に開示される情報量は海外より日本の方が多いのですが(海外の方が総じて充実しているという論調が、日本には昔も今もありますが、私にはさっぱり分かりません)、私は日本の情報量が多いことは、その背景からしてむしろ問題だと思っています。お金を預けている経営者が投資家と同じ船にのっておらず信頼できないから、もっと開示しろと情報を求める傾向がある。そして投資が不確実性の中にあるという肌感覚がない投資家が、不安なのでより情報を求めているようにも見えます。

また日本の金融業界は、販社主導、マーケティング主導で発達してきており、過剰な情報が生産されている、という実態にも注意が必要です。日本では運用会社から、相場の急落や選挙の直後にコメントが出たりしますが、これが当たり前になっているのも日本の独自の文化で、海外には見られません。長期投資にとっては、正直、必要ではないとも思いますし、最終的に、そのコストは投資家にのしかかってきますので。

- 資産運用会社の撤退は悪??

昨年Paypayアセットマネジメントが事業撤退を発表して、いくつかの運用ファンドを償還、残りを他社に移管するという事象がありました。大切なお金を扱う仕事である限り、安易な参入や撤退は避けてもらいたいと思う一方で、海外ではファンドの統廃合や運用会社のM&Aは極めて当たり前であることも、日本で認識されるべきと思いました。新陳代謝があることにより、業界に規律が維持され、良い投資市場に近づいていくのです。

運用会社やファンドの撤退や統廃合は、短期的にネガティブに見えるかもしれませんが、それが長期のより良い社会の土台になっていることを忘れてはならないでしょう。私は、昔に運用会社にいた時、M&Aが発端で仕事がクビになったことがあります笑。そりゃ個人的にはガッカリもしましたが、社会全体にとっても業界にとっても必要なことで、起こるべきことだと思いました。

日本社会では会社においても、事業売却、M&Aなどのリストラクチャリングや、破産について強すぎるアレルギーがあります。破産であるバンクラプシーの、別の言い方はフレッシュスタート。個人でも会社でも、やり直しの機会というポジティブで前向きな側面があります。短期的に局所的には痛みがありますが、長期的に社会全体にはプラスの影響があります。これはファンドの世界でも同じことで、健全な撤退があるからこそ、素晴らしい運用者や経営者が新規にチャレンジして参入してくる、そしてそのイノベーションが社会を豊かにしていきます。


パッシブファンドは社会悪??

多くの個人において、合理性をつきつめると、まずパッシブファンドに投資をしようという選択になるのではと思います。ただ皆がパッシブファンドを買うことは、上場企業への牽制機能がアクティブファンドより落ちるので、社会にマイナスではないか?という声がありました。

そう、パッシブファンドの登場で、より多くの個人投資家が資本市場に参加しはじめ、その影響力は間違いなく大きくなりつつあります。ただパッシブファンドをこの視点で悪者にすべきかというと、私はそうは思いません。お決まりであろうとファンドは一定の議決権行使はしている訳で、投資家が何も考えていなかったとしても、経済の選挙に行く人自体は増えていると考えます。皆がパッシブファンドを持っていないより、持っている社会が健全と思います。特に今の日本では、分かりやすいパッシブ投資でより多くの人が投資への第一歩を踏み出し、分散投資などの民意を高めていくことが大事と思います。

一方で、現在のパッシブファンドの低フィーはちょっと行き過ぎであるとも思います。米国では、Fidelityが0%、Vanguardが0.02%、Shewabが0.03%までフィーが落ちていますが、これではまともな議決権行使を行う体制は作れません。日本も米国を真似て、ただフィーを安くすることをもてはやすのではなく、「多少フィーが高くても、議決権行使という社会的責任をしっかり果たしているファンドを買いたい」、という声が上がってくることを個人的には望みます。私個人は、そのようなパッシブファンドがあれば、喜んでそちらに乗り換えます。金融商品以外では、社会に良い影響がある会社の商材を買いたいという声は消費者に当然にあります。お金の商品であろうと、同じことですよね。

そして、これからしばらくの日本では、アクティブ側のランキングの上位にあったような経営者との対話型のファンドの普及が、社会的に非常に(ひじょーに)重要な役割を果たします。パフォーマンスとフィーという利己性を求めるだけでなく、利他性も兼ね揃えたファンドを持つ思考も、大事にしていきたいと思います。

いずれにしても、今まで誰も経験したことのない資本主義に突入していますので、我々はそれを慎重に見守っていかなければなりませんね。

監督官庁へ個人の声を届けたい

今の日本は投資立国に向けて、金融庁を中心にさまざまな施策が採られています。完全ではないかもしれませんが、業界ではなく個人投資家を念頭におき、総じて良い方向に進んでいると私は考えています。

そしてこの大会では、意識の高い個人投資家の声が数百以上も集まっています。これは極めて貴重なデータであり、社会を変えていける資源です。来年の19回目のアイデアとして、「金融庁へ届けたい声」などの回答項目を作って、それを届けられたら良いのではと、進言もさせてもらいました。



と、こんなところです。このFund of the Year、民主的な非常に良い取り組みであるので、これからも応援をしていきたいとおもいます!




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