インフルエンサーは上がる時・下がる時は教えてくれない
投資を行なっているとこういった話を耳にすることがあると思います。
・米国株は今バブルである
・株式のバリュエーションが高すぎるから暴落があるかもしれない
・日経平均が年末にはx万円超えするだろう
・これからハイパーインフレがくるから金を買おう
・仮想通貨が熱い
・仮想通貨は無価値になる
etc.
表現は様々ですが大別すると
・これから大きく上昇する(だから今から投資すると稼げる)
・これから大きく下落する(だから今のうちに売っておきなさい)
の2パターンに分かれます。
一見親切ですし、これを言っている人は様々なデータや根拠を並べてくるのでとても知的で先を見通す力があるように見えます。
でも実際は「未来は予測できない」という原則があるにもかかわらずそれをあえて無視して見解を述べている以上、「当たるとは限らない」という当たり前の事を忘れないようにしないといけません。
その話を少し目線を変えてお伝えします。
1.過去のことを学ぶ機会は大事
これも投資をやっている方は一度は「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という言葉を聞いたことがあると思います。
投資家の名言ではなく、マーク・トウェイン(トムソーヤの冒険の作者です。投資家ではありません)の言葉ですが、これは識者やインフルエンサーの言葉や相場・経済市況に関する予測を聞く際に「大事な構え方」にもなります。
というのも例えば
・これはITバブル崩壊、1989年のバブル崩壊の「再来」だ
とか
・リーマンショックの「再来」だ
とか言われますが、そのまま同じように再現されるわけではないという点を認識しておく必要があります。
暴落を煽る方は、過去の事例を引き合いに出して「あたかも同じことが再び起こる」かのように煽ってきます。
ここでリーマンショックで30%下落したことが書かれていますが、約1年間で30%下落しています。
リーマンショックの再来と言われる現象が再現される場合、あの時と同様に1年間で30%の下落が起き、不況が起こるように錯覚しますが、実際にそうなるとは限りません。
例えばリーマン・ショックはサブプライムローンの返済ができなくなったこともありますが、保険会社AIGの破綻懸念など「金融不安」が引き金となりました。銀行・保険といった経済の根幹を担う会社が破綻の懸念が生じ、それに対して政府や中央銀行が当初サポートをしなかったことで不安が実現するのでは→株価の大幅下落(投げ売り)という流れで暴落しましたが
・発生原因
・影響先
・下落幅
・下落期間
など違ってくる必ずしもの今後の動きが過去の事例と一致するとも限りません。
コロナショックのように急激に下がることもありますし、1970年代のように約10年間株価が停滞することもあります。
ここで大事なのは
・あたかも「同じことが再び起きる」ことのように言っている人のことを迂闊に信じてはいけない
・一方で過去の歴史に倣い、発生原因・経過を学習することが先々役に立つ
の2点です。
前者は先ほど言った通りです。発生原因から結果までピタリ一致する事象は起き得ないと言って良いですが、それがあたかも起きるかのように言ってくる人は案外多いので注意しましょうということです。
とはいえ、歴史を学ぶのは大事だよということです。リーマン・ショックのケースであれば「金融危機に繋がる・繋がりかねない事象」が起きたら警戒が必要とか、歴史的イベントが起きたらゴールドが上昇するなど似たようなことは何度も繰り返されます。同じではなく、似たようなことである点が大事です。
過去のことや経験者の体験談を学ぶことは大事です。
先駆者が書いた書籍を通じて学ぶことが投資において重要なのは知識をつけることもそうですが、過去に起きた例を通じて、類例に繋がるかどうか・インフルエンサーが言っていることに偽りがないか、過剰な煽りではないか?という疑問を抱く癖をつけることにあります。
2.ポジション・トークに用心すべし
いわゆる煽り本に該当するものをいくつか紹介しました。
ジム・ロジャーズ氏は株式がやたら高くなっており、これからはコモディティの時代だと何年も前から述べていますが、彼は
このようなファンドに関わっています。つまり「自分のファンドを買って欲しい」からコモディティを推奨しているに過ぎないとも読み取れます。
エミン・ユルマズ氏は米国株を始め、あらゆる資産がバブルになっているからそのうち崩壊すると述べている一方で日本株は比較的割安だから買い時だとも述べています。
でもそんな彼は過去の著作で日本経済の上昇、日経平均の大幅増加を度々述べています。つまり「日本株上昇にベットし、それが実現するまでずっと同じことを言い続けている」可能性があります。
また、彼は複眼経済塾という投資サロンの取締役を務めています。
ここで扱っているのは日本株なので、日本株上昇シナリオが実現し、エミン氏の評判が高まればこういったところに恩恵がもたらされると考えるのが自然です。
分かりやすいポジショントークです。
今井澂氏、長嶋修氏も同様に株式、不動産の業界で一ポジションを築いており、自分のポジションを少しでも優位にするためにそれを後押しする本を出していると思って良いと思います。
特にポジショントークが横行しているのが不動産です。
書店で並んでいる本の何割かは「不動産販売業者・仲介業者」の方、関係者が書いており分かりやすく「売るために書いている」と言えます。
この傾向を逆手にとって不動産バブルをずっと言い続けている人もいます。ただ、オリンピックが終わったらバブルが崩壊するという論は2022年になっても実現していません。
今後不動産価格が下がる現象が起きる可能性はあると思いますが、それはもうオリンピックとは直接関係ないあるいはあったとしても間接的なものになろうとしています。仮に価格が下落することがあったとして、それをオリンピックを引き合いに出すなど無理のあるロジックで解説している人がいたら無視して良いと思います。
ビットコインなどの暗号資産、NFT、De-Fiなどのジャンルも同様です。このジャンルはとりわけ「先行者有利」なので、後から入ってくる人をなるべく増やしたいという思惑があります。「こっちに投資すると儲かるよ」という情報は大事というわけです。これはいずれもう少し詳しく解説したいと思います。
3.インフルエンサーは肝心なことを言わない
最後に伝えたいのは
・上がる、バブルが来ると言っている人は「下がる時のことを言わない」
・下がる、暴落すると言っている人は「上がる時のことを言わない」
ということです。
持論が覆るとせっかく築いたポジションを失うことになるので反対のことはなかなか言わない点に注意が必要です。
特にバブル崩壊・暴落論には注意が必要です。
これはプロスペクト理論(人間は上昇よりも下落の方が印象に残るので、失敗を回避する傾向が行動に出やすくなる)を逆手にとったものと考えれば分かりやすいと思います。
不安心理を利用した方が注目が集まりやすく、支持を得やすいですし、下落・暴落論をずっと言い続けてもそれによるデメリットは小さい(損失にはならない)ので、失敗リスクが小さく、当たれば大きくリターンが得られる投資に近いものがあります。
反対に、上昇すると思って投資して外すと「実際の」損失になるので上昇論はオオカミ少年になりやすい傾向があります。
多くの方が積立投資を軸とした長期投資を行なっているはずですが、大きく上昇する・下落すると喧伝している方の意見にまともに向き合うと振り回されることになります。
長期投資は様々なことに振り回されないようにして、淡々と継続することで成功確率を上げる投資方法なので、いかにインフルエンサーのトークをノイズと割り切るかが大事です。大半の方は私心あり、ポジショントークのために言っているだと思うことが大事だと思います。
投資している人の中にはパフォーマンスがすごく良い方、影響力が高い方、インフルエンサーの類の方に「ピッタリ追随」して同じことをやれば良いと思っている方、言い方を変えると信者の方がいます。
これは非常に危険な行為です。先ほども触れた通り、その方は基本的にどこかしらに立ち位置がありそこを基準とした意見しか発信しません。
あるいは短期間にコロコロ意見変更を行います。
立ち位置が不変の場合、例えば「暴落するから持っている株を手放した方が良い」という意見の場合、いつか訪れる暴落が実際に来たとして「その後どうしたら良いかを教えてくれない」可能性があります。
盲目的に追随している方はこの時点で路頭に放り出されることになります。
短期間にコロコロ意見変更をおこなっている方に追随するのは非常に難しいです。いちいち売却して書い直すことをしていると手数料と税金で利益が目減してしまうだけでなく、ある日突然意見が出なくなった時にどうしたら良いか分からずパニックになる危険性があります。
有益な情報を無碍に否定する必要はないのですが、盲目的に信用せずに取り組む必要があります。1.で触れた、過去のことを学ぶ機会が大事というのは盲目的にならないようにするための抵抗手段を構築することでもあるのです。
一方で、インデックス投資は勉強する時間がない方向けだと思っているのですが、これは煽り・ノイズに対する抵抗手段を投資方法で構築すると言い換えることができます。
なので、インデックス投資を淡々と実施するんだと決めている方は、識者やインフルエンサーのいうことに耳を貸してはいけないということになります。