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この先、恐慌は来るのか?
あすの日銀会合を控え、マーケットは戦々恐々。
私は恐らく日銀は利上げしない、出来ないだろうと予想していますが、サプライズ利上げがあった場合は荒れそうです。
・・・仮にもしサプライズ利上げしたとしても利上げ幅は0.25%程度でしょう。
その程度の利上げに市場が身構えるこの状況は少し異常に見えます。
識者の多くは「いま利上げすると景気が悪化する」というのですが、皆が好景気を実感し、どうぞ利上げしてください!なんて状況はこの先訪れないでしょう。
市場の催促にはキリがありません。
実生活でもそうですが継続的に施しを受けると、それを断ち切って厳しい道を歩むのは難しくなります。
良い例が日銀のETF買い入れ。
2010年から昨年2023年3月まで結局、都合13年間日銀のETF買い入れが続きました。
REITも含めた13年間の買い入れ額は総額で約37兆円。
日銀は今年3月、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、ETFの新規買い入れの終了を公表しましたが・・・13年間37兆円は大きいです。
あとは2023年1月から今年5月まで実施されていた電気代の補助金。
実際は値上げ分を国が肩代わりしていたため、電気代が安くなったという感覚がなく実感は乏しかったです。
しかし、これがなければインフレへのバッシングはもっと大きかったでしょう。
これも今年5月で打ち切りになったのが、8月から3ヶ月間の再開が決定しています。
そしてあまり話題になっていないガソリン補助金制度。
こちらは2022年1月から延々と延長が続いています。
正確な表記は燃料油価格激変緩和補助金。
上の経産省のHPを見て貰えば分かりますが、これによってかなりガソリン販売価格は押し下げられています。
今でこれだと、もし今後本格的なスタグフレーションが来たときに、どうなってしまうんだという気はします。
・・・ただ、その一方で漠然と自分が生きている間には本格的な不況や恐慌が来ないんじゃないかという気もしています。
近年株価が最も大きく下落したイベントは16年前のリーマンショック。
金融業界には激震が走りましたが、当時の私を振り返ると株式評価損が膨らんだ程度で生活に大きな影響はありませんでした。
株式評価損の増大はストレスでしたが、そもそも投資・トレードは失っても良いお金でやっていましたし、仕事を失ったわけでもありません。
気持ちが滅入った程度で死活問題とは無縁でした。
その後も東日本大震災、欧州債務危機、チャイナショック、原油安ショック、コロナショック、SVB破綻、色々ありました。
なかでも実態経済悪化は不可避だろうと思ったのがコロナショックでした。
これは私だけではありません。
上は2020年4月のIMFのギータ・ゴピナート氏の見解です
今回は影響を免れる国のない、真にグローバルな危機だ。
観光業、旅行業、ホスピタリティ産業、娯楽産業などに成長を依存している国々は、とりわけ大きな打撃を受けている。
新興市場国と発展途上国はそれ以外の課題にも直面する。
比較的脆弱な医療システム、支援策のための財政余地が限られたなかで危機への対応を迫られる一方、世界的にリスク選好が弱まるなかで先例のない額の資本逆流が発生し、通貨圧力にもさらされている。
しかも複数の国が、経済成長の停滞と高水準の債務という脆弱な状態で今回の危機に突入した。
大恐慌以来初めて、先進国・地域と新興市場国・発展途上国が同時に景気後退に陥っている。
今年、先進国・地域の成長率はマイナス6.1%と予測され
る。通常であれば先進国・地域を大幅に上回る水準にある新興市場国と発展途上国の成長もマイナスに転じ、2020年は全体でマイナス1%、中国を除くとマイナス2.2%と予測される。
1人当たりの所得は170か国以上で減少すると予測される。先進国・地域と新興市場国・発展途上国のどちらも、2021年には部分的回復が予想される。
私も「ファンダメンタルがここまで悪化してしまうと、株安と景気後退は免れないだろう」と感じていました。
しかし、株価は僅か3ヶ月足らずでコロナショックの急落分を挽回。
実態経済や企業業績も財政政策の影響で予想した程は悪化しませんでした。
リーマンショックから16年経ちますが、その後は真の“株価暴落”や“不況”とは無縁となっています。
中国経済が傾けばさすがに日本にも影響が出るのではないか?と見ていましたが、中国恒大や碧桂園破綻も意に介さず。
結果は中国から日本への資金シフトで株価は上昇。
その不況の只中にある中国の上海株価指数が殆ど下落していないのも象徴的です。
こうなってくると、プチ不況は訪れたとしても95年前にあったような恐慌やダウ平均が高値から半値以下になったリーマンショックの様な株価暴落はもうないんじゃないか?という気がしてきます。
経済アナリストの岡崎良介氏も自著で「中央銀行が景気をコントロール出来る時代になったかも知れない」と書いていました。
ただ、心の片隅に「本当にそんな都合の良い世界あるのか?」という想いもあります。
日本はこれから少子高齢化が加速し多死社会に直面します。
人間は問題に対処しようとする生物ですし、きっと上手く対応していくだろうと前向きに見ていますが、予想だにしない問題も出てくるでしょう。
それでも、私が生きている間に日本で失業率が10%を超えるような恐慌は発生しないだろうと楽観的に見ています。
しかし恐慌は回避出来ても、向こう10年以内に日経平均やナスダックが高値から40%超調整する場面はあるでしょう。ここから10年そうした調整なしに株価上昇が続くというほど楽観的にはなれません。
今までマーケットはお金をばら撒いて危機を回避してきましたが、それが出来ない状態に陥った場合、苦境を強いられるでしょう。
それがいつ、何を切っ掛けに発生するのかは現時点では分かりませんが、明確にトレンドが変わったと判断した場合は、ここでお伝えしたいと思います。